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二十八話 入学編その二(学園案内は下ネタとともに、です)

 明くる日、俺はルビーとリリーの二人と一緒に通学していた。もう、この二人が高等部に通うのは分かっているので、別々に登校する意味もない。何より、この二人が通学中に問題を起こさないよう見張らなければならないのだから、なおのこと。


 そして、今、俺は教室の扉の前にいる。昨日の一件を考えると、どうも入るのが怖い。女子も男子も敵に回した状態で、この教室に入ったらどうなるか。無視だけならまだしも、吊し上げられるような真似をされた日には……。考えただけで恐ろしい。思わず二の足を踏んでしまう程度には。


「どうした、クロ。入らないのか? 」


 そんな事を考えていると、ルビーが立ち止まった俺を訝しげに見詰めてきた。それからルビーは教室の扉と俺を交互に見詰め、リリーを見やる。だが、リリーも困った顔をするだけでルビーに首を振った。


 こうして立ち止まったままでは、ルビーやリリーだけではなく、他の生徒からも訝しげに見られてしまいそうだ。そう判断した俺は、躊躇しながらも扉に指を掛ける。


 唾を飲み込み、出来るだけ自然な動作でスライド式の扉を開ける。だと言うのに、自分が思っている以上に力が加わってしまったようだ。扉は勢いが付いて、大きな音が教室と廊下に響く。


 しまった、と思ったときには遅い。教室と廊下、その場に居た生徒の視線が集まるのが分かった。こうなれば、もう勢いに乗るしかない。俺はもう自棄になって堂々と教室に踏み込む。


 そのまま、手頃な席を確保しようと教室を見渡す。そこで、気付いた。


 あれ? そこまで敵視されてない?


 そう、確かに大きな音で注目されてしまったものの、生徒の視線は驚きのそれ。侮蔑や軽蔑と言った悪意のようなものは、見受けられなかった。


「よーす、クロ。盛大な登場の仕方だな。何、どした?」


 教室の様子に困惑していた所に現れたのは、ヤマだった。珍しく一人で教室に居たようだ。


 と、そんな事よりもヤマならば事情を知っているかもしれない。ルビーとリリーに席の確保を頼んで、この状況について俺はそれとなく尋ねてみた。すると、ヤマはすんなりとその答えを俺に与えてくれた。


「あー、昨日の奴ね。ありゃ、みんな悪乗りしただけじゃん? てか、明らかに雨月先生の八つ当たりってか僻みだったし、一日経てばこんなもんだろ。当の本人はまだ妬んでっかもだけど」


 そんなものか、と俺はカラカラと笑うヤマを見た。それならそれで構わないのだが、やはり内心は複雑だ。ただ、しばらくは雨月先生とあまり関わらない方が無難そうだ。


 ひとまずの納得を得た俺は、肩の力を抜く。次いで、ヤマに問い掛けた。


「ところでヤマは何で一人なんだ? いつものメンバーは?」


「いっつも一緒ってわけじゃないんだけどな。まぁ、今日はハルに付きっ切りなんだよ、あいつら。昨日の今日だしな」


「なるほど、それで。ヤマはいいのか、一緒じゃなくて」


「俺はそこまで過保護じゃねぇの。てか、男が男を付きっ切りで見守るとか、俺の中じゃ無い考えだわ。気持ち悪い」


 事情は分かった。それは確かに、ヤマには無理だろう。ヤマ自身も、手をパタパタと振って否定している。


 その後、ヤマは答えるだけ答えて、席に戻っていってしまった。何でも、今のうちにエネルギーを充電したいのだとか。大方、居眠りをしたいだけだろう。欠伸をしていた。


 俺は俺で、ヤマが席に戻ったのもあり、早々にルビーとリリーの下へと向かった。それからホームルームが始まるまで、二人のセクハラ行為を防ぐ。毎度の事ながら、よく飽きないものだ。ある意味、感心する。感心はしても、認めはしないが。


 さて、そんなこんなをしている間に、ホームルームの時間が迫ってきた。それに合わせて教室の生徒の数も増し、同じくして雨月先生が入ってきた。流石に、昨日のような有り様ではないようだ。


 そのまま、教壇に立った雨月先生から着席の号令が掛かる。ホームルームの始まりだ。


「えー、ではホームルームを始めるわ。出席取っていくから、返事してね」


 少しして、全員の出席が確認された。俺の名前を呼んだ時に視線を向けられたが、気まずげなものだった。どうやら、一日経って多少は冷静になってもらえたようだ。これなら、変に絡まれることもないだろう。良かった。


「それじゃあ、今日の予定を伝えるわね。今日は学園案内をしたあとに、ここに戻ってきてまたホームルーム。ホームルームは委員会決めやこのクラスの委員決め、その他諸々を決めていくことになるわ。それから、組んだカリキュラムの提出も今週までにお願いね? 忘れたら私が勝手にカリキュラム組んじゃうので、よろしく。分かったら、五分後に学園案内よ。準備しておくように」


 そう言って、雨月先生は教壇で自分も学園案内の支度に取り掛かっていった。


 五分後。雨月先生を先頭に俺達は廊下に出る。学園案内とは言ったが、案内されるのは高等部の校舎だけだ。まぁ、だけとは言っても高等部の校舎は非常に広いのだが。


 そこで、案内はダイジェストで送ろうと思う。ルビーとリリーの下ネタの頻度が多すぎて、捌き切れないためでもある。一気に紹介して、一度のツッコミで終わらせたいのだ。と言うわけで、学園案内ダイジェスト版の始まりだ。


 実験室。


「ほほぅ、器具が揃っているな。ここは調教部屋と言うわけだな?」


 音楽室。


「うむ、絡み合う二人の協奏曲が聞こえてくるようだ」


 空き教室。


「これが噂の……。感動的だな、思わず興奮してしまいそうだ」


 美術室。


「ここで放課後、衣服を脱ぎ捨てた私の裸体が描かれるんですね。考えただけで濡れそうです」


 図書室。


「この静かな空間に響き渡る嬌声。あの隅で密やかに……。濡れました」


 放送室。


「このスイッチ一つで、学園にあの声が筒抜けになるんですね。いいです、堪りません。パンツ、履き替えてきます」


 更衣室。


「私の裸体を公衆の面前で晒す場所なのですね? 最高です。ここで履き替えれば良かったですね」


 保健室。


「なるほど、定番の一つだな。ベッドまで用意されていて、至れり尽くせりだ」


 生徒指導室。


「ふむ、ここで指導と言う名の性奴隷を作り上げるのか。素晴らしい」


 体育館倉庫。


「むっ、またも定番中の定番か。色々なシチュエーションに使えるな。閉じ込められる然り、強姦然り」


 トイレ。


「排泄プレイか。あまり得意な部類ではないな。やれ、と言われたらやるが」


「私は得意ですよ? 何でもお見せします」


 非常階段。


「ふーむ、見付かるリスクの高い場所だな。スリリングで最高に興奮するではないか」


「私、また濡れそうです」


 屋上。


「これも定番と言えるな。所謂、青○か」


「学園とは素晴らしい場所ですね。また濡れました」


 生徒会室。


「ぬっ、あの机の上で」


 理事長室。


「あら、あの机の下で」


 部室。


「汗だくになって」


 シャワー室。


「汗を流しながら」


 プール。


「水中プレイをするのか」


「変な高揚感が湧きますね。もう一度、パンツ履き替えてきます」


 順不同。以下省略。


 これでも氷山の一角に過ぎない。行く先々でこれと同様の内容を延々と真剣に語っていた。だが、これ以上は俺が語りたくはないので省かせて頂く。では、先の宣言通り、一回のツッコミで終わらせるとしよう。


 お前らマジで大概にしとけ!


 キレが無いのは承知だが、今回は察してほしい。俺では無理だったのだ。こんなもの、捌き切れるわけがない。他の生徒からも変なものを見るような目で見られて、どうしてツッコミなど出来ようか。どうしようもない事もあるのだ。


 学園案内から教室に戻ってきて、俺は机に突っ伏した。疲れ切ったのだ、何もかも。精も根も尽き果てた。せめて、次のホームルームまでは静かに休みたい。誰とは言わないが、どうせまた何か仕出かすのだから。


 それから、俺は自分の辞書に記す。学園案内、それは恐ろしい敵だった、と。


 まさに伏兵、裏ボスだ。気付かぬうちに、瀕死に追い込まれる。攻略は至難の技。不可能と言っていいかもしれない。それだけに言える。俺では適わない敵だった、と。



 ……これ、投稿して大丈夫だったのかなぁ。心配です。

 まぁ、それでももう投稿しちゃったんですけどね。なので色々諦めます。

 では、次回もまたよろしくお願いします。


 十月二十六日付け。



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