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第20話 女神様は巨兵と戦う

 巨兵の一人、アグラスは宇宙から、神界を経由する形で……

 人間界へと降り立った。


 彼の体は山のように巨大で……

 それに比べれば人間など、小人のようであった。


 「ふむ、まだ神々は俺を殺しに来ないか」


 一先ず、適当に暴れなければならない。

 アグラスはそう判断した。


 今回、アグラスがこの地にやってきたのは威力偵察のためである。

 即ち……自分に対し、神々がどう対処するのか。


 情報を集め、対策を立てるのだ。

 

 強大な神々に対し、必勝を期すために。


 「すべては……母上のために!!」


 手始めに彼は近くにあった城郭都市へと近づく。

 文字通り蛇となっている足を動かし、田畑を踏み潰しながら、都市へと近づく。


 人間たちが大騒ぎをしているのがよく分かる。


 「ふん、小さいな」


 アグラスは上から都市を見下ろす。 

 そして大きく手を振りあげ……都市を粉砕しようとした。


 「っむ!」


 しかし振り下ろしたはずの手は、何者かに弾き返されてしまった。

 ジン……とした痛みが残る。


 「俺の故郷に手を出すな……この化け物め!」


 そこには槍を手に持った青年がいた。

 人間である。


 アグラスは鼻で笑う。


 「人間如きが……この俺に勝てると思うなよ?」


 アグラスは自分の瞳と同じサイズの人間へと、再度拳を振り下ろす。

 右、左、右、左……


 

 「っぐ……」

 「ほれ、もう限界だろう?」


 アグラスは人間を見下ろした。

 すでに人間は血塗れ、ボロボロになっていた。


 (……しかし手は少し傷んだな)


 アグラスは手の痛みを感じながらも……

 止めを刺すために、両手を組み、一気に振り下ろした。

 

 城壁ごと、人間を押しつぶそうとする。

 しかし……彼の手は空中で止まってしまった。


 それどころか、強く手を押され……吹き飛ばされてしまう。


 「な、なに!?」


 そして……アグラスは気付いた。

 濃密なまでの、強大な神威を。


 そこには女神がいた。


 髪は黄金に輝いており、髪先は蛇となっている。

 右目は青色に、左目は黄金に輝き……その双眸は宝石のよう。

 美しい容姿に、均整の取れた体つきは芸術品を思わせる。


 そんな女神が、頭に羽のついた兜を被り、鎧を着込み、左手に盾を、右手に槍を持ち……

 天馬に跨り、倒れたアグラスを見下ろしていた。


 「レオニダス、私の信仰の中心地を守ったこと……褒めてあげましょう。ですから……あなたには、これから起こる戦いを観戦する権利を与えます」


 凛々しい声で……

 アルティシーナ神は言った。








 アルティシーナ神は内心で大いに焦っていた。


 (あ、危なかった……こんなところでレオニダスを失ったら、勝てる戦も勝てないよ。全く……帰れと言ったのに、どうして言うことを聞かないのか。まあ、生まれながらの英雄だからですかね……少しは言うことを聞いてくれてもいいのに)


 レオニダスが死ぬと、全ての計画が水の泡になる。

 それだけは避けなくてはならないのだ。


 それなのにレオニダスは率先して、巨兵に立ち向かってしまった。


 (弱すぎたら死んでたし……逆に強かったら、勘付かれたかも。やっぱりある程度は情報を開示した方が良いかもしれませんね。とはいえ……今は目の前の敵に集中しましょうか)


 アルティシーナ神は地面に倒れ込んだ、無様な神の出来損ないを見下ろした。

 そして低い声で言う。

 

 「私の信仰の中心地に手を出して、ただで済むと思わないでくださいよ? ……嬲り殺しにしてやる」


 すると巨兵アグラスは大笑いをした。

 そしてゆっくりと立ち上がる。


 「ふはははは!! 殺す? 貴様が、俺を、殺すだと? やれるものならやってみるがいい!! 殺せるものならな!!」


 アルティシーナ神は静かにアグラスを見下ろし……

 槍を空へと向ける。


 それが合図となり、神々がアルティシーナ王国周辺を覆い隠すだけの神界を展開した。


 以前、アルティシーナ神とマレアス神が争ったものよりも……

 遥かに丈夫なものである。


 「レオニダス、よく……見ていなさいね?」


 そしてアルティシーナ神は天馬に跨り、槍を構えて突進した。

 流星のごとく、その一撃は……


 アグラスの心臓部を射貫いた。


 胸に大穴を開け、地面へと再び倒れるアグラス。


 「す、凄い……一撃で倒してしまった……」


 レオニダスは驚愕で目を見開いた。

 レオニダスが為すすべもなくやられた相手を……一撃で倒してしまったのだ。


 「……いえ、まだですよ」


 アルティシーナ神は呟いた。

 すると……見る見るうちにアグラスの傷が修復していく。


 そしてゆっくりと立ち上がった。

 「この程度か? アルティシーナ神よ。痛くも痒くもないぞ」

 「そうですか……では、何度だって殺してあげましょう!」


 天馬が空へと飛びあがる。

 そして……何度も、何度もアグラスの体を射貫いた。


 その度に体に穴が開き、鮮血が噴き上がる。

 しかし……瞬く間にアグラスの傷は修復してしまう。


 「ははははは!! これで終わりか、アルティシーナ神よ!」

 「っち、やはり厄介ですね」


 アルティシーナ神は面倒くさそうに呟いた。 

 アルティシーナ神の攻勢が終わると……アグラスは笑みを浮かべる。


 「では、今度はこちらから、いかせて貰おうか?」


 アグラスがそう言うと……どこからともなく、燃え盛る樫の棍棒を取り出した。

 それを一気にアルティシーナ神へと振り下ろす。


 レオニダスは思わず目を瞑った。


 アグラスからすればアルティシーナ神など、アリのように小さな存在。

 巨大な棍棒で殴られれば、あっさりと叩き潰されてしまうように思われた。


 しかし……


 「堅き盾(アイギス)


 アルティシーナ神の掲げた盾により、その一撃はあっさりと防がれた。

 アグラスはアルティシーナ神を叩き潰すどころか、その場から砂粒一つ分すらも動かすことができなかった。


 「私の盾の守りを突破することは、不可能ですよ」


 そしてアルティシーナ神は槍を構える。

 

 「食らいなさい……愚者の聡慧なる神槍(オピス・ロンヒ)!!!!!」


 槍を振った。

 黄金の閃光がアグラスを襲う。


 「ぐぁぁあああああああああ!!!!」


 黄金の光の中……アグラスの悲鳴だけが響く。

 そして光が消え、視界が戻る。


 「な、なんて破壊力だ……」


 レオニダスは茫然とした。

 地面は大きく抉られ、森林は吹き飛ばされている。


 もしここが神界でなければ、多くの死傷者が出ただろう。


 「……あの、デカブツはどこだ?」


 レオニダスは優れた視力で周囲の様子を伺う。

 すると……遥か遠方、海の中に下半身だけになった死体が浮かんでいた。


 「これであの化け物も終わりか」


 さすがに上半身が消し飛べば、生きてはいられないだろう。

 レオニダスはそう判断し、アルティシーナ神に話しかけた。


 「やりましたね! アルティシーナ様!」

 「……」


 しかしアルティシーナ神は以前として、表情を硬くしたまま……

 海を睨んでいた。


 (……まさか)


 レオニダスは再び海へと視線を移す。

 すると……その下半身だけの死体の断面が盛り上がっているのが確認できた。


 その盛り上がりは見る見るうちに大きくなり……

 やがて上半身となった。


 アグラスは海の中で立ち上がり、大声で笑う。

 遥か遠方の海にいるのにも関わらず、その声はレオニダスたちのところまで届いた。


 「ふははははは!! 残念だったな、アルティシーナ神!」


 そしてアグラスは言った。


 「俺は、俺たち巨兵は、神による攻撃では死なない(・・・・)のだよ! つまり、貴様らがこの俺に勝つ術などないのだ!!」

女神様の関連作品として、新作を投稿しました

こちらは30話ほどで終わります

下記のリンクから飛ぶことができますので、良かったらどうぞ

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