↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令嬢の破滅回避に奔走していたら、忠実な護衛騎士が逃げ道を全部塞いで溺愛してきます  作者: フトダマノミコト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/20

第13話 卒業パーティー、断罪の幕開け

 卒業パーティーの会場は、王宮の大広間だった。


 天井には巨大なシャンデリアが連なり、床の大理石が、無数の灯りを映してきらきらと輝いている。


 着飾った卒業生と、その家族。王家に連なる貴族たち。


 壁際には、騎士団長と、大司教の姿も見えた。


(ゲームと、同じ配置……)


 深い藍色のドレスの裾を握りしめて、私は、大広間の入口に立った。


 隣には、騎士の正装に身を包んだアルヴィンがいる。


 エスコートをする者のいない私の傍らに、彼は、当たり前のような顔をして立っていた。


「お嬢様。参りましょう」


 差し出された腕に、そっと手を添える。


 扉が開いた。


 その瞬間、ざわ、と、会場の空気が揺れた。


 向けられる視線。ひそひそと交わされる囁き。


「あれが、ローゼンベルク様……」


「よく顔を出せたものね」


「聖女様を、あんな目に遭わせておいて」


 針のような言葉が、四方から降ってくる。


 私は、顎を上げて、まっすぐ前を向いた。


(大丈夫。逃げない)


 隣のアルヴィンが、私にだけ聞こえる声で、囁いた。


「お顔を上げて。とても、お綺麗です」


 その一言で、足の震えが、少しだけ収まった。




 パーティーは、表面上は、穏やかに進んでいった。


 楽団の演奏。ダンスの輪。


 私は壁際に立って、ただ、その時を待っていた。


 誰も、私に話しかけない。


 その代わり、遠巻きにこちらを窺う視線だけが、絶え間なく刺さってくる。


 やがて、楽団の演奏が、ぴたりと止まった。


 壇上に、金髪の青年が立つ。


 王太子レオンハルト。


 その隣には、白いドレスをまとったミナが、可憐に寄り添っていた。


「皆、聞いてほしい」


 よく通る声が、大広間に響き渡る。


「今宵は、卒業という晴れの日だ。しかし同時に、私は、この場で、為さねばならぬことがある」


 会場が、しんと静まり返った。


 私の心臓が、どくんと、大きく跳ねる。


(来た……)


 レオンハルトの碧い瞳が、人々の頭越しに、私を捉えた。


「セレスティア・ローゼンベルク。前へ出よ」


 無数の視線が、一斉に、私に集まった。


 足が、動かない。


 その時、腕に添えた手を、アルヴィンが、ぎゅっと握り返した。


「お嬢様。僕を、信じて」


 囁きに、背中を押される。


 私は、ゆっくりと、壇の前まで歩いていった。


 ヒールの音が、やけに大きく響く。


 壇上を見上げると、レオンハルトが、冷え切った目で、私を見下ろしていた。


「セレスティア・ローゼンベルク」


「はい、殿下」


「私は、この場で、そなたとの婚約を破棄する」


 どよめきが、波のように広がった。


 わかっていた。


 ゲームの通り。


 それでも、実際に言葉で突きつけられると、全身の血が、さっと引いていく。


「理由を、お聞かせ願えますでしょうか」


 震えそうになる声を、必死に抑えて、問い返した。


「理由、か。いいだろう。そなたの罪を、すべて、この場で明らかにしてやる」


 レオンハルトが、一歩、前へ進み出る。


「一つ。そなたは、聖女ミナに対し、長きにわたって、陰湿な嫌がらせを続けてきた」


 ミナが、わざとらしく、目元を押さえた。


「教科書を破き、階段から突き落とし、数え切れぬほどの暴言を浴びせた」


「そのような事実は、ございません」


「黙れ。証人がいる」


 レオンハルトが、指を鳴らす。


 人垣の中から、三人の令嬢が、おずおずと前に出てきた。


「わ、私たちは、見ました」


「ローゼンベルク様が、ミナ様に、ひどいことを……」


「階段で、背中を押したところを、確かに」


 震える声で語られる、嘘の証言。


 私は、唇を噛んだ。


「二つ。そなたは、聖女の暗殺を企てた」


 どよめきが、さらに大きくなる。


 レオンハルトが、懐から、小さな硝子の小瓶を取り出した。


「この小瓶は、そなたの私室近くで発見された。中身は、猛毒だ」


「そんな……! 私は、そのようなもの」


 私の言葉を遮るように、彼は小瓶を壇上の台に置き、今度は折りたたまれた一通の手紙を、高々と掲げた。


「三つ。そなたは、王家への反逆を企てた。隣国の親戚に宛てた密書だ。『王家を覆す機会を窺っている』と、確かに書かれている」


「それは、私の字では……!」


「見苦しいぞ、セレスティア」


 冷たく言い放って、レオンハルトは、私を見据えた。


「以上の罪状により、そなたとの婚約は破棄。さらに、ローゼンベルク公爵家には、厳しい沙汰が下ることになるだろう」


 わあっ、と、会場がどよめく。


「公爵家が、お取り潰しに……?」


「国外追放か、それとも……」


 人々の囁きが、耳に突き刺さる。


 私は、その場に立ち尽くしたまま、動けなかった。


(……やっぱり、物語の通りになってしまうの……?)


 足元が、崩れていく。


 けれど、同時に、頭の片隅で、昨夜の約束が蘇った。


『何が起きても、僕の言葉を信じて、僕を信じて、そこに立っていてください』


 そうだ。


 私は、約束したのだ。


 ここで、倒れるわけにはいかない。


「何か、申し開きはあるか」


 レオンハルトが、勝ち誇ったように、そう言った時だった。


「恐れながら」


 静かな、けれど、大広間の隅々にまで届く声が、響いた。


 人垣が、左右に割れていく。


 その中から、一歩、前へ進み出た人物がいた。


 黒の騎士服。腰には、儀礼用の細剣。


「ローゼンベルク家の護衛騎士、アルヴィンと申します」


 アルヴィンは、壇上の王太子を見上げて、穏やかに微笑んだ。


「一つ、僕から、申し上げてもよろしいでしょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。