表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二部】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜  作者: 鬼喜怪快
序章 望遠の記憶編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/16

9話 永遠の出会い




 白き鬼の女と黒き鬼は、カエデと父親と別れ、山を降りていた。


 あてのない旅の始まり。

 終着点も定めぬ、終わりの見えない旅だった。


 白き鬼の女の興味によって目的地は変わる。

 黒き鬼は、仕える者としてその後を追うだけだった――


 下山の途中、山を登ってくる者と出くわした。

 その男は、笑顔で声を掛けてきた。


 「山頂はまだまだですか?」


 「……」


 「しかしこの山は傾斜がきついですねぇ……」


 「……」


 男は2体の顔をまっすぐに見た。


 「言葉の通じない妖なのかな?」


 「……」


 「君たちが……山神様?」


 すると白き鬼の女がクスッと笑った。


 「旦那様……わたしどもは山神などではございませんよ……」


 「そうでしたか……それは失礼」


 互いに何事もなかったようにすれ違う。

 男は山を登り――

 鬼は山をくだる――


 そして――。


 『虚空のこくうのしき


 草木と風の声が止み、景色の色が紫色に染まる。

 呪力で形成された、空間すら喰らう光の球体が2体に向かって放たれた。


 「!」


 白き鬼の女と黒き鬼は、一瞬にして木の上に飛び移っていた。


 「……信じられないな。この術を不意打ちしたのに躱すだなんて」


 白き鬼の女は木の上から返す。


 「信じられないのはこちらも同じ――

 今の術、まともに喰らえばこの世から消えていましたよ。

 頑丈なだけが取り柄の彼の腕が、吹き飛ばされてしまった……」


 黒き鬼は左手を失ったまま、木の上から男を見下ろしている。


 男は2体に問う。


 「生贄を求め、人々を苦しめている妖に間違いないね?」


 「……」


 「もっと低級な妖を想像していたが……これはかなりの大物だ」


 気が付けば、男の前に黒き鬼が移動しており、拳を繰り出す。


 ――ドウン!


 光の壁が衝撃をすべて吸収するように、拳を防いだ。

 前鬼は連続で拳を打ち込む――


 しかし、光の壁はビクともしない。


 『業火のごうかのばく


 白き鬼の女が炎術を放つが、それすら通さない。


 2体は男から距離をとる。

 男も静観するように、2体から目を離さない。


 「完全防御術――その光の壁は隠世へ繋がる空間ですね?」


 「!」


 「たかが人間が、そのような物騒な術を……驚きです」


 「お褒めに預かり光栄だよ」


 だが、また彼女はクスッと笑った。


 「あなた……その場から身動きが取れないのではありませんか?」


 「!」


 「強力な術ほど、何かと縛りがありますから……

 わたしどもがこのまま逃げることは簡単なことのようです」


 男は右手の指を2本、口元に添えた。

 強力な呪力が一帯を覆う。


 「逃さないよ……」


 「……!」


 ――『光矢のこうやのしき


 天から光の槍が広範囲に降り注ぐ。

 回避不可の全体攻撃呪術だ。


 ズドドドドドドッ――!


 草木を荒らすことはしたくなかったが、手加減のできない妖と判断。

 呪術師は本気だった。


 「!」


 「できました……」


 「……嘘だろ?」


 「見様見真似ですが、この光の壁……便利ですね」


 白き鬼の女は、男の使う防御術を見て覚えたようだ。


 「彼の腕を消し飛ばしたあの術は、

 仕組みがわかりませんので使えませんが、

 この光の壁は、隠世を口寄せする召喚術のようなものですね……」


 呪術師は驚嘆する。


 このような妖を見たことがなかった。

 もちろん戦ったことも……。


 幾千の妖を見てきたが、この女の妖は段違いの知性を持っている。

 そして、黒い男の妖も……腕を失ったところで動じることもなく、

 冷静に攻撃の隙を伺っている。


 「これほどの妖は見たことがない……

 どうして君たちのような高位の妖が、生贄など欲しがるのか理解に苦しむよ」


 すると白き鬼の女が、呆れたように口を開いた。


 「別に誤解を解きたいわけでもありませんが、

 生贄を欲していた狢はすでに始末しましたよ」


 「?」


 「あと、攫われた女性はすでに親元に返しております。

 あなたがその件でここまで来られたのなら、まったくの無駄骨というやつです」


 「……なんだって? 本当かい?」


 「それと……わたしどもは妖ではありません。

 鬼です。お間違いなきよう……」


 男は黙って考えごとを始めた。

 色々と理解ができないことが多いようだ。


 「!」


 突然、思い出したように口を開いた。


 「ひょっとすると君たちが夫婦鬼かい? 巷で有名な!」


 有名かどうかは知らないが、そのように呼ばれていることは知っていた。


 「そのように呼ばれているようですね……」


 適当な返事を返した。


 しかし、その後の呪術師の言葉に衝撃を受ける。


 「そうか、前鬼・後鬼とは君たちのことだったのか?」


 ――前鬼・後鬼?


 初めて聞く言葉に、2体は目を合わせる。


 「なんです……それ?」


 「君たちの名だろう……前鬼と後鬼じゃないのか?」


 白き鬼の女は会話に面倒臭さを覚えたのだろう――

 適当な相槌を打った。


 「わたしたちが、その前鬼と後鬼ならどうだというのです?」


 そう質問をすると、呪術師は光の壁を解いた。

 そして、2体に向かって頭を下げたのだ。


 「やはりそうだったか。知らぬこととはいえ非礼を許してほしい」


 「?」


 「夫婦鬼、前鬼・後鬼――君たちの活躍は有名だよ。

 鬼なのに、立ち寄った土地で必ず人間を助けているってね」


 人間を助けている――

 そんなつもりのない2体は、話が掴めないでいた。


 ただ、呪術師に戦意がなくなったことだけは理解できた。


 

 ――――――


 

 『万回の刻――』


 黒き鬼の腕は元に戻っていく。

 その術を見た呪術師は、舌を巻いていた。


 「前鬼……誤解があったとはいえ、すまなかったね」


 呪術師は黒き鬼を前鬼と呼んで謝罪をした。


 「しかし巧みな妖術を使うなぁ……後鬼ほどの鬼は見たことがないよ」


 白き鬼の女を後鬼と呼び、褒め称えた。


 その後鬼は、男に質問を投げる。


 「……我々を退治しなくても?」


 「しないしない! 悪さをしていないなら退治する必要もないし、

 君たちが本気出したら戦ったところで勝てる気しないし」


 呪術師は笑った。

 変わった人間だと、後鬼は思った。


 「しかし、せっかくここまできたのに案件が解決しているとは――

 うれしいやら悲しいやらだ――都にとんぼ返りとはね」


 「……」


 「君たちはこれからどうするの?」


 前鬼と後鬼は目を合わせた。

 特に予定などない。


 「特には……。

 気の向くままにその土地を巡るだけです」


 「それは羨ましい」


 後鬼は、鬼と知りながらも緊張感なく会話を続ける呪術師を、

 変わった人間だと思った。


 それどころか――

 観察したい人間の対象として、興味を持ちつつあった。


 「ところで、あなたは名をなんと申されるのです?」


 「これは失礼、私は都で呪術師をしておる役小角という者だ」


 この日が――

 歴史に名を残す鬼使いの呪術師・役小角と、

 前鬼・後鬼が初めて出会った日となった。


 本来なら、ここで別れて終わるはずだった3人だが、

 後鬼の一言から、互いの運命を大きく変えることになっていく――


 「役小角様」


 「うん?」


 「今、この時を持って――前鬼と後鬼はあなたに取り憑くことにいたします」


 「へっ?」


 突然の後鬼からの告白に驚く役小角。


 こうして――

 小角と前鬼・後鬼の運命の歯車が、

 想定外の音を立てて回り始めた。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ