表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おかん転生 食堂から異世界の胃袋、鷲掴みます!  作者: 千魚
2 光の洞穴亭 in 王都
65/136

フィーリ、ミーチャの家に行く①

昨日は貧血による頭痛がひどく、画面を見られず……

更新できず、すみませんでした

 あれこれ調べてくれた兄さんが言うには、ミーチャは本当は「ミーチャ」ではなく「ミッチェル」という名前なのだそうだ。うーん……「ミーちゃん」て感じなのかねぇ?


 僻地の官吏として単身赴任していたミーチャの父親が過労で倒れ、看病しに向かった母親共々、王都への帰路で行方不明になったのが六年前。当時3歳になったばかりだったミーチャは親戚に預けられ、王都で留守番していたために無事だった。

 そして、遺されたミーチャはそのまま、預け先であった異母姉の元で育てられることとなる。ミーチャの母は後妻で、先立った妻との間にも娘がいたのだ。元々、姉とミーチャ家族の関係は良好。ただ、17歳差の姉妹は、姉の婚姻もあり、それまで一緒に暮らす時間はほとんどなかった。


 母が恋しい年頃なうえ、頑固な部分のあるミーチャは、結局その後、異母姉にもその夫にも懐かなかった。

 扱いに手を焼いている最中さなか、姉の懐妊が発覚する。ひどい悪阻と、反抗的な妹。夫婦は悩んだ末、ミーチャを両親と住んでいた家に帰すことに決めた。幼いミーチャには身の回りの世話をするメイドが一人付けられる。けれど夫妻に雇えたメイドは化け狸族ではなく、しかも高齢だった。


 異母姉の家庭はごく一般的な核家族で、本来、人を雇えるほど裕福ではない。姉の夫同様、ミーチャの父親も下級官吏。遺産というほどのものは残さなかった。

 そんな生活の中で雇った人員だ。どんなメイドであれ、それは異母姉夫婦の、ミーチャへの最大限の配慮。


 とはいえ、幼いミーチャには複雑な事情もわかりにくい優しさも理解できない。あれほど帰りたがった家だというのに、ただただ、見知らぬ魔力が身近にあることに怯え、精神的に不安定になっていく毎日だった。

 老齢とはいえメイドはテキパキと家の中を掃除し、父母の生きていた頃のような環境に整えてくれる。もちろん、料理も作ってくれる。魔力が抜けるまで放置するから、堅く冷えた料理だが。種族の違いという壁に阻まれつつも、彼女は彼女なりにミーチャを可愛く思っていたのだ。


 しかし、どうやっても種族の壁は超えられない。

 それ故にミーチャは、情緒面においてほぼ放置されて育つことになってしまった。メイドに触られたくないし近づきたくもないからミーチャはどんどん薄汚れ、世話をするヒトがいるにも関わらず、孤児のように成長していく。

 いつしか、ミーチャとメイド、異母姉家族との距離は致命的なレベルで開いていた。




「ここ、だよ」


 ミーチャの案内で辿り着いたのは、商業区のさらに向こう、日本的なサイズの家屋の並ぶ区画だった。王城からみると広い王都の端の方。それでも、わりとバザールには近い好立地の住宅街に、そのくすんだ石造りの家は建っていた。

 周りの家に比べると建物自体は大差ないが、小さな庭が荒れている。家主のいない空き家の風情だ。


「……あ。あのヒトがお姉さんかい?」


 来客に気付いたのか、ギギッと玄関のドアが開き、地味な女性が顔を出した。見た目的には三十代前半というところで細身、灰色の長い髪をひっつめて大きなお団子にしている。


「…………」


「ようこそ……お越しくださいました……」


 声を発したのは、頑なにかぶりを振るミーチャではなく、その女性だった。


「ミッチェルの異母姉にあたります……ジブリール・ウヨギブ・サウザナールと申します……」


 畏れ多いものを見つめるようにカタカタと震え、深々と膝を折る彼女の視線は、アタシの後ろ、堂々と立つバラクさんに向いている。今日はあんちゃんも兄さんも仕事の予定が合わず、バラクさんとその部下の鬼人さんが二人、アタシ達に同行していた。


「早速だが、居間に通してもらおう」


「……こちらでございます」


 訪問の目的は、書類による契約の締結と家捜し。

 ミーチャをウチで預かることは、兄さんのとこのヒトが既に口頭でジブリールさんに伝えてくれているが、今日はそれをちゃんと書類にする。それに伴い、ミーチャが現在、ウヨギブ家の跡取りであることを示す指輪を探し出さなくてはならない。

 兄さんのところと同じで、跡取りであるミーチャが指輪を自分のものにしてこそ、代替わりが認められるのだそうだ。逆に言えば、ミーチャが指輪に自分の魔力を登録しないからこそ、王都の戸籍管理担当者すら、ミーチャの両親の死を公に認識していなかった。


 ……ちなみに。例の、兄さんの三種の神器は置いてきている。料理の時だけでなく、外出の際も携帯を免除されて一安心だ。アタシには全くわからないが、魔力がすべて抜けきるまでもうしばらくかかるだろう、ということだった。


 この国の戸籍は家単位で登録されている。

 希少種族が何家系残っているのかを調べるためであり、個人単位よりも正確に、交配不可能・絶滅確定種族が把握できる、らしい。

 へー……って感じだが、つまり、それだけ絶滅に瀕している種族が多いのだ、と考えると……魔族の生態はかなり謎だ。長生きな分、出生率が低いのかねぇ……?


 ミーチャは近い将来絶滅が想定される化け狸族の貴重な子どもで、しかも、その親は分家とはいえ首長筋にあたるらしい。姉が嫁いでしまった今、家の存続のためにもミーチャの保護が必要だというのは明らかだった。 

 そうそう、ミーチャがウチにいるのはその辺の事情に詳しい兄さんが渋るあんちゃんを説得したから……、っていうのも大きいんだよね。いくらアタシが腹ぺこの子どもを放っておけない、って言ったって、単発でご飯を食べさせてやるのと、永続的に住まわせるのではまったく次元の違う問題だもん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ