指名依頼
「あっ、アルク君。指名依頼が来てるわよ」
「···またですか?」
謁見があった日から一ヶ月、冒険者ギルドに依頼受けに来た俺はそう言う。
この一ヶ月間、スタンピードで功績を得て若くしてSSランク冒険者になった俺に指名依頼がずっと来ているのだ。それも魔物の討伐とかなら良いのだが移動の護衛や貴族の子供の剣の指導といったランクがそこそこの冒険者で事足りる様な依頼ばかりだ。しかも移動の依頼ではわざと貴族のご子女に会わせたりして繋がりを得ようとしてくる始末だ。やられる側から見たら溜まった者ではない。
それに貴族からの依頼なので不用意に蹴る事も出来ないせいでティアと一緒に依頼を受けれないなどといった事もある。
ランクが上がる事も良い事だけではないと言う事だ。
「今回は何処からの依頼ですか?」
今までの指名依頼の事を思い出してげんなりした様子でレイラさんに尋ねる。
「あはは、今回はまともだと思うわよ。なんせ依頼主は国王様だからね」
「え、国王様ですか!?」
流石に国王から依頼が来るのは予想外だった。
「まぁ、正確にはエルメスト王国の騎士団長から通じて国王の名前で依頼が来たって感じね。依頼内容は最近騎士が腑抜けて練度が下がって来ているので王城にいる騎士の訓練に参加させて発破を掛けてほしいという依頼よ」
おお、まとも··というか王都の騎士に発破を掛けるって結構ハードル高くないか?でもそれはそれで楽しそうだ。
「面白そうですね。ですが俺は王都の騎士の実力を余り知りませんけど大丈夫でしょうか?」
まぁ、一様スタンピードの時に冒険者に混ざっていた騎士の実力は見てはいたが正確には分からないので少し心配だ。
「あ〜、アルク君なら大丈夫よ。それにいくら王都の騎士とはいえSSランクの冒険者とタメを張れるなんて出来るわけ無いわ。出来たとしても騎士団長くらいなものよ」
「へぇ〜、騎士団長ってSSランクレベル何ですか」
流石に国の騎士を纏めるだけの事はあると言う事だろう。
「ええ、エルメスト王国は帝国や教国に並ぶ強国だからね。騎士団長とも成ればSSランクの実力はあるわ。それに魔法師団長もSSランクとは行かずともそれに近い実力があると言われているわ」
魔法師とは名前通り騎士の魔法使い番の事だ。
それにやはり団長レベルになるとユニークスキルがあるのは確実だろう。まだ依頼を受けている訳でもないのに楽しみだ。
「分かりません。その依頼受けます」
そう言ってレイラさんに手続きをして貰う。
「あっ、それとレイラさんって甘いもの大丈夫でしたよね。これは俺が作ったプリンと言うお菓子なので食べて見てください」
「ええ、大丈夫よ。有り難く頂くわ。アルクって料理も出来たのね」
「はい、流石に剣だけで他に何も取り柄がないと言うのは嫌なので趣味として料理もやっています」
「へぇ〜、そうなの。アルク君は剣だけでも十分だと思うけどね」
「そうかも知れませんが出来る事が多いに越した事はありませんので」
「確かにそうね」
「では俺はこれで失礼します」
「ええ、依頼の日は三日後のニノ鐘に王城だから忘れない様にね」
「三日後のニノ鐘ですね。分かりました。それでな」
そう言って俺は冒険者ギルドを出る。
因みにニノ鐘とはこの世界にも時間がある。表記は地球と同じ一日24時間だ。そして貴族はともかく平民の家には時計などはないので大きな町では朝の6時から夜夕方の6時まで2時間毎に鐘がならされて時間が分かる様になっているのだ。
つまりニノ鐘とは朝の10時の事だ。この時間なら遅れる事はないだろう。
冒険者ギルドを出た後、俺は工業地区のガゼルの武器屋に向かう。理由は色々あるが1番の理由はアダマンタイトの武器にがたがきたからだ。
自分ではしっかりと手入れなどをしていたがやっぱり素人の手入れ程度では駄目だったらしく依頼で魔物を斬った時の駄目になったのでガゼルの所で新しい武器を買う為に行くのだ。
冒険者ギルドから工業地区は意外と近いのでガゼルの武器屋にはすぐに着いた。近いといっても数十分歩いたが···。
店は開いているので早速中に入って見るが誰もいない。しかし奥からトンカチを叩く音が聞こえるので奥で武器でも造っているのだろう。
取り敢えず呼んでみることにする。
「ガゼルさーん、居ませんかー」
中にいるのは分かっているが一様そう呼ぶがが出てこない。
それから暫く呼んでも出てこないので中に入って直接呼びに行こうとした時···。
「うるさいわ!何度も呼ばんでもわかるわ!」
出てきたガゼルが大声でそう言う。
それにガゼルさんの方がうるさいと思う。
「ガゼルさんこそ、聞こえてるならさっさと出て来てくださいよ!」
「そんな事知らんわ」
あっ、この人相当頑固だ。
「もう、いいです。それより武器にがたがきたので買い替えに来ました」
「む、確かにお前さんは前にアダマンタイトの武器を買っていった坊主だったな」
「アルクです。それにしても良く覚えていましたね」
「おうそうだったアルクだったな。俺でも剣を売った相手くらい覚えておるわ」
いちいち声がでかい。
「それにしてもアダマンタイトの剣がもう壊れたのか?アダマンタイトならもっと持つはずだが···その壊れた武器はまだあるか?」
「はい、これです」
俺は壊れた剣をだす。
「どれ···」
そう言ってガゼルは俺の壊れた剣を詳しく見る。
「うーむ、アルク、これはお前さんの前に見せてくれた鉄の剣と同じ様にアルクのオーラや魔力に耐え切れずに壊れているな」
「え、マジで」
確かにアダマンタイトって相当丈夫な金属だった筈だ。それが壊れたとなると他に使える武器はあるのだろうか?
「えっと、耐えられる武器はありますかね?」
「ああ、それなら心配するな。金属単体なら無理だが合金ならアダマンタイトよりも伝導率が良くて丈夫な剣を造ってやる」
「ありがとうございます」
どうやら何とかなる様だ。
「それにしてもアダマンタイトが自壊するほどとは流石はSSランクだな」
「知っていたんですか?」
「スタンピードであれだけ名を上げれば馬鹿でも耳に届くわ」
「な、なるほど」
「それと剣は流石にすぐには出来ないから後日取りに来てくれ」
「あっ、三日後に依頼があるのですが、それまでに間に合いますか?」
「三日か、分かった何とか三日後の朝までには終わらせて見せる」
「ありがとうございます」
それから暫く話し武器屋を出る。
その後は特にする事はなかったので王都の店を冷やかしたりした後グランハルト領に帰ったのだった。




