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おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
3 光の洞穴亭 in 救民街
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香るお茶会

主人公がおばちゃんなので皆様お忘れかもしれませんが……

一応、見た目は可憐な少女です


ガヴさんはロリ……というより、長生きし過ぎて年齢感覚麻痺した龍人ヒトです

「お父様、そちらはもうよろしいでしょう? テーブルセットの準備をお願いいたします」


「…………む」


 唐突な声がけに、反対するかと思ったバラクさんはなぜかピリピリした視線を切り、あっさりとアロに従い始めた。……え、警戒は? 何かいるんだったよね? え、親バカ? このタイミングで?


「もう少し右寄りにセットしてくださいませ」


「わかった」


 強面渋メンでがっしりとした鬼が甲斐甲斐しく砂浜に布を敷きつめ、手早く折り畳みテーブルをセットしていく光景。恐ろしくシュールだ。さっきまでの勇ましさとのギャップもひどくて、ほろりと泣けてきてしまう。


「……いやいやいやいや! じゃなくて!! 今そういう場面じゃないよね!?」


 茫然自失から立ち直り思わずツッコミを入れた時には、「出張・快適オープンカフェ砂浜亭」が完成していた。

 大きなパラソルを備えたテーブルの上には、バスケットから出したお茶やお菓子。こんな場所なのに、敷き詰められた布のおかげで、テーブルも椅子も安定している。


 えええ…………。まさか、こんなところでティータイムをすることになるとはねぇ……? 謎展開過ぎてついて行けない。どういう流れでこうなった???

 当然のように時空魔法がかかったあのバスケットには、非常食一式が入っている。いつ何時なんどき、何が起こるかわからないから。防災というのとは少し違うけれど、遠出の時には念の為、必ず持ち歩くようにしているものだ。


「フィーリ様はこちらへどうぞ。旦那様はこちらでございます」


 唖然としたまま席につき、差し出されたカップに口をつける。熱いくらいの液体がじんわりと体を温め、知らず「ふぅ……」と息が漏れた。


「イイ香りだねぇ……」


 息を吐き、落ち着いてみればようやく、このティータイムがただの突発イベントでないことがわかってくる。この意図は……?


 机に並べられているのは、バスケットに入っていた中でも匂いの強いものばかり。

 アールグレイのような薫り高いお茶に、焼きたてのヤンヤスフレチーズケーキ。芳ばしいポップビーンズ──煮豆用の豆を炒ってみたらなぜかポップコーン状になった、偶然の産物かつ不思議なお菓子──の脇では、ベリーのジャムがぐつぐつと煮立てられている。

 どんな魔法を使っているのか、瓶の中でグツグツと煮えるジャムは見た目的にも香り的にも強烈だ。本来主役のはずのスコーンが添え物にしか見えない。……とはいえ、あのジャムはもうダメだね。アロの魔力があれだけ籠もっちまったら、一般には振る舞えない。魔喫の力をもってしても時間がかかるから、アロ親子で消費してもらうしかないだろう。


「フィーリ、いつもながら最高のお味ですね。いくらでも食べれます」


 ……うん、ありがとさん。出したのはアロなのに、作ったのがアタシって理由だけで誉められるのは妙な気分だ。


 明らかに何らかの意図を感じさせるティータイムに、改めて周囲を見回せば……さらなる気付き。アタシとあんちゃんの座席は森や湖に対して平行に置かれ、アロは森に向かって、バラクさんは森に斜めに立っている。視野を確保し、すぐに動ける配置。そして、威圧感を和らげつつ、不測の事態に備える立ち位置だった。


「何がいるんだい?」


「しっ……」


 ようやく状況が飲み込めて来た。

 と同時にアロに睨まれてしまったアタシは、さりげなくジャムをスプーンでかき回しながら、


「………………ん???」


 首を傾げる。


「ねぇ、あんちゃん?」


「会長、しっ!!」


「………………」


 いや、でもさ…………?

 気のせいじゃなけりゃこのスプーン、やけに重い。てか、気のせいじゃないよね、確実に。

 なんでジャム混ぜるだけなのに、蒟蒻作りしてる気分になるのさ!?


 声を出せば怒られる。でもきっと、異変を感じつつ黙っていたら、結局後で怒られる。

 さて、どうしよう…………。なんて悩んでいる間に、いよいよ腕が疲れてきた。ホント、重い。むしろどんどん重くなってる。


「あんちゃん…………っ」


 ありったけの想いを込めて呼べば、案の定、鬼気迫るキレイな作り笑い──比喩じゃなく、角のみならず牙も見えてる──と、にこにこ笑顔に睨まれた。

 とはいえこちらも必死。目は口ほどに物を言う! 気合いで、どちらかというと与し易いあんちゃんに向かってアイコンタクト。


 にこにこ。にこにこ。ににこにこ。


 ……ダメかもしれない。


 にこにこ。にこにこ。にこにこ。にににこにこにこ。


「っ!」


 だから、まったく変わらないステキ笑顔であんちゃんがそっと手を伸ばして来た時には、内心驚喜乱舞した。通じ合うって幸せだよねぇ!


 スプーンを持つアタシの手に静かに添えられた節ばった手。ひんやりしている。

 世間様的に考えれば、アタシはあんちゃんの嫁さん候補だし、花も恥じらう乙女だから……うーん、いっちょドギマギした方イイのかねぇ……?


「グラムでしたか」


 え?

 余計なことを考えている間にあんちゃんの手が動く。まるでアタシの手に貼りついていた何かを取るかのような……かと思うと、今度は何かを手繰り寄せるような動きだ。


「バラク」


「かしこまりそうろう


 あんちゃんが一本釣りのように、何かを一気にぐいいっと引いた。助走をつけたバラクさんが高く跳躍するとともに何かを掴む。


「キゥッ!」


「は? ……なんだいその、もこもこしたヤツ」


 バラクさんが握っているのは長い耳。昔、絵本の中の猟師さんがこんな感じでウサギをぶら下げてた。

 でも、これは間違いなくウサギじゃない。大きさは似てるけど。


 モシャモシャの緑の毛むくじゃらで、短い手足のまん丸ボディ。目……はあるのかな? もじゃっとし過ぎてて、よくわからない。生き物、だよね??



次は記念すべき100部!


記念閑話にするか……それだとまたプロットの甘さ露呈で時間かかるから、心の中で祝うだけにするか……

実は未だに悩んでおります

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