第8話 『作戦開始』
ゲーム終了まで、残り40分。
現在の時刻は『11:20』。
この残り時間は、短いように思えるが、洸たちからしたら凄まじく長く感じてしまっていた。
洸「おい!!龍斗、お前!!正気か?!」
龍斗は勝率を保つために、今の生存確率を保つために、囮になり4階にいる洸たちを、作戦実行場所の3階へと連れ出そうとしていた。
囮。彼は、人間離れした黒いローブの鬼と、対峙しようと考えていた。
もっとも見つかれば即座に死が待っている。
龍斗「冷静さ。冷静だからこその判断だよ、洸くん♪」
洸「バカだ!何を考えているんだ!!」
龍斗「おっと、携帯の充電を節約しないとね♪」
――――――プツッ。
そう言った瞬間、通話は切れてしまっていった。
洸「おい?龍斗!龍斗!!」
快兎「なんだよ、打開策はあったのか…?」
茜「どうするの…?」
白「………。」
みんなには、電話の会話は聞こえていない。
洸にしかわからないこの賭け事。
洸「大丈夫。これから3階に向かう………。」
快兎「けど鬼が…!」
白「従いましょ。」
茜「白ちゃん?!」
白「策があるのよね。なら、信用するわ。」
洸「白…。」
白「(龍斗の仕業ね…。あの焦り用…。いや、今は信じるしかないわね。)」
白は気づいていた。
全てに気づいたわけじゃないが、大方のことは想像していた。
海原洸。単純で正直者。嘘もすぐバレ、隠し事も下手。
そんな性格から導き出る予想だった。
洸「ありがとな。」
白「そんなお礼は後。で、どうすればいいの…。」
快兎「そうだぜ!俺たちだけでなんとかできるのか!?」
無理だ。
もちろん今、4人とも無理矢理3階に向かうのは、かえって鬼に餌を与えているようなもの。
だが、もう一人、別の階のもう一人が入れば変わってくる。
洸「(龍斗…。もちろん、みんなでこのゲームクリアだろ?だから、囮っても無傷で本来の作戦の遂行するだろ。つーか、させてやる。)」
――――――カラン、コロン。
階段に、金属の何かが投げ込まれた。
茜「何の音?!」
教室の前にいた鬼は、その音のなった方へと近づいた。
快兎「…?なんだ?鬼が階段の方に行ったぞ?」
鬼が、階段前に立った瞬間だった。
――――――――プシューーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
激しく煙が、階段の方から吹き始めた。
煙幕だった。
龍斗の作った煙玉の煙だった。
快兎「なんだ?!煙が!!」
洸「今だ!!逆側の階段に走って3階に向かうぞ!!」
―――ダッ!!
4人は、勢いよく教室から出て、鬼のいない方向の階段へと向かった。
龍斗「(よし、まだだ。まだ煙を巻き続けるんだ。4階は窓が割れてる教室のせいで、煙が外に喚起されちゃうから…。)」
龍斗は、3階と4階を繋ぐ踊り場で、煙を巻き続けた。
鬼は視界を遮られ、洸の姿も龍斗の姿も捉えきれていなかった。
そして、本来の作戦通りに、事が進むように3階へと少しづつおびき寄せている。
龍斗「鬼さん、こちら♪煙の方へ♪」
声を出しながら、だが姿を捉えさせないように、煙で身を包みながら。
鬼は少しずつ階段を降り、3階へと足を運ぶ。
龍斗「(よし、そろそろ洸くんたちもいる頃だろうね…。)」
龍斗は3階に降りた。
そして、煙玉を投げていた手をとめ、自分の場所につく。
龍斗「(ギリギリだった。美南さんたちが、少しでも遅れていたら、煙玉が足りなかった…。感謝しないとだよね…♪)」
そして、少し遅れて鬼も3階へと足を付けた。
今この時、3階には12人の生徒がいる。
一番階段に近い教室に、蒼、焦吉、實、龍斗。
そして、丁度真ん中の教室に、洸、快兎、白、茜。
この8人が、最初に煙を巻き、鬼の目が機能できないようにする。
最後に、一番奥の階段付近に、美南、歩、未希、麻衣。
この4人は、頃合いを見計らい、合図とともに油を鬼の方へと投げ込み、足が機能できないようにする。
・・・・・・。
そして、龍斗の撒いた煙が無くなると、同時に鬼が顔を上げようとした。
その瞬間からこの作戦が始まった。
實「いけえええええええええ!!!!!!!!!!!!」
實の掛け声と同時に教室から、複数の煙玉が投げ込まれた。
――――――――プシューーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
様々な方向から、煙が巻き上げられた。
その煙はすぐに、投げた本人たちも認識できなくなるような量で白く辺りを包み始めた。
鬼も認識ができなくなっていた。
龍斗たちもお互いを認識するのは声のみとなった。
ただ、2人を除いて。
蒼「焦吉、いくぞ!」
焦吉「おう!!」
この2人は今回の作戦に置いて、一番の適任者だった。
目のいい2人は、鬼の位置を僅かな煙の動きと、特徴的な大きな影で鬼を探知できた。
その2人はとにかく鬼から近い位置に、的確に煙玉を投げていた。
蒼「よし、投げ続けるぞ!」
焦吉「おうよ!この煙玉が無くなるまで付き合ってやるさ!」
煙の投げる位置はもちろん、止まっていたらバレる。
だが、2人は鬼の正確な位置がわかる為、動きながら的確に鬼のほうへと投げていた。
洸たちは、目が特別いいわけじゃないから、煙の外から効力の弱まっているとこへと投げていた。
蒼「よし、そろそろいいか。」
焦吉「だな!いくぞ!」
そう言い、2人は一旦鬼から距離をとった。
最後の仕上げのために。
未希「いくよっ!!」
美南「せーーの!!」
――――――――バシャン!!!!!!!
その掛け声とともに、油の入ったバケツを煙の中へと放り込んだ。
歩「うまくいったの?」
麻衣「おそらく…。」
中がどういう状況なのか、わからなかった。
目のいい2人は、煙玉を投げ続けた。
そして、もう一人も。
快兎「よし!うまくいったみたいだ!!」
快兎は、耳がいい。
ここにいる、だれよりも良かった。
そのため、油で足が機能していないことにも音で判断できていた。
もちろん、ほかの人の足音と、鬼の足音の区別もつけてれていた。
鬼の足元や廊下に、投げ込まれた油が散乱して、鬼の足を機能できないようになっていた。
龍斗「よし!投げ続けて!!」
その声とともに、更に煙玉が追加で投げ込まれる。
煙の外から効力が切れそうな部分にどんどんと投げる。
残り時間あと僅か。
この作戦のおかげで、全員が助かる。
こんなにも、うまくいっていた。
何一つ穴がなく、完璧な作戦だった。
少人数じゃ、こなせなかった。
全員の協力ありきで得た、ゲームクリアだった。
気がつけば、残り時間はあと『10分』を切っていた。
實「よし、煙玉も余分にある!いけんぞ!!」
蒼「あぁ!あと少しの辛抱だ!」
龍斗「うん♪うまくいってよかったよ♪」
焦吉「もう、怯えて隠れなくていいんだ!畜生!!終わるんだ!!」
喜びの声が、少しずつ聞こえてきた。
もう終わると、もうすぐ終わると。
ゲームクリアの『正午』まで、もう目と鼻の先だった。
第8話 『作戦開始』(完)




