第6話 『救いの手』
隠密に行動しなくてはいけない。
姿を見られるだけでアウト。
鬼ごっこじゃない、かくれんぼなのだから、見つかればおしまいだ。
蒼「(なんだ…あの鬼、玄関の前から動かないぞ…?)」
黒いローブの鬼は、玄関の前から動かない。
なぜ動かないのか、理解なんてできない。
蒼「おい、焦吉。あいつに何か小さな動きあったか?」
焦吉「いや、ないね。一切動いてない。」
蒼「そうか…。何を見ているんだ…。ずっと…どこか…を…!」
蒼は、何かに気づいたかのように慌てて、それを焦吉にそれを伝えた。
焦吉「どうした?」
蒼「絶対にその木から顔を出すな…!奴は監視をしているやつと、隠れてるやつを同時に探してるんだ!だから動かない。観察しているんだ…。」
焦吉「な…!わかった!」
黒いローブの鬼は、その場から動かずにずっと観察していた。
少しでも動くものを見つけたら動けるように。
蒼「(にしても嫌な野郎だな…。玄関の前に立って逃がさないってか…。グラウンドに向かう者すら許さないって感じだ…。)」
焦吉「どうする…?蒼…。」
だが、これは隠れる側からしたら、絶好の機会でもあった。
蒼「いや、なにもしない。」
そう、顔をにやつかせて言った。
焦吉「いいのかよ…?お前動けないぜ…?」
確かに動けない。だが、蒼は動けないじゃなく、動かないという選択肢を見つけそれを選んだ。
蒼「いいんだ。とにかく、そっちも気を付け……!」
蒼が焦吉に、何かを言おうとしたその時に変化が起きた。
蒼「おい!!奴はどこに行った?!」
焦吉「わからない…。今何が起きたのか全く分からない…。」
蒼「おい!奴は今…!」
蒼の勢いが途切れるほどの、光景が目に映った。
鬼はすでに移動をしていた。
チャンス。それが無にされるほどのものだった。
焦吉「蒼!死角に!はやく!」
その焦吉の言葉で我に返り、鬼から見えない位置に隠れた。
鬼はもう、グラウンドの木陰に隠れていた人の前にいる。
蒼「まずいっ!!!」
動こうとした、助けようという気持ちはあった。
だが、動けなかった。恐怖で全く立つことすら、立ち向かうことができなかった。
また目の前で、クラスメイトが死ぬ。だが、自分が行ったところで状況が変わらないのは目に見えている。それが、本能的に危険と判断し行こうとさせなかった。
見ていることしかできない。また、繰り返してしまう。自分にできることは何だ、そう考えるしかなかった。もちろん焦吉も全く同じ気持ちだった。
木から降りられずに、黙ってみてることしかできなかった。
焦吉「く、くそ…。」
こっちには気づいていないのに、目の前に鬼がいるような恐怖が移動を妨げる。
震えていた。2人共、目の前の光景に震えている。
圧倒的な恐怖、それに立ち向かえない自分たちが情けないと、そう思っている。
蒼「(何者なんだよ…とんでもない速さだった…。目で捉えきれなかった…。)」
焦吉「(人間離れもいいとこだろ…。なんなんだよアイツ…。)」
遠くには感じないが遠くで声がした。
男子生徒「頼む!!!頼む助けてくれよ!!!なんでもするからよ!!!頼むよ!!!」
男の命乞い。当たり前だった。かっこ悪いとか、プライドとか関係ない。
自分の命の終わりが近づいているんだ。無理もない声だった。
その命乞いのすぐ後に、鬼はなぜか動かなくなった。
蒼「(なんだ…?)」
男子生徒「頼むよ!!わかった!!このグラウンドにいる生徒の場所は大方把握してるんだ!!そいつらの居場所教えるからよ!!助けてくれよ!!!!!」
焦吉「(なっ…!?)」
蒼「(なっ…あの野郎…!!)」
鬼を前にした1人男子生徒は、クラスメイトの命と引き換えに助かろうとした。
最低な考えだった。
男子生徒「な?いいだろ…?悪くない話だろ?」
その男は交渉を始めようとする。
自分のためにクラスメイトを売る。
助かりたいがために、仲間を殺そうとしている。
その時だった。
女子生徒「待って!!私も教えるわ!!だから、助けて頂戴!!」
その男の近くの木陰から、1人の女子も交渉に参戦しようとやってきた。
焦吉「(クズが増えやがった…!)」
蒼「(まずいぞ……。)」
なにかに気づいた蒼は焦吉と小声で話し始めた。
焦吉「どうした…?」
蒼「あのバカ2人のせいで、グラウンドの奴らが全員死にかねないぞ…。」
焦吉「わかってる、情報と引き換えに助かろうという魂胆だろ?」
蒼「ちがう…。」
焦吉「なに…?」
蒼「あのバカ2人が助かりたいがために出てきたせいで、ほかのバカも増える可能性がある…!」
焦吉「どういうことだ?!」
焦吉には現状の把握ができていない。
蒼「ほかの奴らが助かりたいがために出てくる可能性があるんだ…!だから、グループで止めてくれ!じゃないと、出てきた奴らは確実に死ぬ。」
焦吉「あぁ!そういうことか!!」
状況を理解した焦吉はすぐにメッセージを送った。
・・・・・・。
メッセージを送ってからは、2人意外は出てこなくなった。
そして、2人は・・・・・・。
男子生徒「まず…!」
男子生徒が言おうとしたその瞬間だった。
その男に、細いワイヤーが巻き付いた。
そして、次の瞬間。
男子生徒「やめろおおおおおおおっっっっ――――――――!!!!!!!!!」
叫び声がする瞬間に、その男の身体は二つに分かれた。
それと同時に女子生徒のほうの首にもワイヤーが巻き付いた。
女子生徒「やめて!!!助けてよ…!!!!!」
そんな言葉も虚しく、首が切断された。
一瞬の出来事だった。普通の人間では成しえない芸当。
黒いローブの鬼はワイヤーを巻き付け、引くだけだった。
最初の女子生徒にも、きっと同じことをしたんだろう。
蒼「(な…容赦ねぇし、何だアイツ…。)」
焦吉「どうする…蒼!」
見つかれば、あの速度で追いつかれる。
そして、あのワイヤーで殺される。
蒼「だめだ…。なにもできねぇ。あそこからだと玄関に入るのが見えちまう…。」
そう考えるうちに鬼は、また立ち止まり探し始める。
焦吉「探してるな…。下手に動けないぞ…。」
蒼「わかってる…!」
焦り始める蒼。どうすればこの状況を抜け出せるか、それを考えるが思いつかない。
寧ろ、あのバカ2人が話して、気を引いてるうちに行けたかもしれない。
そう考えていた。
蒼「(くそっ!最悪の場合…見つかりかねないぞ…。)」
蒼が頭を抱えていた時だった。
――――――プシューーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!
蒼と玄関が、勢いよく出た煙に包まれ始めた。
蒼「な、なんだ?!」
焦吉「おい!蒼!煙のせいで、玄関とお前が見えないぞ!!」
何が起きたのか分からない。
蒼には状況が呑み込めていなかった。
だが、理由もその正体もすぐにわかった。
龍斗「さ、早く玄関から校舎内に入ってね♪」
男子生徒A「早くしろよー。これあんま効果時間長くないらしいから。」
2人の声が玄関から聞こえてきた。
蒼はとにかく、その2人の言われるとおりに校舎内に入った。
焦吉「お、おい!蒼?!大丈夫か!?」
焦吉も状況が呑み込めないため焦る。
だが、その焦りもすぐになくなった。
女子生徒A「しっ。静かにしないと見つかるわよ。」
女子生徒B「龍斗くん、いい?」
携帯を持っている方は、指示を待っている。
龍斗「いいよ~♪」
女子生徒B「了解。」
その掛け声と同時に、真下へ向かって何かの塊を投げた。
――――――プシューーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!
さっきの玄関のとき同様に激しく煙が舞う。
焦吉「ってか、あんたら…。」
女子生徒B「話はあとよ、校舎内に向かうわよ。」
ポニーテールの子はすぐに木から飛び降りた。
女子生徒A「急いでね。この煙長く持たないからさ。」
そして、もう1人の三つ編みの子も飛び降りた。
状況が呑み込めないが、4人のおかげで2人はグラウンドから逃れることができた。
・・・・・・。
龍斗「は~い、お疲れ様です♪」
蒼「なんで、龍斗が…?それに…。未希たちも…。その煙も…なんだ?」
状況が呑み込めない蒼は、いろんなことを聞いた。
龍斗「話は上の階でしよっか♪」
――――――――校舎内 2階教室 <龍斗・焦吉・蒼SIDE>――――――――
蒼「で、なんだ?この状況。」
龍斗「偶然だったんだよ♪1階を見てたらなにやら蒼くんが、なにか話してるから聞いてたらやばそうだねってなって、助けたのさ♪」
焦吉「どうやって、俺の場所に来たんだ?」
龍斗「それは単純だよ♪裏口から、死角を利用して行かせた♪この子らにね♪」
龍斗の横にいる女子2人はクラスメイト。
安藤未希。ポニーテールの女の子。スポーツ万能でテニスをしていた。
もう1人は、神崎麻衣。三つ編みの文化系女子。眼鏡を常に着用している。
蒼「んじゃ、さっきの煙玉はなんなんだ?」
龍斗「それは僕の作ったオリジナルの武器さ♪相手の視覚を遮るのに欠かせないだろ?♪」
男子生徒A「その煙玉今回が初めてだったんだが、うまくいったな龍斗。」
龍斗「効力が短いから危険も伴うけどね♪」
この男も同じクラスの犬養實。特に部活はしてないが運動神経は良い。
龍斗「さて、これからどうするかだけど、この数で動くのは危険だよね♪」
現在、ここにいるだけで6人いる。
この人数で動くと、かえって危険を招くようなものだ。
實「一回よ、生きてるやつら全員集めるのはどうだ?」
龍斗「いいね♪名案♪」
未希「じゃあ、グループで呼び掛けて一番遠い4階に集めれば?」
その流れで、話が進もうとしたその時。
蒼「だめだ。」
蒼が4階は駄目だと言った。
突然言い出すからみんなは、なぜだめなのかそう聞いた。
麻衣「どうして…?」
蒼「あいつは人間離れしていた。見つかれば、目に追えない速度で捕まる。鬼ごっこじゃないってのを体験させられる。」
未希「んで?それと4階がダメな理由に何の意味があるの?」
未希は、強い口調でそう聞き返す。
蒼「窓が割れてるんだ。そこから、入ってくるかもしれないだろ?」
實「まさか…4階窓まで飛んでくると?」
鬼の超人的な能力を、見たことのないものには全く伝わらない。
焦吉「あぁ、俺だってその速さは見た。だから跳躍力も人の何倍あるかわからない。危険だよ。」
焦吉がそういった。
とにかく、4階は危険だと2人は主張した。
龍斗「わかった♪3階、それならいい?♪」
實「お、おい。龍斗。あいつらの言葉信じるのか?」
龍斗「ま、噓はこの状況でつかないよ、そこまで馬鹿じゃない♪」
蒼「ありがとな。」
蒼は素直に龍斗たちに対して、さっきのことも含め礼を言った。
龍斗「それじゃ、グループに送るよ♪蒼くんたちは向こう側の階段から、僕たちはこっちから。相手は何してくるかわからないから、気をつけてね♪それじゃ、解散♪」
そう言い、龍斗たちと蒼たちはそれぞれで、3階へと向かった。
第6話 『救いの手』(完)




