第3話 『ただいま、笑顔』
快兎「うーん。やっぱり思いつかないな。」
快兎は洸と共に、今回のゲームで『両方を救う方法』を考えていた。
体育館での件からおよそ1時間が経過した頃だった。
2人はずっとこもりっぱなしで考えていた。
洸「そうだな…。何かないのか…っ!」
洸の手が震える。
極寒の地にいるように震えは止まらなかった。
快兎「…。」
そこに、そっと、
その震える手に快兎の手が差し掛かった。
洸「…っ!」
快兎「落ち着け。まだ時間はあるんだ。」
その一言で洸は我に返った。
洸「あぁ。悪い。ありがとな。」
快兎「礼はいいさ。このままじゃらちが明かない。」
そう言い、快兎は立ち上がりドアの方へ向かった。
洸「…?」
快兎「体育館。いこーぜ。あの女がいた場所、何かあるかもしれないだろ?」
洸「…!」
クイーンのいた場所。
それは、体育館のステージ。
まだ誰も見てないであろう場所。
わずかな希望に、二人は縋った。
修太「さて、だ。先に聞いておくぞ…。」
一方。
修太の部屋でも何かの話が行われていた。
豪太「なんだ?修太、改まって。」
筋肉質の男がそう問いかけた。
それに呼応するように、小太りの男も、眼鏡の男も顔を出した。
息をのむようにして聞いた。
修太「こんなかに…。奴隷、または殺される人間はいるか…?」
静かに、そして怪しくそう聞いた。
唐突のことに残りの3人は驚いていた。
政義「お、おい。まさか疑ってんのか…?!」
その一言に一同は修太から離れようとした。
が、その間もなく修太は話し始めた。
修太「違う。もし、いるなら手助けしてやるって話だ。」
豪太「…!」
政義「正気かよ…。」
和也「まじかよ……。」
さすがの3人も、その言葉には驚きを隠せなかった。
普通ならあり得ないような発言。
だが、真剣な顔つきだった。
修太「言いづらいなら…。目をつぶれ。3人だ。俺はもちろんどちらでもねぇ。」
豪太「わ、わかった。」
政義「おい!!」
食い気味に政義は止めに入ろうとした。
だが、みんな賛同している。
豪太も和也も。
和也「わかった。やるよ。」
政義「お前ら正気じゃないぞ…。」
修太「おい。」
政義に向かって声を掛けた。
それに反応して驚く。
政義「…!」
修太「反対なら無理は言わない。だが、ここを出てけ。」
その言葉の威圧。
まるで、ちっぽけな小動物が、権力のある大きな動物に指導されるかの、
脅され怯えるような、そのさまが滲み出る。
政義「わかった。おれもやるよ。」
修太「よし。」
渋々政義は賛同し目を瞑った。
修太「自分が狩る側なら右手を、狩られる側なら左手を挙げろ。」
そう言った。
そして、彼の瞳にはその答えが映り込んだ。
ニヤリと、そんな表情を浮かべて言った。
修太「よし。もういいぞ。」
一同は目を開いた。
たった数秒の時間だけしか目を閉じていなかったのに、
まるで外が久しぶりのような感覚に見舞われた。
豪太「いなかったのか?」
政義「大丈夫なんだろ!」
そうみんな詰め寄ると、
修太は口を開いた。
修太「あぁ。大丈夫さ。」
その笑みを浮かべこういった。
修太「手助けしてやるよ…。フフ…。」
豪太「な!?」
政義「は!?」
和也「なに?!」
確かに修太は、そう言った。
薄暗い部屋でその者たちは困惑し、硬直した。
何も考えれなくなるほどに。
―――――ガチャ
美南「はいるぞー。」
歩「失礼します…。」
電気のついていない薄暗い部屋に2人の少女は、ゆっくりと足を運んだ。
その部屋にはうずくまる少女の姿があった。
美南「ったく。ほんと嫌になるよな。こんなの。」
歩「電気つけるね。」
そう言い、歩は電気を付けた。
麻衣「ひっ!」
その部屋には麻衣がいた。
怯え切る少女がいる。
少し前まで生きていた人間が目の前で死んだ。
そして、クイーンにその人間、未希のことをいわれ、心までもが死にかけていた。
美南「落ち込むのも怖いのもわかる。」
麻衣「う…。」
震えて、なにも言葉に出来ていなかった。
落ち着かせようと美南は手を差し出そうとした。
少しでも気を紛らわせるようにと。
だが、
麻衣「いや!!」
美南「…おっと。」
目に瘴気がない。
心も壊れかけている少女に何と声をかけるべきなのか、
美南にはとてもわからなかった。
歩「ちょ!麻衣さん!」
美南「いや、大丈夫だ。」
美南は手を出して歩を止めた。
美南たちから、麻衣は距離を置いていた。
怯えながら、震えながら。
麻衣「やめて…。私に優しくしないで…。」
美南「…。」
麻衣「もう、私のせいで友達を失いたくないの!!だから、私はここでひとりでし…っ」
麻衣が口走ろうとした言葉を遮るように、美南は優しく抱いた。
何も言わせないように、彼女の死の意味を壊させないように。
美南「だめ。今言おうとした言葉は言わせないよ。」
麻衣「離して!やめてよ…!」
麻衣は抵抗した。
美南から遠ざかろうと必死になって動いた。
美南「麻衣。あなたは…、あなたは何を託されたの?」
麻衣「…!」
美南「あなたは、彼女…安藤未希さんから何を託されたの?」
麻衣「…。」
美南「死ぬなんて言わせない。あなたは、託されたものを繋いでいかなきゃだめだよ。」
麻衣「…。」
美南「一緒に生きて帰ろう。」
麻衣「うぅ…。」
その美南の言葉。
忘れていたものを引き出してくれた言葉に、彼女は涙を見せた。
声にならない返事を彼女はした。
その少女の瞳の瘴気は、また輝きを取り戻していた。
生きる希望を、またその心に戻していた。
壊れかけていた心、死にかけていた身体はもう、元に戻っていた。
笑顔が帰って来た。
―――――ガチャ
焦吉「どうだった。」
一方、焦吉の部屋では一人の動いていた少年が戻ってきていた。
焦吉「蒼。」
蒼「あぁ。ビンゴ。」
焦吉「そうか。」
蒼「ほかにもちゃんと聞き逃さないで聞いていた人がいたよ。」
焦吉「そうか。読み通りってとこだな。」
蒼「野放しにできないさ。」
焦吉「当然だ。」
蒼「『内通者』はな。」
第3話 『ただいま、笑顔』 (完)




