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【第二部】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜  作者: 鬼喜怪快
序章 望遠の記憶編

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8話 伝説のひとつ前




 近々この山を離れると、2体は父親に告げた。


 父親は、もっと居ればいいと伝えたが、

 さらに人間界の見識を得たい欲求は抑えられそうになかった。


 父親もカエデも、渋々その申し出に頷くしかなかった。


 

 ――――――


 

 カエデと黒き鬼が散策に出ている時――

 父親は、今日までのお礼に刀を作らせて欲しいと申し出てきた。


 白き鬼の女は興味すらなく断ろうとしていたが、

 何かを思い出したように、妙なことを言い出した。


 刀を作る際、鉄に溶かして混ぜてもらいたいものがある――と。


 父親がそれは何かと問うと、

 袖から手のひらほどの小さな木箱を取り出した。


 紐を解いて開けると――

 その中には、胎児の乾燥した遺体が保管されていた。


 空気が、わずかに重くなる。


 「こっ……これは?」


 「わたしたちの子です。興味本意で人間の方法をもって子作りをしてみました」


 「人間の方法って……あんたら人間じゃないか……」


 「……」


 「そうか……腹の中で死んじまって、辛くて供養できなかったんだな?

 その気持ち……わかるよ」


 「とにかく、これを鉄に溶かして刀を作ってください。頼みましたよ」


 しかし、父親は首を振る。


 「いくらなんでもそりゃできないよ! 我が子だろ?

 それを供養もせず溶かすってよ!」


 「別に良いのです。腹に宿してから鬼気ききを毎日のように送り続けた子です。

 その力に耐えられず絶命しましたが、力の宝庫となっています。

 ずっと活用方法を思案していましたが、これがちょうどいい」


 「ちょっと何言ってるのかわからんねぇよ……。

 興味本意で子作りとか、鬼気とかの力の宝庫とかよ……なんだよそれ?

 子供の遺体を炉に入れるなんて、勘弁してくれ……」


 すると白き鬼の女は、目を細めて父親に語りかけた。


 「できるでしょう。あなたなら……」


 「できねぇって!」


 「どうして? すでにカエデさんの母親を炉に溶かして刀を作っているのに……?」


 「……!」


 父親は目を丸くして黙った。

 大量の汗をかき始めている。


 「何言ってんだよ……」


 話をはぐらかそうとする父親に、白き鬼の女は続けた。


 「あらぬ疑いをかけられて、村八分にあったと言っておられましたが――

 飛んだ邪法にて刀を作ったからでしょう?」


 「ば……バカ言うなって」


 「邪法により立派な刀を作って名声は上がったが……人としての道を外した」


 「……」


 「だから……村から外された……」


 「ははっ、おもしれぇーこという」


 父親は顔を引き攣らせながら、笑ったフリを見せた。


 「先日ここに来ていた村人たちは、白羽の矢が立ったので危険だから、

 カエデさんだけでも村で面倒を見るとの話をしに来たのではないですか?」


 「いい加減にしてくれよ……あんたにゃ感謝してんだぜ……酷い言われようだよ」


 「事実でしょう」


 「へへっ、どこにそんな証拠あるってんだよ」


 「ここに来た時から、

 ずっとあなたの首を絞めている怨霊がいるんですよ……

 恨めしい恨めしいと――うるさいったらありゃしない……」


 「……うっ……嘘そつけ……」


 「全身が焼け爛れていらっしゃる。

 壮絶な死を迎えたのでしょうね……名は――ハナ」


 「!」


 「……あなたの幼馴染だった人」


 「も……っ、もういい!」


 父親は全身を震わせ、視線を落とした。


 そして、胎児の遺体を溶かして刀を造ることを承諾する。

 カエデには一切その話に触れないで欲しいと、条件付きだった。


 鬼にとって、本来すべてどうだっていいこと。


 自制、約束、条件――

 すべて不要なものだ。


 やりたいようにやればいい――

 様々なことを気にして生きているのは、人間だけなのだから。


 だからこそ人間に興味を持ったことも事実。


 白き鬼の女は、その父親を面白い生き物を見るような目で見ているに過ぎなかった。


 

 ――――――


 

 20日後――


 我が子の遺体を鉄に溶かし合わせて作った刀と小刀が、完成し手渡された。

 不思議と薄黒くなった刀身を見て、カエデがカラスみたいと言った。


 白き鬼の女は、しばしその刀を見つめ――


 子供、烏――そこから、

 この刀を小鴉丸と命名することにした。


 刀が出来上がるまでの期間の滞在に決めていた――

 いよいよ、2体の鬼とカエデと父親の別れの時が来た。


 「お姉ちゃん、また来てね!」


 「……考えておきましょう」


 「約束!」


 「……」


 白き鬼の女は袖から、小さく布で包んだものをカエデに手渡した。


 「何これ?」


 「後生、肌身離さずお持ちください。多少の悪鬼程度なら退けます」


 「すごい! 怖い夢見ない?」


 「もちろん……」


 「大事にする!」


 膝を落とし、カエデと目線を合わせる。


 「それと、1つお願いが……」


 「?」


 「たまにで良いので、食料に余裕がある時に、先日の沼地へお供えを持っていってください」


 「なんで?」


 「カエデさんを助けるのに力を貸してくれました」


 「沼が?」


 「はい……それにこの地にいるなら仲良くしておくべきです。

 損はありません」


 「??」


 カエデは理解ができないながらも、沼地へのお供えを約束した。


 そして――


 父親から再三の頼み――

 それは取り憑く女の除霊。


 「本当に……頼まれてもらえんだろうか?」


 「……」


 「俺に何かあれば……カエデが悲しむんだ」


 そんな父親に向けて、

 蔑んだ目を向けて口を開いた。


 「あなたたちの今後に興味などないのですよ……」


 「……そんな! あんた、カエデには――」


 「ただあるとすれば……

 殺された女が鬼に落ちた――そしてそれに呪われた男の末路」


 父親は真っ青になり、肩を落とした。


 2体は山を降りる。


 繰り返されるカエデの大きな声でのお別れに、

 一度も振り返らず、白き鬼の女と黒き鬼は山を去っていったのだ。


 

 ――――――


 

 ちょうどその頃――


 すでに案件が解決したことも知らぬある呪術師が、

 村人から相談を受けていた朝廷より派遣されて、山に到着していた。

 




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