願いの答えー五人目の存在
「願い」の扉の向こうで、四人は、この世界を創った理由を知る。
自由な世界。
何でもできる世界。
自由になっただけでは、人は、幸せになれるとは限らなかった。
今、
カイト、ハナ、レン、ユナの四人に新しい役割が託される。
ーー世界を創ること。
四人は、いったい、どんな未来を選ぶのか。
僕は、扉の前に立っていた。
白い扉。
そこに書かれているのは、たった一文字。
ーー「願い」
「……開けるよ」
僕が言うと、ハナが隣にたった。
「うん」
レンも頷く。
「ここまで来たんだ。もう、行こう」
ユナだけは、扉をじっと見つめていた。
「ユナ?」
「……うん」
小さな声だった。
「大丈夫」
ユナが笑う。
「行こう」
僕は、ドアノブに手をかけた。
カチッ。
扉が開く。
その向こうにあったのはーー
何もない部屋だった。
「……何もない?」
ハナが中へ入る。
壁も。
机も。
椅子もない。
ただ、
中央に一つだけ光が浮かんでいた。
その光が、ゆっくり人の形になる。
「来たんだね」
声がした。
僕たちは、立ち止まった。
「あなたは、この世界を創った人?」
僕が聞く。
「そうとも言える」
「どういう意味?」
光の人影が笑った。
「私は、この世界を最初に考えた人間だ」
レンが驚く。
「人間……?」
「そう」
「じゃあ、管理システム?」
「私が作った」
ハナが一歩前へ出る。
「どうして、こんな世界を作ったの?」
しばらく沈黙があった。
そして、
その人は、言った。
「自由にしたかったから」
「……自由に?」
「昔の世界では、人は多くのものに縛られていた」
学校。
仕事。
時間。
お金。
周りの目。
「だから、私は考えた。」
光が少し強くなる。
「もし、何にも縛られずに生きられる世界を作ったら、
人は、幸せになれるのではないかと」
僕は、今まで見てきた世界を思い出した。
好きな場所へ行ける。
好きなものを創れる。
時間さえ、自分で決められる。
「じゃあ……成功したんじゃない?」
僕が聞く。
「最初は、そう思った。」
その言葉に、少し寂しさが混じった。
「でも、自由になった人々は、次の問題にぶつかった」
「次の問題?」
「何をすればいいのか、分からなくなった」
ハナが黙る。
「誰にも命令されない」
「誰にも急かされない」
「何でもできる」
「それなのにーー」
光の人影が僕たちを見る。
「自分が何をしたいのか分からない」
僕は、ハナを見た。
ハナも僕を見る。
最初に海で出会ったとき。
彼女も同じことを言っていた。
ーー「私、やりたいことがまだ見つからないの」
「だから……」
僕は、気づいた。
「僕たちを呼んだの?」
「正確には、私ではない」
「え?」
「この世界自身が、君たちを選んだ」
ユナが口を開いた。
「だから私は、ずっと待っていたの」
光の人影が頷く。
「この世界には、最後の機能が残されている」
「最後の機能?」
「創造」
空中に文字が浮かんだ。
ーー「世界創造システム」
ーー「未完成」
ーー「必要条件:自らの意思」
「この世界は、完成してないんだ」
レンがつぶやく。
「そう」
光の人影が答える。
「私は、世界を作った。
でも、未来までは、作れなかった」
「未来は……自分たちで作るものだから?」
僕が言った。
「その通り」
初めて、光の人影が嬉しそうに笑った。
「だから、君たちが必要なんだ」
画面に四人の名前が浮かぶ。
「カイト」
「ハナ」
「レン」
「ユナ」
そして、その下に一つの質問。
ーー「あなたたちは、どんな世界を望みますか?」
「……」
僕たちは、黙った。
簡単には答えられない。
だってーー
これは、自分たちだけの未来じゃない。
この世界で生きる、すべての人の未来なのだから。
ハナが僕の隣に立つ。
「カイト」
「うん」
「私、分かったかもしれない」
「何が?」
ハナは画面を見る。
「自由って、何でもできることじゃないんだと思う」
レンも頷いた。
「自分で選べること」
ユナが続ける。
「そして、選び直せること」
僕は、三人を見る。
「じゃあーー」
僕は、画面に手を伸ばした。
「僕たちが作りたいのはーー」
その瞬間。
世界中の端末が一斉に起動した。
そして、
まだ誰も知らない未来に、
新しい一行が刻まれた。
ーー「世界創造、開始」
でも、
その直後。
もう一つの文字が表示された。
ーー「警告」
ーー「創造者の中に、未登録の存在を確認」
「……未登録?」
僕たちは、顔を見合わせた。
すると、
ユナが青ざめた。
「……そんな」
「ユナ?」
彼女は、震える声で言った。
「私じゃない」
その瞬間。
四人の後ろにーー
もう一人の人影が立っていた。
この世界がどうして作られたのか、少しずつ分かってきました。
「自由に生きられる世界」を作っても、
人は、必ずしも、自分のやりたいことを見つけられるわけではない。
だからこそ、この世界には、最後に
「創造」という仕組みが残されていました。
未来は、誰かに決めてもらうものではなく、
自分たちで創っていくもの。
カイトたちは、これからどんな世界を創るのでしょうか。
……と思ったところで、最後に現れた「もう一人」
しかも、
「創造者の中に、未登録の存在を確認」
という謎の表示。
ユナも知らない存在とは、いったい誰なのか。
そして、
その人物は、味方なのか、それともーー。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。




