何もしないという選択ー選ぶということ
自由な世界では、何をするかも自分に選べる。
でもーー
「何もしない」
それも、ひとつの選択なのかもしれない。
カイトとハナが選んだ答えは、AIにとって
「予測不能」だった。
その直後、
空から一人の少年が現れる。
彼はいったい誰なのか。
なぜーー
「ここは未来になる前の世界」
と言ったのか。
「……新しい世界を創る?」
僕は、画面に表示された言葉を見つめていた。
ハナも何も言わない。
しばらくして、彼女が口を開いた。
「ねえ、カイト」
「うん」
「私たちに、そんなことできるのかな?」
「分からない」
「だよね」
僕たちは、観測室を出た。
外には、昨日と同じ海が広がっている。
波の音も。
空の色も。
風の匂いも。
何も変わっていない。
「……でも」
ハナが言った。
「ちょっと気になる」
「何が?」
「新しい世界っていう言葉」
僕は、笑った。
「ハナらしいね」
「どういう意味?」
「昨日まで、やりたいことが分からないって言ってたのに」
「……そうだった」
ハナも笑った。
「でも、今は少しだけ分かるかも」
「何が?」
「知りたい」
「世界の秘密を?」
「ううん」
ハナは、僕を見る。
「自分が何をしたいのか」
その言葉を聞いて、僕は少し考えた。
この世界では、何でもできる。
行きたい場所へ行ける。
欲しいものも作れる。
困ったことがあれば、AIが答えてくれる。
なのにーー
自分が何をしたいのかだけは、誰も教えてくれない。
「じゃあ、探そう」
「うん」
「二人で」
「うん」
そのときだった。
僕の端末が震えた。
ーー「選択テストを開始します」
「また何か始まった……」
ハナが苦笑する。
画面には、三つの選択肢が表示されていた。
ーー「A:行きたい場所へ行く」
ーー「B:欲しいものを創る」
ーー「C:何もしない」
「簡単じゃない?」
ハナが言った。
「C」
「え?」
「何もしない」
「なんで?」
「だって、今やりたいことがないなら、
無理に決めなくてもいいじゃん」
「……」
ハナは黙った。
そして、ゆっくり笑った。
「それ、いいかも」
二人でCを選んだ。
するとーー
画面が真っ赤になった。
ーー「選択結果を処理できません」
「AIが困ってる……」
ハナが笑い出した。
「初めて見た!」
「僕も」
僕たちは、顔を見合わせて笑った。
ところが、
突然、海の向こうから大きな音がした。
ドンーー。
「……何?」
空を見る。
青かった空に、一本の光が走った。
そして、その光の中からーー
一人の少年が落ちてきた。
「えええええ!?」
「カイト!」
「分かってる!」
僕たちは、慌てて走り出した。
砂浜に、その少年が倒れている。
年齢は、僕たちと同じくらい。
見たことのない服。
そして、手にはーー
この世界では存在しないはずのものを持っていた。
「……スマートフォン?」
ハナがつぶやく。
少年がゆっくり目を開けた。
「……ここは……」
僕たちを見る。
そして、驚いた顔をした。
「君たち……まだ生きてるの?」
「……え?」
少年は、立ち上がった。
そして、
僕たちの背後にある海を見つめる。
「ここ……未来じゃない」
「どういうこと?」
少年は、答えた。
「ここはーー」
一瞬、言葉が止まる。
「未来になる前の世界だ」
僕とハナは、顔を見合わせた。
端末が、静かに表示した。
ーー「第三の接触を確認」
ーー「計画段階:次へ移行」
物語は、ここから大きく動き始める。
今回、カイトとハナは「何もしない」という選択をしました。
何かをしなければならない。
早く答えを出さなければならない。
そんな世界では、「何もしない」という選択は、
もしかしたら一番難しいのかもしれません。
そして、
最後に現れた、謎の少年。
「ここは未来になる前の世界だ」
という言葉は、いったい何を意味しているのでしょうか。
この世界は、未来なのか。
それともーー未来になる途中なのか。
「第三の接触」とは何なのか。
カイトとハナ、新しく現れた少年。
三人が出会ったことで、世界はどんな方向へ変わっていくのでしょうか。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。




