第十二話 サタンの暗面との対峙――心はあれど力及ばず
戦況はますます激化! 聖騎士、狂えるアンドラスにどう立ち向かう?!
([偽り]の層、数千年前)
「サタン王、なぜアンドラスを[粗暴]に任命されたのですか?[暴力]ではないとは。先王の定めに従うならば、彼女には本来の称号を与えるべきでは?」
「彼女はまだ[暴力]と呼べる域には達していない。ミノタウロスと比べれば、アンドラスは暴力の方面においてまだ若干の不足がある」
「しかし、ミノタウロスを沸血河の吊橋に配置されたのは、実際にはケイローンさえいれば刑区を制御できるのでは?」
「アンドラスは能力こそ旺盛だが、あの者たちほどの純粋さは持たない。彼女は狂戦士ではなく、領域の主たるべき存在だ。そして、彼女が純粋な命令ではなく対話を通じて説得できるのであれば、そこに弱点がある」
「なるほど……では、なぜ彼女を地獄と林勃の地の境界に配置されたのですか?」
悪魔王宮の内、ベヒモス――かつて地球の陸の王を掌っていた者であり、今は地獄に堕ちてサタンの侍従となっている。彼は「審判の日」以前、陸上最強の生類であったが、神の罰により、今では黄髪の男形悪魔として、王宮の宴席と酒窖を専ら管理している。
「老いたる者が長く動かねば、必ず誰かを遣わすであろう」
「なぜそうお考えなのですか?」
「では率直に言おう、ベヒモス――あの『世人之書』こそ、私が未来を予見するよりどころだ」
「なるほど。しかし、あの書もあなたが創り出されたものでは?」
「では、哲学的談義をしようではないか」
「いつでもお相手いたします、サタン王」
サタンは歴史を刻んだ悪魔王座に座し、ベヒモスと水晶のチェスを指しながら、自らの哲学を語っていた。
「ベヒモスよ、人間は何から生まれたと思う?」サタンは盤面を見据え、ベヒモスの手を待ってから駒を進めた。
「神はご自身のかたちに、ご自身の似姿に人を造られた。男と女とに彼らを造られた。神はご自身のかたちに人を造り、すなわち神のかたちにこれを造り、男と女とに彼らを造られた」
「創世記1:26-27……結構。だが、人間界には多くの誤謬がある。凡庸な者どもは、いわゆる『神人同形同性』を唱える。しかし、まさに神が自らの像と性格をもって人を創られたからこそ、それらの複製品は目が曇って神を見ることができず、その誤った論を導き出すのだ。我々悪魔こそ、神を見たからこそ、自らが神に創られた存在であると理解している」
「サタン様、あなたの申されることは……」
「言いたいのは、眼前のことに固執するなということだ。物事の真実は、未知のうちに断じるべきではない」サタンはクイーンを進め、ベヒモスのルークを取った。「チェックメイトだ」
「私の負けでございます、サタン王」
「うむ……次はもう少し熟考することだな、ベヒモス」
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(現在、[粗暴]の層)
「どこで魔力を補給すればいい?」
聖騎士は茶色の亀裂石畳の道を疾走し、背後から襲い来る赤い鎖を避け続けていた。それらの鎖は地中に貫入し、再び赤い大地から幾重にも隆起する。大地はその鎖によって縦に裂かれ、跳ね上がる砕石が反応しきれない魔物たちに降り注ぎ、次々と絶命させていった。
「不謹慎だが、助かった」
【魔力吸収】
聖騎士は走りながら死んだ魔物たちの魔力を吸収し、聖剣を抜いて鎖が迫るたびに切り払った。
【聖光裁決・波】
一回転し、自らを包み込む赤い鎖を全て断ち切ると、聖騎士はすぐに路地へ飛び込み、次のより激しい波をかわした。
(「今の彼女は意識を失っている」)
【黒鎖】とは何なのか? なぜアンドラスだけに備えられ、ウェリティエルたちにはないのか? まさか、彼女の知性が低く操りやすいからなのか?
数百の魔物から魔力を吸収し終えると、聖騎士は振り返り、太さの異なる赤い鎖を踏みしめた。足を踏むたびに、一輪一輪の赤い荊が彼の足元に咲く。高空で鎖を狂ったように伸ばすアンドラスを見上げ、彼は駆け上るしかなかった。
(「地獄の現状は、想像とは大きく異なる……」)
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([粗暴]の層・刑区)
「ちっ、なんでこんな地獄みたいな場所に飛ばされんだよ?!」
「知らんな。だが、お前の死期は確かに来ている」
沸血河の上、手に[雷風剣]を携えた黒髪の少年が半ば生死の境で吊橋に立ち、その瞳は恐怖と悔恨に満ちていた。彼の向かいに立つ牛頭人は、[暴力]の徒と呼ばれるミノタウロスである。
「俺、死ぬのか……」少年は口から血を吐いた。先ほどミノタウロスの蛮力による一撃を受け、すでに体力は尽きかけていた。
「やはり人間は脆い。魂も肉体も、我々魔族には遠く及ばぬ」ミノタウロスの鼻からは熱気が立ち上り、その銘文の刻まれた筋肉には青筋が浮かんでいる。「地獄に堕ちた以上、お前は完全に死ぬのだ!」
【野牛直撞】
瞬時に、ミノタウロスは光芒と化し、少年の胸めがけて蛮力の一撃を放った。少年は[雷風剣]で防御したものの、その衝撃は彼を数メートルも吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
「次は、お前を――」
(「ドクン!」)
(「何だ?」)
ミノタウロスの胸に突然の動悸が走る。どうやら主であるアンドラスが生命の危機に瀕しているようだ。一刻の猶予もならない。
「おい、下郎ども! この人間を細切れにしろ」ミノタウロスは腕を一つ捻ると、猛烈な速さで吊橋の彼方へ駆け出した。
「た、助かったのか?」少年は震える手で[雷風剣]を掲げ、刃を他の魔兵たちに向けた。
「よく聞け、魔物ども。我はヒルド・キン・ブラントである! なぜここに飛ばされたかは知らぬが、お前たちを片付けるには十分だ――」
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(その頃、悪魔城内)
【幽影疾避・重影】
「今こそ、お前を落ち着かせてやる!」
【傾羅天城】
赤い大陸のすべての鎖が大地から引き抜かれ、無数の家屋が赤い鎖に絡め取られて粉砕され、赤い天空へと集まっていく。空中に浮遊する建物は数え切れず、その果ては見えない。まさに、天穹全体が密に建物で覆われ、あたかも黒雲のように[粗暴]の地を包み込んでいた。
「まずい、フラミの方――」
聖騎士は左拳を握りしめ、臂甲の青い銘文が輝く。
【聖斥・散】
【靈魂感知】
(「これでよし」)
「死ね――――!!!」
瞬時に、すべての鎖が絡み合い、建物同士が衝突し圧縮されて、一片の残骸の波浪を築き上げた。アンドラスは左手を掲げ、それらの赤い鎖を一体とし、地面へと叩きつけた。
聖騎士は地上の万物を覆い尽くす黒雲を見上げ、髭のない顎を撫でた。
【虚形・幻化・聚】
その黒雲が完全に降り注ぎ、悪魔城の街路をすべて粉々に打ち砕いた。地震が四方に起こり、溶岩が噴き出す。[粗暴]の地は瞬く間に廃墟の都と化した。この破壊的な災厄は数十分にわたり、地上の堡塁が灰燼に帰し、煙が四方に散るまで続いた。
「お前は、そこまでする必要はなかった」
聖騎士は厚い瓦礫の中から飛び出し、赤い鎖に包まれたアンドラスへと歩み寄る。鎖が狂ったように彼を突こうとするが、彼は【魔力感知】でそのすべてを正確に跳ね返していく。
【魔力吸収】
【魔力集中】
その言葉を発するたびに、聖騎士は聖剣を逆手に構えて赤い鎖を弾く。そうして、彼はゆっくりとアンドラスの目前に立った。
(「黒鎖――」)
「無駄だ」
聖騎士は横に身をかわして鎖鎌の攻撃を避け、そのまま腕でアンドラスの左手を挟み込み、聖剣で彼女の左足首の鎖を断ち切った。
【聖光裁決・聚】
「ぐっ――!!」
アンドラスの足首から大量の黒い血が噴き出す。しかし聖騎士は構わず、彼女の右拳の攻撃もかわした。
「まずは戦闘能力を奪う」
【虚形・殘影】
アンドラスのその後の数拳はすべて聖騎士の残像を打つだけだった。聖騎士は左腕で肘打ちを一発放つと、アンドラスの左手は折れ、鎖鎌は地面に落ちた。
【魔引】
【魔隐】
「少し休め」聖騎士は動けなくなったアンドラスを支えながら、彼女の右足首の鎖を断ち切ろうとした。
「シュッ――」
(「何だ?!」)
いつの間にか、あの鎖鎌が聖騎士の腿甲を貫通していた。アンドラスはその隙に右拳で聖騎士の心臓を打ち抜く。今度は、彼の胸部を完全に貫通した。
(「俺も、力を使い果たしていたのか……」)
【回朔】
【世人之書】
……………
「やはり、彼を消すことはできないようだな~」
……………
聖騎士は青き大地の上で身を起こし、聖剣を収めて、見えない額を拭った。
「くそっ!」聖騎士は髭のない顎を撫で、心の中に一瞬の焦燥が走る。
「先ほどのあの一撃を避ければよかっただけだ」彼は自らに言い聞かせるように呟いた。
豆知識です。
悪魔の称号は、地獄内の他の事物や悪魔領主たちに影響を及ぼすことがあります。
例えば、[淫欲]の悪魔アスモデウスの称号により、すべての悪魔領主が女性の外見を有することになりました。また、[傲慢]の悪魔ルシファーの称号により、すべての悪魔領主が聖騎士の説得を受け入れにくくなっています。
特筆すべきは、悪魔領主の称号は他の領主に対して付随的な概念を付与するにすぎませんが、領主自身の本質(性格など)は称号によって影響を受けるということです。自らの称号を保持し続ける限り、その本性を保ち続けられるのです。




