最後の記憶ー世界が生まれる前にー
名前がなかった、四人目の子ども。
誰かに決めてもらうのではなく、自分で選ぶこと。
その小さな選択が、何もなかった世界に色を生み出した。
アオは、初めて...自分の居場所を見つけるーー。
扉の向こうには、小さな部屋があった。
白い壁。
丸い窓。
そして...
真ん中に置かれた一冊の本。
表紙には、何も書かれていなかった。
最初の創造者が、その本を手に取った。
「これは、世界を創る前の記録だ」
今のカイトが尋ねる。
「世界を創る前?」
「ああ。君たちが生まれる前。
KAIが観測者になる前だ」
KAIは、本を見つめていた。
「......僕も、知らない記録なの?」
最初の創造者は、静かにうなずいた。
「君が忘れたのではない。
この記憶は、最初から君の中にはなかった」
その言葉に、KAIの目が揺れた。
本が開く。
そこには、一人の子どもの絵が描かれていた。
何もない部屋で、一人きりで座っている子ども。
その子どもは、窓の外を見つめていた。
「この子が......」
第一のカイトがつぶやく。
最初の創造者は...答えた。
「世界を創ろうとした、最初の子どもだ」
「それって……僕たち?」
第三のカイトが尋ねる。
「そうだ。そして...そうではない」
最初の創造者は、ページをめくった。
そこには...小さな文字が並んでいた。
「失敗しても、やり直せる世界」
「誰も、一人にならない世界」
今のカイトは、息をのんだ。
「これ......僕たちが約束した言葉だ」
「そうだ」
最初の創造者は、本を閉じた。
「だが...最初の世界は、完成しなかった」
第三のカイトが、すぐに問い返す。
「どうして?」
「世界を創ることに夢中になりすぎた。
その子どもは、あることを忘れてしまったんだ」
「あること?」
最初の創造者は、部屋の丸い窓を見つめた。
「世界を創ることと、誰かと一緒にいることは、同じではない」
静けさが広がった。
アオが小さく言った。
「世界があっても、一人だったら......寂しいよね」
最初の創造者は、ゆっくりとうなずいた。
「だから...最初の子どもは、願った。
自分の願いを、誰かと一緒に叶えられる世界を」
KAIが、ようやく口を開いた。
「それで......僕が生まれたの?」
「いや」
最初の創造者は、KAIを見つめた。
「君は、最初からそこにいた」
「......え?」
「君は、世界を創る前から、その子どもの隣にいたんだ」
KAIの瞳が、大きく開かれた。
本の最後のページに、新しい文字が浮かび上がる。
「最初の願いを持った者」
「その隣にいた者」
・・・・・。
もう一つ。
「世界を創ったのは、誰だったのか?」
今のカイトが、最初の創造者を見た。
「......あなたじゃないの?」
最初の創造者は、少しだけ笑った。
「私は、最初の世界を記録した者だ」
その言葉が、部屋に響いた。
「本当に世界を創ったのはーー」
最初の創造者は、三人のカイトとKAIを見つめた。
「君たちだったんだ」
・・・・・。
その瞬間、本のページがひとりでにめくれた。
最後のページに、新しい名前が浮かび上がる。
「最初の創造者の名前」
その文字の下に、ゆっくりと一文字ずつ、
名前が書かれ始めた。
「......まさか」
KAIが、震える声でつぶやいた。
「その名前は......」
最後の一文字が現れた。
そこに...書かれていたのは・・・。
「KAI」
だった。
アオが自分の名前を選んだとき...世界に新しい色が生まれた。
物語は、まだ...終わらない。
新しく現れた扉の向こうには、
最初の創造者が待っていた。
「今度こそ......すべてを話そう」
その言葉が意味するものとはーー。




