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ログアウト  作者: 狐野柄
第一章:FIRST GAME
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第5話 『その者の姿』

――――――カアーカアーカアー。


黒い翼を羽ばたかせ、飛んでいるものがいる。

校庭には、部活動を行っているものがいる。

校内には、居残っているものがいる。

そして、辺りには美しく、寂しく、花が咲き誇っている。

いつもと何一つ変わらない光景。なにもおかしくない日常。

ごく普通の平凡な日常。

もうすぐ最後の夏休みが来る。

学生人生最後の夏休みが迫ってきている。

その夏休みも、きっといつもと変わらないだろうと、思っている。

適当に遊んで、海へ行って、旅行にも出かけて、墓参りをして、

そんな、一般的な生活を送るだろう

何一つ、事件事故に巻き込まれないような生活を送るだろう。

そう、思っていた。

ある日、夏休み1か月前に起きた事件に巻き込まれなければ、そんな生活を送っていた。

その事件のせいで、いつもと違う日常が流れ込んできた。

突然よくわからない人形が現れ、先生が死んだ。

そんな、非日常が始まった。


蒼「…。」


蒼は、ただ落ちてきた男女の亡骸を見つめていた。

何も考えず、ただ2人の人間を見つめていた。


――――――ブーブーブー。


通知のバイブレーションがポケットの中で鳴り響く。

蒼はその携帯を取り出し確認した。


『――――――杉山浩太がログアウトしました。――――――』


『――――――秋原千代がログアウトしました。――――――』


見覚えのある名前、来たことのある名前。

自分のクラスメイトの名前。

知り合いが死んだ。目の前で死んだ。

蒼はそう思いながら、携帯をポケットの中へと戻した。


蒼「ごめん。何もしてあげられなくて。守ってやれなくて。」


責任を感じるかのように2人の男女に声に出して謝った。

見ていたのに救えなかった。おかしいことに気づいたのになにもできなかった。

そう思いながら、2人の前で謝罪を始めていた。

なにもできなかった自分に負い目を感じて、ただひたすらに謝った。


蒼「本当にすまなかった。グループで呼びかけてよ、近くの奴に助けを求めるべきだった。だけどな、そんなことが頭に浮かんでくる暇なんてなかった。ただ、どんな奴なのかを、分析みたいなことしていた。ごめんな。」


そう謝った。何度も、何度も謝った。

だれも悪くはない、もし呼びかけて誰かが行こうものなら、更に犠牲者が出ていたかもしれない。

そんなこと考えなくてもわかっていた、ただ助けてあげたかったと、蒼は思っていた。


蒼「…。」


サッとその場から移動し、外にある近くの物置小屋に向かった。


・・・・・・。


すぐに蒼は、その物置小屋から出てきた。

片手にスコップを持って、先程の2人の亡骸のある場所へと向かった。


――――――ザッザッザッザッ。


近くの土を掘っていく。少しずつ掘っていく。


・・・・・・。


かなり大きな穴を掘り終えた蒼は、2人の亡骸を1人ずつ運び穴へと入れた。

同じ穴の中に入れた。


蒼「俺にはこれしかできない、特別な力が備わっているわけじゃないから生き返らせることも、仇をとることもできない。だからせめて、2人仲良く供養してください。向こうでも仲良くしてください。」


そう言い、蒼は2人の入った穴を埋め始めた。


――――――ザッザッザッザ…。


静かに埋めていった。


・・・・・・。


何もしてあげられない、なにも出来なかった。

この人たちをここに埋めることしかできない。

蒼はそう考えていた。


蒼「…。」


埋めた後の場所を静かに見つめた。

そして、口を開いた。


蒼「あなたたちの、生き残りたいという死の直前に思い描いたであろう願い、意思を無駄にはしません。俺たちで必ず生き残って、その意志と願いをやり遂げ、受け継ぎます。」


そう、小さな墓の前で決心をし誓った。

自分のクラスメイトに思いを伝えた。


蒼「この学校はきっともう俺たちの過ごせる場所じゃなくなる。だからせめて、今だけはここに眠っていつもの日常に戻るみたく過ごしてくれ。必ず全部終わったら迎えに来る。それじゃあ、また後でな。」


蒼は自分の思いを、伝えたいことの全部を伝えてその場を去ろうとした。


――――――ブーブーブー。


また、携帯が鳴り響いた。

メッセージの通知ではない、電話だ。


――――――ピッ。


蒼「なんだ?焦吉か、何か変化が……っ!」


焦吉「大変だ!!!」


蒼は玄関の方を見て唖然としていた。

ありえない光景が見えた。

と、同時に身の危険も全身で感じた。


蒼「まじ…かよ…。」


蒼の目に飛び込んできたのは、『鬼』だった。

姿は初めて見る、当たり前だった。

鬼の姿がわからない、危険の一つの要因だった。

だが、見ただけでわかった。

()()()は鬼だ。


焦吉「玄関だ!!外に出てきてるんだよ!!あり得るかよ?!」


蒼「わかってる…。焦吉…お前はそこで鬼の監視を頼む。俺に遠くから援護してくれ。」


焦吉「大丈夫なのかよ?!」


黒いローブの着た、仮面をつけた者。人の形をしているがきっと違う。

本能でそう感じ取っていた。

先程の2人の感じた恐怖が感じる。きっとこんな感じだったって伝わっていた。


蒼「大丈夫か大丈夫じゃないかと聞かれたら、大丈夫じゃない方だな。とにかく奴の視界に入らないように俺は行動する。そのために、焦吉が遠くから観察して場所を教える…。死角を利用して立ち回る。目的地は校舎内…。中は極力避けたかったがやむを得ない…。俺、そっち戻れそうにないから頼む。」


焦吉「超重要任務じゃねぇか…俺…。」


蒼「あぁ、頼むぜ?相棒!」


焦吉「了解…!」


黒いローブの鬼から逃げるため、2人は協力してこの危険な状況を回避するため動く。


蒼「(こんな所で死ぬわけにはいかねぇ。誓ったばっかりなんだよ。こんなとこで死んだり、見つかるものなら、あの2人に合わせる顔なんてない…。生き残んだよ…!絶対にしくじらねぇ!)」


蒼は心の内で、そう決心していた。


――――――――校舎内 2階 <美南・歩SIDE>――――――――


美南「たっく、なんなのよさっきから大きな音はするし、悲鳴だって聞こえたし…。」


歩「鬼ってのに…見つかったのかな…。」


強気で美南がそういうのに対して、歩は泣きそうな声でそう言う。


美南「もう!なに弱気になってるのよ!虫か、なんかがいたのよきっと!それで暴れて窓ガラスを!」


歩「それは、無理があるよぉ…。」


美南「たっく、とにかく行くわよ、隠れられる安全な場所を探すわよ!」


美南がそう言って教室から出ようとした時だった。


歩「ね、ねぇ…。あれって、なに…?」


歩が窓を指さしていた。

それに反応して、美南が歩の方へと顔を向けた。


美南「もお!さっきからな…!」


美南は慌てて歩の手を引っ張り外から見えない場所に隠れた。


歩「な、なに?!」


美南「しっ!」


美南たちの見たものは、黒いローブの人のような形をした何かだった。

美南は、何かを感じ取って隠れた。明らかにここの生徒じゃないことが分かった。

やばいくらいの殺気、それを窓越しからでも感じ取れるものだった。


歩「あれって……。」


美南「馬鹿ね…。鬼よ。きっと。見るだけで嫌な感じがする。」


そう感じ取った美南はタイミングを見計らって教室か出て、次向かう場所へと移動を始めた。


――――――――校舎内 2階階段付近 <洸・快兎・白・茜SIDE>――――――――


洸「なんだ…?」


持っていた携帯が鳴っていた。

通知のバイブレーションだ。


快兎「おいおい…。まずくないか?」


茜「これ…いつの通知だったの…?」


洸「嘘だろ…?」


白「気づかなかった、この通知が来るまで。」


たった今来た通知は、焦吉からのグループ全体に送られたメッセージ。


『グラウンドに鬼がいる!絶対にグラウンドには来るな!』


鬼の場所がわかるから共有しようと、そう呼び掛けていた。

だが、注目する点はそこじゃなかった。


『――――福宮春樹(ふくみやはるき)がログアウトしました。――――』


『――――篠崎光里(しのざきひかり)がログアウトしました。――――』


『――――松崎心寧(やまざきここね)がログアウトしました。――――』


3人の『死の通知』それに気づかなかった。

それには理由もある。洸たち3人は、鬼から見つからないように集中していたからだ。

危険だったからだ。


快兎「そんなに気を貼ってたのか…俺たち…。」


白「どうする…。あの鬼…意外にも行動が早すぎるわ。」


茜「4階。引き返して上に行きましょ。降りたら万が一のことになりかねないわ…。」


洸「そうだな。戻ろう。ただし、鬼が見えるようにたまに、教室の窓から監視しながらだ。グラウンドからまた、校舎内に来たら考え直さないといけないからな。」


そう計画を練り、4人は上の階へと向かった。


――――――――グラウンド <焦吉・蒼SIDE>――――――――


その頃、蒼たち2人行動に移ろうとしていた。


焦吉「よし、予定通りグループに送ったぞ。」


蒼「あぁ。後は、どうやって玄関にむかって校舎内に入るかだ…。」


蒼たちは、鬼を監視しつつ策を練り、移動しようと試みた。

殺気が凄まじいあの鬼を掻い潜り校舎内に忍び込む方法。

絶対に見つかってはいけない状況。


蒼「(絶対に隠れ切ってやる…。意地でも生き残るためにな…!)」


蒼のその誓いとともに、玄関に向かう行動を始めた。



第5話 『その者の姿』(完)

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