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シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
8. シモウサへようこそ!
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#3 記憶の場所

挿絵(By みてみん)


 ルクフェネとアヤメちゃん、ツムギちゃんを乗せたオーデは深夜の空を飛んでいた。


 ツムギちゃんを前に、それをアヤメちゃんが支えて、さらに後ろでルクフェネが抱きかかえている。


「そろそろ見えてくると思いますよ」


「よく覚えていましたね、アヤメちゃん。結城のほうがずっと近いのに、わたしはすっかり忘れていました」


「ふふふ、水辺のことはわたしや霞ケ浦にお任せを。それにツムギちゃんが忘れてしまうのは無理ないもの」


「兎谷津(うさぎやつ)沼……素敵な名前だね!」


「でもいまはただの釣り堀ですよ。釣り堀にしてはやたら大きいですけど」


「アヤメちゃんにいわれてようやく思い出しましたが、確かに昔は蛍が舞う豊かな水辺でした。でもその姿が失われて久しいです」


「アルテリウア・ユーヴェやユクルユフェーアのお話を聞いて、そしてセヴァのみなさんが雪兎を大切にしていると伺って、兎谷津沼を蘇らせれば天地の力は強まると考えたんです」


「〝境〟と呼ばれる結界も弱まることでしょう」


「でも、もう失われてしまった自然を蘇らせることなんて可能なの?」


「わたしたちは精霊ですよ。精霊は自然や人の想いそのものです」


「なるほど……」


「それにツムギちゃんがいてくれるから、大船に乗った気分でいてください!」


「あらあら。でも紡ぐのは得意ですから安心してくださいね。……ルクフェネさん?」


「何か来る……。アヤメちゃん、ツムギちゃんを強く抱き締めて! オーデ、ごめん!!」


 ルクフェネはアヤメちゃんを抱きかかえたまま、オーデの背中を強く蹴って跳躍した。そこへ立て続けに光弾が襲う。残像が交錯する。


(風のように(ピキュ・リーツォア・)隼のように(ロキュ・リーツォア))


 左手自由にしてすばやく軌跡を描く。大気を切り裂いて一気に地面へ迫る。


(揺るぎなく(テール・クィーレ・)確かな絆(ルラルエ・レーウ)、ふんわりと)


 どうにか着地する。ルクフェネはゴーグルを装着して画面を確認した。


(ローゲイル(無生物)八体、これ以外はわからない……)


 そこは一本の道路をはさんで東西に大小の池が並ぶ場所だった。およそ自然の池だったころの面影はなく、はじめから人工のものだったといわれてもわからない。


 ルクフェネはアヤメちゃんとツグミちゃんを残して走り出した。視線で八体を威圧する。


(わかってるでしょうね、こっちがあんたたちの標的だって!)


 ローゲイルは重装備のロボットだ。極端に柄の短いランスのような巨大な円錐形の矛を両手に握って、その手許や肩口にはいくつもの銃口と鋭利な突起を見せていた。重そうな脚も同じで膝からは角、足の指先からは鋭い鉤爪が突き出す。全身を覆うのは甲羅のような鎧だ。

 

 八体はそれぞれ無機質な赤い目でルクフェネを視覚にとらえた。


(強き熱き力よ《リース・ルッス・ルケア》、我が身に宿れ《・オル・ロロ・ティシェーア》)


 ルクフェネはこころの中で唱え、同時に指先を素早く空中に走らせた。加速する。適度に相手をしながら引きつけるように南へ。


 一体へ接近する。相手は赤い目でその動きを見定め、素早く身構える。その鈍重な印象に反してローゲイルの動きは速い。ほかの七体がいっせいにマシンガンを連射してくる。


 ルクフェネは体を返して翻った。とんぼ返りで背後に回る。光弾はその一体に集中するけれども、そのすべては弾かれた。


(集中砲火を喰らったのにまるで何ともない! やっぱり頑丈ね……でもそういうことなら……)


 ローゲイルはすぐにルクフェネを見つけて巨大な矛を振り降ろした。ルクフェネはそれを蹴り上げて相手のバランスを崩し、全力の回し蹴りをたたき込む。


 吹っ飛んだローゲイルは別の一体に激突して動きを止めた。


(結局その重量は諸刃の剣なんだよね……)

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