スタンピード③
ガルドの声と共に前衛の冒険者が一勢にこちらに向かって来ている魔物の大群に走り出す。
俺もそれの先頭を走っていたのだが周りの冒険者が遅過ぎて段々差が開いていくがAランク以上の冒険者は自由に行動して良いので俺は他の冒険者を置き去りにしていち早く魔物の方に向かう。
暫く走り続けていると遂に先頭の魔物が近付いて来た。後ろの冒険者とは大分距離が離れてしまっている。
俺はこれからが本番とばかりにオーラと仙術で身体能力と剣を強化する。更に仙術の空気の抵抗をなくす技を使い加速し、魔物の大群の先頭にいるウルフに向かって走りならがら剣を振るう。すると剣からはなんの反動も帰って来なかった。空振りかと思い後ろの斬り掛かったウルフに目を向けるとそこには首がないウルフがいた。
·····どうやら、強くなり過ぎた俺に反応して適応する剣の切れ味が凄過ぎてウルフ程度じゃ斬った反動を感じなかったらしい。俺は魔物を何体か斬りその事を確認すると、無言でただひたすらに尚かつ速く魔物を斬って行く。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
「······」
前衛の冒険者達はあり得ない出来事に言葉を失っていた。
それは遡ること数十秒。冒険者達が魔物の大群の元についてまず見た物は100はあるだろうと言う大量の魔物の死体だった。そのどれもが体を断絶させられたり首を刎ねられたりしている。
そして普通の冒険者よりも前に向かった冒険者は一人、Sランク冒険者の剣神の少年、アルクただ一人だけだ。
それを知っている冒険者達はアルクの姿を探すとある一点で何かが駆け抜け魔物が断絶されている所が目に入る。低ランクの冒険者では何が起こっているか分からなかったがBランクやAランクの冒険者にはそれがかろうじて見えていた。魔物の間を走り抜け魔物が断絶するアルクの姿が。
そして冒険者達は理解した。残像が見える程の速さで駆け抜け剣を振るう度に相手を両断する次元の違い過ぎる剣技。その剣技を使う者こそが剣の神、剣神だと。
そのことを理解し冒険者達はその存在が味方である事に安心して魔物との戦闘を始め出した。
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暫くひたすら剣を振っていると段々と出てくる魔物が魔の森の浅い部分から深部や最深部の魔物に変わって来ていることに気付いた。恐らくここからはランクの低い冒険者では無理だろうと考え後ろにいる冒険者の元に向かう。
因みに仙術の回復を促進する技を使っているのでまだまだ戦闘は可能だ。それにまだ魔力での強化を使っていないのでギアを上げる事も出来る。
「すいません、段々と出てくる魔物が深部や最深部の魔物になって来ているのでランクが低い冒険者は下がらせて下さい」
俺は近くいた冒険者にそう言う。
「わ、分かりました」
俺がSランクだと分かっている様で話を聞いてくれた。だけど前まで普通にタメ口なのに何故敬語なのだろうか?そんな事が頭に浮かぶが今はそれどころではないので俺は戦闘に戻る。
ティアの方が少し心配になるけど先程からティアの魔力を感じる魔法が撃たれているのが分かるので心配ないと考え直す。
戦闘に戻り暫くして魔の森の最深部の魔物が多くなっている頃に魔の森の方から巨大な気配を感じた。この気配の大きさはまずい。俺一人ならなんとか倒す事は出来るだろうがそうすると周りの冒険者が犠牲になるだろう。
俺は近くガルドの気配がある事に気付いてので急いでそちらに向かう。
「ギルド長!」
「おお、アルク、どうした?」
「魔の森から巨大な気配がこちらに近付いてます」
「何だと!?アルク、どれくらい強か分かるか?」
「恐らく、俺が戦ったことあるSランクの魔物よりも強いです」
「Sランクより上か···。アルク、他のAランクやSランクの補助があれば勝てるか?」
「いえ、勝つだけなら俺一人でも行けますがその場合周りの冒険者が確実に死人が出ます。なので戦闘は俺一人のして他の冒険者は下がらせてAランクとSランクの冒険者に最深部から来ている魔物をお願いしたいです」
「·····本当に勝てるんだな?」
「はい、流石に格好つけて死ぬつもりはありませよ」
「分かった、冒険者を下がらせる。死ぬなよ、アルク」
そう言ってガルドは離れて行き冒険者に指示を出している。暫くすると冒険者達が引いて行ったので俺は残りの魔物を狩りながら巨大な気配が来るのを待つ。因みに後ろに行かれた魔物は後ろの冒険者に任せているのでさっきまでは冒険者に気を配って死なせない様に助けたりしていたので相当楽だ。
「グオオオォォーーー!!!」
暫くして遂にその巨大な気配が魔の森から大きな声と一緒に出てきた。その姿はまるで家と間違える程の大きさで全身を鱗で覆われトカゲの様な体で土の色をしている。その正体はSSランクの魔物、グランドドラゴンだった。
SSランクと言えば国が大量の兵を出して倒せるのレベルの魔物だ。もしここにSSランクの冒険者がいたとしても一人で倒す事は出来ない。
そんなレベルの化け物だ。
それが今は目の前に対峙している。
グランドドラゴンもこちらが強いと分かっているのかこちらを威圧している。すごい威圧感だ。
俺は剣を構える。どちらにせよここで逃げたら王都が滅茶苦茶になってしまうので意味がない事は分かっているので逃亡という選択肢がないのだ。
こうしてグランドドラゴンとの戦闘が始まったのだった。
俺はまずあの鱗の強度を確かめる為に縮地で一瞬で近寄りグランドドラゴンを斬り付ける。だが傷は付いたが深くも浅くもないと行った重症にならない程度の傷だ。傷をつけられた事に苛ついたのかグランドドラゴンが前足で俺を叩き潰そうとしてくるが俺はそれをスピードに任せて避ける。
その後魔法を撃ったりもしたが余り効果がある様には見えない。それから暫くグランドドラゴンの色々な所を斬り付け弱い所を探した結果、殆ど弱点と言う弱点はなかった。
どうしたものかと考えているとグランドドラゴンの口に物凄い量の魔力が集まり俺に向かって土属性のブレスを吹いていたが俺はそれも避ける。
もの凄いが威力なのであれに生身で当たったら危ないだろう。
そう思い俺は一気に蹴りをつける為に今まで使ってなかった魔力での身体能力と武器の強化を使う。その瞬間俺のスピードと攻撃の威力が跳ね上がり一瞬にしてグランドドラゴンの体に深い傷を残して行く。このまま行けばいずれ倒す事が出来るだろう。
だが、俺にそのつもりはない。
この調子で行くと先に俺の魔力が尽きる可能性があるからだ。
暫くグランドドラゴンを斬り裂いたているとまたブレスを貯めて吹いてきた。先程よりも集まってもいる魔力が多い為か威力が高い。
「もう、それは十分だ!」
俺はそれを避けずにあえて突っ込むみオーラや魔力、仙術での強化を全開にして剣を振るい。グランドドラゴンのブレスを斬り裂いた。
ユニークスキル万象を斬り裂く者を使ったのだ。
グランドドラゴンは自分のブレスが斬り裂かれた事に驚き固まっている。
そこを見逃す俺ではない。
俺は剣に更に氷結魔法を付与しグランドドラゴンの首に向かって全力で剣を振るう。オーラ、魔力、仙術、魔法とあらゆる方法で強化された俺の剣と俺の鍛えあげてきた身体能力によって俺はグランドドラゴンの首を切り落とした。
「ふぅ、終わった〜」
戦闘が終了した俺はそんな声を出し座り込む。
流石の俺も今回の戦いは疲れた。
「お兄様!」
するとティアが俺のすぐ側に転移して抱き着いてきた。恐らく戦闘が終わったを確認してすぐに転移してきたのだろう。
「お兄様、もうこんな無茶は辞めて下さい!お兄様が居なくなった私は···」
どうやら俺の事は心配してくれている様だ。
「分かったから、泣くな。それに俺ならあのくらいの魔物に遅れは取らないから大丈夫だ」
「絶対ですよ?」
うっ、その上目遣いはせこいだろ。
「わ、分かった。絶対だ」
そう言うとティアは納得してくれた。
その後はティアの空間魔法で門の所に戻り少しガルドと話をしてギルドカード処理や報酬などは明日と言う事になり、俺達はグランハルト領の屋敷に帰った。
案の定、家に帰ったらアルベルトとシェリアに怒られた。
シェリアに始めて怒られたが正直グランドドラゴンよりも怖かったかもしれない。
長引いてしまってすいません。




