彼女との未来
クリスマスや正月も彼女と一緒に過ごした。クリスマスケーキは彼女の兄と父親と一緒に食べた。冷たいように見えて過保護な兄と、人の良さそうな父親に囲まれて幸せに育ってきたのだろう。三人のやり取りをみているとそう感じられて、家族といる茉莉の姿が微笑ましかった。彼らと過ごしていると、本当は違うのに家族と過ごしているような錯覚さえ覚えてしまっている。
茉莉はもうすぐ高校を卒業してしまうが、僕には受験がある。学費は父親が出してくれるためその心配をしなくていいのは不幸中の幸いだろう。その後の茉莉と過ごす時間を頭に幾度となく思い描き、この先の未来がただ明るいと思っていた。
母はあの茉莉と顔を合わせた日から、僕には何も言わなくなっていた。茉莉に臆したからなのか、お金のためなのかは分からない。
冬が去り、三月になると彼女の卒業式があった。その日、僕は学校が休みだったが、昼過ぎに彼女に呼び出されたのだ。
一年。彼女が最初に口にした言葉が僕の脳裏に過ぎる。その不安を振り払うために、チャイムを鳴らした。
すぐに玄関があき、制服姿の茉莉が出てくる。
「帰ったばかりだった?」
「そうでもないけど、見納めだから、たまにはこういうのもいいかなと思ったの」
彼女はそうあどけない笑みを浮かべる。
彼女は自分の家に僕を招き入れると、僕の手を握った。
「一年と約束したけど、久司君さえよかったら、今年のわたしの誕生日も一緒に過ごしてほしいの」
僕はその彼女の言葉に、彼女も僕と同じ気持ちでいてくれたのだと考え、ただうなずいていた。
彼女は高校を卒業してからは、父親の仕事の手伝いをしているみたいだった。
学校が違うと会う機会も少なくなったが、土日を中心に週一、二回は会うことができた。
僕には受験も控えているので、それは好都合だったのかもしれない。
受験さえ終われば、また彼女と一緒の時間を過ごせるのだと思い、寂しい気持ちを幾度となく紛らわせていた。




