表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/43

第15話 女神様は父親に説教を受ける

 神々の王、ディシウス神に命じられたアルティシーナ神とポーロワ神の二人は……

 しぶしぶという表情で武器を降ろした。


 ディシウスはギロリとアルティシーナ神を睨みつける。


 「アルティシーナ、お前……『槍』を使おうとしたな?」

 「……」


 アルティシーナ神は頬を膨らませた。

 まるで拗ねた子供のよう……いや、実際に拗ねた子供そのものだった。


 「お前の『槍』は星を穿つほどの破壊力がある。……それを自覚した上で、抜いたな?」

 「……ポーロワなら、受け止めると思って抜きました。実際に、あのまま放っても『白銀の弓』と相殺されたはずです」


 ちゃんとそれくらいは考えている。

 と、アルティシーナ神は反論した。


 「それでも、もしもがある。周りを見て、武器を抜け。ここは天界では無いんだぞ」

 「……はい」

 

 しぶしぶ……という表情でアルティシーナ神は返事をした。

 そして次はポーロワ神を睨みつける。


 「お前もだ、ポーロワ」

 「しかし父上、最初に武器を抜いたのはアルティシーナで……」

 「どちらも同罪だ! もしも、貴様の『弓』の余波が星全体に広がってみろ。どれだけの人間の数が減ると思う? 人間なんぞ、放って於けば増えるが……限度がある」

 「……申し訳ありませんでした」


 ポーロワ神はあまり納得してなさそうな表情で……

 しかし口だけ謝る。


 ディシウス神はそんな二人の態度を見て、溜息を吐いた。


 「全く、バカ息子とバカ娘め。喧嘩はするなとは言わないが、少しは周りを見ろ?」


 ディシウス神の言葉にアルティシーナ神とポーロワ神は項垂れた。

 そんな三人の様子を見て、アレクサンドラは思った。


 (……ディシウス神って、割とまともなんだ)


 アレクサンドラのイメージの中のディシウス神は、傍若無人の暴君で、女性とあらば見境なく襲う、どうしようもない神である。

 だが考えてみれば、ディシウス神は全知全能の絶対神だ。


 歪められた神話、そしてそれによって付与された巨大な色欲によってその能力と知性は曇ってはいるものの、その能力は神々の頂点に位置する。

 あの癖の強い神々をまとめ上げ、王として君臨しているのだ。


 もしもディシウス神が野蛮なだけの神であったならば、巨神大戦に勝利することは叶わず、未だにこの世は巨神たちによって支配されていたはずだ。


 アレクサンドラの中で父親、ディシウス神の株が少し上がる。

 ディシウス神は尚も説教を続ける。


 「良いか、ここはアルティシーナの支配領域の中心からかなり離れたところにある。それが何を意味しているか、分かるか? ……あの、ユーラの目が届き得るということだ!!」


 ディシウス神は怒鳴った。

 そして二人を睨みつける。


 「ユーラの目が届き得るところで、アレクサンドラの近くで派手な喧嘩をする……そんなことをすれば俺の浮気がバレるだろうが!!!!」


 ああ、やっぱりディシウス神ってのはそういうやつなのか。

 一度上がったディシウス株が、アレクサンドラの中で大暴落を始めた。


 「お前ら、俺の浮気がバレたらどう責任を取ってくれる? あいつは、姉上はキレると怖いんだぞ……」


 「……」

 「……」

 「……」


 浮気そのものはあなたの責任なのではないか?

 ここへ来て、初めてアルティシーナ神とポーロワ神、そしてアレクサンドラの意見が一致した。


 「そもそもだ! アルティシーナ。お前がポーロワを強引にアレクサンドラから引き離そうとしたことが大元の原因だ。お前がポーロワの行動をある程度認めていれば、このような事態にはならなかった」

 「しかし、アルティシーナ王国は私の信仰の中心地で……」

 「男と女の恋愛にまで、干渉をするな。ポーロワがアレクサンドラを口説く分は大目に見ろ!!」

 「……はい」


 アルティシーナ神はあまり反省してなさそうな表情で頭を下げた。

 アレクサンドラは、ディシウス神とアルティシーナ神の会話を聞き……ふと思った。


 (……ちゃんと、見てくれていたんだ)


 暴落を続けていたディシウス株が少し持ち直す。

 レオニダスもアレクサンドラも、ディシウス神は自分たちと自分たちの母親を捨てて、すっかりと忘れ去ってしまったのだと思い込んでいた。

 しかしそれは違った。


 父親として、しっかりアレクサンドラたちを見守ってくれていたのだ。


 神、それも神王という立場があり……

 またディシウス神なりの愛情ではあるものの、自分たちを決して忘れたわけではなく、ちゃんと愛してくれていた、見てくれていたということが分かり、アレクサンドラは少しだけ心が温かくなった。


 「ポーロワ! お前も悪い。アルティシーナは確かにお前の恋路を妨害したが、だからと言ってアルティシーナの庇護下にある処女を誘拐して良いはずがないだろう! アルティシーナは処女神、未婚の女を守護するのがその職務の一つだ。それくらいお前も分かっているだろう?」

 

 「ですが……」

 「そもそも、お前は道理を弁えていない! アレクサンドラと結婚したければ、まず初めに通すべき道理があるはずだ!」


 ディシウス神に叱られ……

 そこで初めてポーロワ神は気が付いたようで、ハッとした表情を浮かべる。


 「アレクサンドラの父は俺だ。まずは俺に許可を取るのが物事の道理だ。違うか?」

 「……はい、その通りです。父上」


 ポーロワ神は項垂れた。

 アレクサンドラは現在、アルティシーナ神の庇護下にあるが……大元をただせばディシウス神の娘である。

 アレクサンドラを強引に略取することは、ディシウス神に喧嘩を売る行為だ。


 ディシウス神はこの世界に於ける家庭のルール、家父長制の守護神でもある。

 息子が父の許しを得ずに娘と結婚をしようとする。

 それは家父長制を根幹から揺るがす行為。


 ディシウス神はそれを捨て置くわけにはいかないのだ。


 「そもそもだ……アレクサンドラは俺の娘なわけだから、つまり俺の女でもある。手を出して良いはずがない」

 (((いや、その理屈はおかしい)))


 再び三人の意見が一致した。

 

 それからディシウス神はポーロワに命じる。


 「一先ず、今回のところは引け」

 「しかし……」

 「罰だと思え。筋を通さなかったお前が悪い。……アルティシーナ! 速やかにアレクサンドラを連れ帰れ」

 「はい!!」


 アルティシーナ神は勝ち誇った笑みを浮かべる。 

 結果的にはアルティシーナ神の要求が通ったからだ。

 ポーロワ神がそんなアルティシーナ神を苦々しい表情で睨む。


 ディシウス神は一つ、付け加える。


 「それと他人の恋路に口を挟むな。手段が強引でない限り、お前には干渉する権限はない」

 「……はい」


 アルティシーナ神は不服そうな表情で頷いた。 

 自分の要求、つまり次の機会に求婚をすることが認められたポーロワ神はにやにやと笑みを浮かべる。

 アルティシーナ神はそんなポーロワ神を睨みつける。


 「それと、アレクサンドラ」

 「は、はい!」


 アレクサンドラの心臓が跳ね上がった。

 元々、滅多にその姿を仰ぐことのできない神々……その中でも頂点に君臨する神王に声を掛けられたのだ。

 そしてまた、これは生まれて初めて……実の父親との会話でもある。


 「今まで放置していて済まなかったな。……俺にも事情があってな」


 事情とは主にユーラ神のことであろう。

 ディシウス神が頻繁に――例え数年に一度でも神の感覚では頻繁になる――人間界に下りれば必ずユーラ神はそれに気付く。


 ディシウス神はユーラ神に怒られる羽目になる。

 もっとも……ディシウス神はお小言で済むが、レオニダスとアレクサンドラはそれでは済まない。


 ユーラ神は結婚と貞節を司る神であり、一夫一妻制度の守護神でもある。

 一夫多妻に繋がりかねない浮気や、正妻以外から生まれた子供を認めるわけにはいかない。


 ユーラ神の「嫉妬」という要素もあるが……

 浮気相手とその子供に天罰を加えるのは、ユーラ神の大事な職務なのである。


 ディシウス神はそれを妨げることはできない。

 神々のルール、法に反するからだ。


 ユーラ神の呪いがどれほどのものになるかは分からないが……

 レオニダスとアレクサンドラが不幸になるのは確実だ。


 二人のためにも、ディシウス神は会いに行くことはできない。


 「いえ……その、見守ってくださり、ありがとうございます」

 「ああ、レオニダスにもよろしく言っておいてくれ。……さて、アルティシーナ。そろそろアレクサンドラを連れ帰れ。今はトルトメスが誤魔化しているが、いつまで持つか分からない」

 「はい、分かりました。お父様」


 アルティシーナ神は頷き、アレクサンドラへと駆け寄った。

 そしてアレクサンドラをペガソスの背の上に乗せる。


 「その、ありがとうございます」

 「礼には及びません。あなたを守るのは私の職務ですから……バカな兄が迷惑をかけましたね」

 「い、いえ、そんな……」


 ポーロワ神が近くにいる手前、それを肯定するわけにはいかない。

 故にアレクサンドラは曖昧に首を横に振った。

 その様子を見たポーロワ神はアレクサンドラに手を振る。


 「では、アレクサンドラ。今度は筋を通してから、しっかりと迎えに行く。結婚指輪も用意しておこう……楽しみしていてくれ」

 「い、いえ……そ、それは結構です」

 「遠慮するな」


 何を言っても無駄のようだ。

 アレクサンドラは溜息を吐いた。


 「行きますよ?」


 早くアレクサンドラをポーロワ神から引き離したいアルティシーナ神は、アレクサンドラに声を掛ける。

 アレクサンドラは頷いた。


 アルティシーナ神がペガソスに命じると、空へとペガソスが舞い上がる。


 「あ、あの!!」

 

 去り際にアレクサンドラはディシウス神に呼びかけた。

 顔を赤くし、そして緊張に声を震わせながらアレクサンドラは叫ぶ。


 「さ、さようなら……お、お父様!!」


 アレクサンドラの言葉にディシウス神はにやりと笑みを浮かべた。

 そしてディシウス神も叫ぶ。


 「巡り合わせが良ければ、また会えるだろう。じゃあな、我が娘よ」

 「はい!!」


 ディシウス神とアレクサンドラが別れを交わすのを確認すると、ペガソスは一気に空を蹴り……

 彼方へと飛び去って行った。








 「さて、ポーロワ」

 「何でしょう、父上」

 「ユーラのやつを誤魔化すのを、手伝ってもらうぞ」

 「えー、嫌ですよ。俺とあの人、仲が良くないの知ってるでしょう? あの人のせいで母上がどれくらい苦しんだと思ってるんですか」

 「ええい! お前がアホみたいに喧嘩したのが悪いだろう! 協力しろ。……アレクサンドラが呪い殺されても良いのか?」

 「……分かりましたよ。ええ、上手い言い訳を考えます」


ディシウス神……ディシウス率100%

アルティシーナ神……ディシウス率75%

ポーロワ神……ディシウス率50%

アレクサンドラ……ディシウス率50%


ペガソス(この空間、ディシウス率が濃いな……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がなろうで連載している他作品です
もしお時間があったらどうぞ
『復活の聖女~三千年後の世界に蘇った預言者ちゃんは火炙りではなくベッドの上で平穏に死にたい』
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ