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【第二部】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜  作者: 鬼喜怪快
序章 望遠の記憶編

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10話 と、いう話さ


 



 役小角が前鬼・後鬼と出会った日。

 彼は後鬼から取り憑くと宣言されてしまう――



 「今、この時を持って――前鬼と後鬼はあなたに取り憑くことにいたします」


 「へっ?」


 「あなたは大変愉快な人間です。興味が湧きました」


 「……いやぁ……私は鬼や妖に興味ないので。ごめんこうむるよ」



 小角ははっきりと断った。

 すると――


 「そうですか。本来、取り憑くのに許可など必要ありませんので、お気になさらぬよう……」


 ――話が噛み合わない。


 「取り憑くってさ、精気や呪力をずっと吸い続けるってことでしょ?

 それじゃ私の身体が持たないよ。だからお断りで……」


 「嫌なら祓えばいいでしょう」


 「いやいや――君たちを祓う方が命がけになるよ!」


 「なら取り憑く方が良いということでは?」


 「……」



 小角はとんでもないことになったと混乱する。


 取り憑かれる――常に精気や呪力を奪われ続け、

 長期間で見ると死につながる状態。


 祓う――高位の鬼2体と力比べしても、

 勝てる見込みなし。その場で死ぬことになる状態。



 「……なんで私に取り憑くの?」


 「変わった人間だからです。

 わたしどもに攻撃を仕掛けた上に謝罪――

 そして会話を試み退治しようとしない。

 ……それに」


 「それに……?」


 「都にも興味があります」


 「……」

 

 小角も心底思っていた。

 ――変わった鬼だ、と


 ただ、取り憑くことも祓うことも最善の方法ではない。

 他に方法はないかと思案を繰り返す――



 「!」


 「……どうしました?」


 「契約型憑依ってのはどうだろう?」


 「なんですそれ?」



 契約型憑依――

 術者に従う形で憑く契約のことだ。



 「契約型憑依……ですか?」


 「そうでもしないとさ、私自身、

 力を吸われて死んでしまう可能性が高いからね。

 君たち恐ろしく強力な鬼だからさ」


 「あなたが死のうがどうなろうが、知ったことではありません……」


 「その考え方が怖いから、契約型憑依を提案してるんだよ……」



 後鬼は前鬼を見ながら考えた。

 その契約を飲むと、現世への顕現の可否権限を小角に与えることになる。


 ただ小角を長期観察するには、都合のいい案ではあった。


 それに――

 その時が来れば、契約を破棄し出ていけばいいだけの話だ。



 「わかりました……。その契約型憑依の話を進めましょう。

 どういった契約がお望みですか?」



 小角が提案した契約は簡単なものだった。

 

 顕現する時は、小角の許可を得ること―― 

 憑依中は人間を殺さないこと――

 鬼としての本性を見せないこと――

 契約解除時は双方の納得のもと、解除とすること――


 などなどだ。


 小角は呪縛書を見せて、手形を押せるか確認を取った。


 憑依中は人間を殺さないことと、

 本来の鬼としてのあり方を絶対に見せないこと、

 この2つに関しては、鬼や妖からすれば絶対に避けたい部分だろう。


 しかし小角はさらに驚くことになる。


 前鬼も後鬼も簡単に呪縛書へ手形を押したのだ。



 「いやいやいや! 私がいうのもなんだけど本当に良いのかい!?」


 「?」


 「君たちにとって良いこと何もないよ!」


 「でもこれであなたに取り憑けるのでしょう?」


 「……そうだけど」


 「なら問題ありません」


 「契約を破った場合――鬼気や妖気を全部持っていかれるんだよ?」



 それを聞いた後鬼は、まったく後悔のない様子で答えた。



 「それがどうかしましたか?」



 小角は返す言葉もなく、ただ黙ってしまった。



 「それでは今後とも仲良くやっていきましょうね……小角様」


 


 人と鬼が共闘し、闇夜の世界を支配していくのはそれからのことだ――


 巷では、鬼使いの最強呪術師・役小角と前鬼・後鬼を知らぬ者がいなくなるほど、

 後世にまで語り継がれる存在となった。

 


 ――――――



 「……でさ、なぜだかはよくわからないんだけど、

 そんな前鬼と後鬼が、死にかけていた僕が目を覚ました時に――

 “生まれ変わり”が発動して、僕に取り憑いてこっちにきた……と、いう話なんだけど……」


 「…………」

 


 酒盛りが続くギルドハウスの夜。

 その片隅で、フランは相槌もせずロッキの話を最後まで黙って聞いていた。


 やはりこんな話、信じる訳がない。

 いや、信じなくても良いのだ。


 肝心な部分は嘘なのだから――



 「信じられる訳ないよね……こんな話?

 後鬼の作り話だったんだよ、きっと」


 

 フランは小鴉丸に目を向けて、鞘を優しく撫でた。



 「……うん。きっと全部本当の話」


 「!」


 「話の前鬼さんも後鬼さん、ぜんぶ想像がつくもん」


 「……そう?」


 「素敵……」


 「へっ?」


 「今の話の後鬼さん、前鬼さん、カエデちゃん……

 それに呪術師の男の人、みんな素敵だった」



 フランはロッキを見つめて優しく微笑んだ。

 想像していた反応とは違っていたので思わず狼狽えてしまう。



 「小鴉丸が、後鬼さんと前鬼さんの子供の力を溶け込ませたって話はかなり怖かったけど……

 “この子”って言っていた意味もわかったし、今までふたりにしか刀身を見せなかった理由がわかった気がする」


 「……うん」


 「それとさ、話に出てきた小角って名前。

 前に後鬼さんがロキ坊のことを呼ぶときに呼んでたよ……」


 「えっ?」


 「きっと似てるんだよ……その人とロキ坊が……」


 「……にっ似てないよ、全然」



 フランの手がロッキの頬を撫でた。



 「ううん、そっくりだよ。その人とロキ坊」



 フランは立ち上がって伸びをした。

 そろそろ帰るようだ。


 みんなに見つかると捕まる恐れがあるので、

 いつも通り黙っての帰宅。



 そう、彼らはいつも通りだった。



 「ロキ坊が、昔の前鬼さんと後鬼さんと出会っていても――

 同じようなことをしていた気がするな」



 もう一度フランは笑って見せた。



 

 有限なる時間――

 

 こんな平和な時間がずっと続けばいいのにと、

 思わず願ってしまう小角だった。



 


 しかし――


 役小角もフランも知らぬところで、恐ろしい事件が起こっていた。


 ある猟師がある村に立ち寄った際――

 その村に、人が1人もいないことに気がついた。


 代わりに村や家には野生動物が涙を流しながら居座っている。


 そして――

 山の中では4足歩行で歩く人間や、動物用の罠にかかる人間が見つかった。



 ――怪異は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

  

 


  

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


序章「望遠の記憶編」いかがでしたでしょうか?


次話から、この第二部の本題です。

これからも見届けていただければ幸いです。

お決めしましたら、ブクマやコメントで応援いただけると励みになります。


よろしくお願いいたします。


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