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僕が死ぬと世界が滅びます。  作者: ふぃーりす
二章 それぞれの思惑
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屋敷へ


さすがに少々落ち込んでいたが、今ではすっかり気を取り直した。


ニナや村の子供達のおかげだろう。


村の子供3人組としばらく遊び、3人が帰るのを見届けるとまた本を読み出す。


しばらく読みふけっていると日が傾き始めたことに気がついた。


「そろそろ帰るか」


そう独り言を言って立ち上がった。


丘の上からは、夕日が村や屋敷を赤く染めているのが見える。


その風景もお気に入りのひとつだ。


しばらくその風景を眺めて、満足してから屋敷へと歩きだす。


屋敷に帰り着く頃にはすっかり暗くなっていた。


玄関から扉を開けて屋敷の中に入ると、目の前に仁王立ちのメイド長が立っていた。


「遅いですよ!坊っちゃん!もう皆さん夕食を食べ終わられましたよ!」


メイド長は僕の顔を見るなり大声で叱り始めた。


どうやら夕食は食べ終わった時間らしい。


ということは、タイミングは丁度良かったようだ。


「今日は夕ご飯抜きです!誰がなんと言おうと!」


夕ご飯抜き宣言をされてしまった。


こってり絞られた後、自室に戻った。


部屋に入ると大きな窓から月明かりが差し込んでいる。


今日は満月だったのでろうそくを灯さなくても明るい。


「ふぅ・・・」


父上の指示とはいえ、叱られたことはちょっと堪えた。


たしかにゴーティエ家のルールを破る行為なのでもうちょっと慎重になるべきだった。


せめて、メイド長には言っておくべきだったか・・・。


いや、帰ってこいと押し切られて、結局結末は同じだっただろう。


というか、父上も少しは根回ししておいてほしい。


窓の近くの椅子に座る。


そして先程から読んでいた本の続きを読み始めた。


部屋の中には本をめくる音だけが響く。


コンコンコンコン。


しばらく本を読んでいると扉をノックする音が聞こえる。


「どうぞ」


「起きてた?」


「ニナか。どうかした」


「メイド長に言われて、食事持ってきたわよ」


「おお!助かった!お腹減ってたんだ」


ニナはカートを押して部屋に入ってきた。


そして部屋の中にあるテーブルに並べる。


おいしそうな匂いに誘われて、本を閉じテーブルのところへ移動する。


「おいしそう」


「今日の夕食にあなたに出す分よ。もったいないから食べちゃってって」


「ありがとうニナ」


「礼はメイド長に言うことね」


「そうだね。言っとく」


椅子に座り、ナイフとフォークを持つ。


今日の料理はサラダとスープと肉料理だ。


香ばしい匂いがますます食欲を誘う。


「ねぇ。フェリクス。私も少し食べていい?」


「いいよいいよ。一緒に食べよう」


ニナは先程僕が座っていた椅子を持ってテーブルに付けた。


そしてサラダ用のフォークを手に取り、サラダや肉をいくつか口にした。


「おいしいね」


「そうね。今度料理も学ばないと・・・」


変な違和感を覚える。


今のニナはなんだかおとなしい感じがする。


元気がないというか。


何かあったのだろうか。


「そういえばあんまりなかったよね。ニナとご飯食べるの」


「あなたは家族食べてたからね」


「昔はたまに一緒に食べてたよね」


「遠い昔はね」


「あの時は食事のマナーをなかなか覚えられなくてメイド長に結構怒られたなぁ。ニナとよく比べられた」


「そうだったわね。あなたテーブルマナーの覚え悪かったものね」


「まぁ今では多少はマシになったけど。そういてばニナって野菜苦手だったよね」


「あなたは何でも食べてた。私は好き嫌いが多いってジュリエットさんに叱られたっけ」


「だね。でもメイド長も実は生のトマトが食べられないことが判明して・・・」


「そうそう。追求が少し弱まったわよね。あなたがジュリエットさんの苦手な物を見つけて」


「あの頃はファブリスも小さくて、母上はそっちにかかりっきりだったからね。よく2人でご飯を食べた」


「うん。懐かしい」


「・・・・・」


「・・・・・」


「ニナ。なんか様子が変だよ。どうかした?」


「そう?」


「元気がないような気がする」


「そう・・・かもね」


「なんかあった?」


「なんでもないわ」


「なら良いけど・・・」


「それより、なんで今日遅く帰ってきたの?あなたにしては珍しい」


「まぁね。ニナには言っていいかな。父上に遅く帰ってくるように言われたんだ。誰にも言わないでね」


「そう。なんでそんなこと言ったのかしら?」


「さぁラファエルさんと話があったんじゃない?」


「なら、食後に2人で話せばいいじゃない。好きなブランデーを飲みながらさ」


「まぁそうだけど。あんまり深く考えなかったな」


「・・・あなたってドライね」


「え?」


「だって家族で一人だけのけものにされたような形になるのに、それを全く気にしないなんて」


「そういえばそうだね。それも深く考えなかったな」


「はぁ・・・ノーテンキなだけかも」


「まぁ深く考えてもしょうがないし」


「それはそうね・・・。ねぇ」


「なに?」


「家族と離れ離れになるっと考えたことある?」


「まぁいつかは。一旦はファブリスも外の学校にいくだろうしね」


「そうじゃなくて、永遠に会えなくなる状態になるってこと」


家族というか、好きな人間と離れ離れになることは経験したことがある。


心の中心にあるものがいきなり引っこ抜かれた時はしばらく何もわからなくなる。


感情の起伏がまるでなくなって、涙も全く出ない。


そしてすこし時間が経った後、ふとした瞬間にいなくなったことを思い出す。


それと同時にこれからの人生、まったく希望がないことを思い知る。


生きていく理由を無くしたとき、物を食べる気力も体を動かす意味もなくなる。


そういった経験をした。


「まぁ考えたことぐらいはあるかな」


思い返せば、思い返すほど、今の自分が生きているのは幸運だったと思う。


無理矢理にでも生かされた期間があり、その間にこの世界でも繋がりができた。


父上やメイド長、ニナや弟のフェリクス、村の人々。


そうしている間に体を動かくことをなんと思わなくなった。


だから僕は、今の自分に関わっている人々に感謝している。


「ニナは?」


「私は・・・家族はいないから・・・。でも親しい人がいなくなる夢をみる。目覚めるととても悲しい気分になる」


「ニナ?」


「私は・・・極力、人には関わらないようにしていたわ。だっていつかはいなくなるもの」


「・・・・」


「でも、ここにいる時間が長すぎた」


「ニナ・・・」


「ごめん。こんな話して。暗くなっちゃったわね」


「いいよ。でも」


「でも?」


「僕は君の前からいなくなることはしないよ」


「本当に?」


「もちろん。だってニナも僕の大切な家族なんだから」


「・・・・バカ」


「ん?なにか言った?」


「なんでもない。じゃあ私はそろそろ行くわ」


「ああ、うん」


「食器は明日片付けるからそのままにしておいて」


「わかった。ありがとう」


ニナは立ち上がって扉の方に歩いていく。


ドアを開けて部屋を出る直前に足を止めた。


「ねぇフェリクス・・・」


「なに?」


「うんん。なんでもない。おやすみ」


「おやすみ」


ニナが部屋から出て言った後しばらく一人で食事をとった。


全て食べ終わると食器を重ねてカートの上に乗せる。


そしてカートを部屋の入口の近くへ移動した。


「満腹になったし、そろそろ寝ようかな」


窓の近くまで移動する。


窓から天の登る満月を見上げた。


きれいな月だ。


しばらく月を眺めて、カーテンを閉めた。


そしてベットへ移動し潜り込む。


今日は客人が訪れてイレギュラーなことがあったが、それなりに楽しい日だった。


何よりニナと話せてよかった。


「でも、なんか元気なかったよな・・・」


気になるし、助けになれるなら手伝いたいが・・・。


あんまり自分のこと話すタイプじゃないんだよね。


「・・・・」


考え事をしているうちに眠りについた。


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