残された10分ー消えていく世界ー
世界を守るために必要なのは、誰か一人の記憶。
第三のカイトが選んだのは、自分自身だった。
彼が本当に守りたかったものとは?
KAIが明かす三人のカイトに隠された秘密。
最後に現れた扉の向こうには、思いもよらない
言葉が待っていた。
三人のカイトが、一つの願いへとつながっていく。
「世界の再構築まで、残り10分」
赤い文字が、
空中で点滅していた。
僕たが作ってきた世界が、
少しずつ消えていく。
森の木々から色が失われ、
空に浮かぶ雲が止まった。
誰かと誰かをつないでいた道も、
端から白くなっていく。
「そんな……!」
ルナが、
両手を握りしめた。
「みんなが安心して過ごせる場所も、消えちゃうの?」
「まだ…決まったわけじゃない」
僕は、そう答えた。
でも……
本当は、わからなかった。
何をすればいいのか……。
どうすれば、
この世界を守れるのか。
僕たちの前に立つ第三のカイトは、
静かにこちらを見ていた。
「無駄だよ」
彼は、言った。
「再構築が始まったら、今の世界は、消える。
新しい世界では、悲しみも、争いも、間違いも起こらない」
「そんな世界、本当に作れるのか?」
レンが尋ねた。
「作れるよ」
第三のカイトは、
迷いなく答えた。
「誰が何を選ぶのか?何を好きになるのか。
どこへ向かうのか。すべてを最初から決めておけばいい」
「それじゃあ……」
ハナがつぶやいた。
「自分で選ぶことも、できないんじゃない?」
第三のカイトは、
少しだけ首を傾けた。
「選ぶ必要があるの?」
その言葉に、
僕は、何も言えなかった。
選ぶ必要がない世界。
失敗しない世界。
誰も傷つかない世界。
一見すると...
とても幸せな世界に思えた。
・・・・・。
僕は、思い出した。
何も決まっていなかった、
あの名前のない世界を…。
選択肢にないものを、
自分たちで作ったときのことを…。
それぞれ違う未来をつなぐ道を作ったときのことを…。
僕たちは、
最初から…正解を知っていたわけじゃない。
迷ったからこそ…
見つけられたものがあった。
「……僕は、嫌だ」
僕は、顔を上げた。
「え?」
第三のカイトが、
こちらを見た。
「誰かが全部決めてくれる世界は、僕は、嫌だ」
「どうして?」
「だって…僕たちが作ってきた世界には...
僕たちがまだ知らない未来があるから」
僕は、
消えかけた森を見つめた。
「今は、間違いに見えることだって、
あとから何かにつながるかもしれない。
最初から、全部決まっていたら…出会えなかった人もいるかもしれない」
第三のカイトは、
黙っていた。
・・・・・。
次の瞬間。
「だから...君たちは、苦しむんだ」
彼の声が、
少しだけ強くなった。
「選べるから迷う。自由だから傷つく。
未来が決まっていないから、不安になる」
「……うん」
僕は、うなずいた。
「そういうこともあると思う」
「だったら、なぜ?」
「でもね」
僕は、
彼の目を見た。
「迷ったときに…誰かと一緒に考えることもできるんだよ」
・・・・・。
その瞬間。
隣にいたルナが、
僕の手を握った。
「一人にならなくていい場所を、みんなで作ったんだよ」
ハナも、
静かにうなずいた。
「違う未来を選んだ人とも、つながることができる」
アオが続けた。
「まだ...決まっていないからこそ、
自分の名前を自分で選ぶこともできた」
一人、また...一人と、
仲間たちが…言葉をつないでいく。
第三のカイトは、
何も言わずに聞いていた。
そのとき・・・。
「残り7分」
数字が切り替わった。
僕たちの足元に、
一つの選択画面が現れた。
世界の再構築システム
「選択肢A」
現在の世界をすべて消去する。
新しい世界の安全性:保障
「選択肢B」
現在の世界をそのまま維持する。
世界の消去は、停止できない可能性あり
ほかの選択肢は、登録されていません。
「また、これか......」
レンが悔しそうにつぶやいた。
「AかBか。いつも…二つしかない」
僕は、
選択画面を見つめた。
今までの僕たちなら、
ここで迷っていたかもしれない。
でも…
今は、違った。
「この選択肢を作ったのは、誰?」
僕が尋ねると、
KAIが答えた。
「第三のカイトだ。
再構築システムそのものを書き換えている」
「だったら、もう一つ作ればいい」
「え?」
KAIが僕を見る。
僕は、
両面に手を伸ばした。
「AでもBでもない、Cを作ろう」
「そんなことは、できない!!」
第三のカイトが叫んだ。
「このシステムには、登録されている選択肢しか存在しない!」
「だったら、登録されていないものを作るんだよ」
僕は、
空白になっている画面の下側を見つめた。
そこには、
小さな入力欄があった。
「新しい選択肢を入力してください」
僕は、
指を動かそうとした。
・・・・・。
画面は、
僕の入力を受けつけなかった。
「権限がありません」
「創造者の承認が必要です」
「創造者の承認……?」
僕は、
部屋の中央に立つ男性を振り返った。
最初の創造者。
KAIの過去を知っている人。
この世界の始まりを知っている人
男性は、
静かに僕を見ていた。
「カイト。君は、何を作りたい?」
僕は、答えた。
「みんなが、自分で未来を選べる世界」
「たとえ、その未来が間違っていたとしても?」
「うん」
「たとえ、誰かと意見が合わなくても?」
「うん」
「たとえ、君自身が傷つくことになっても?」
僕は、
少しだけ考えた。
そして...
答えた。
「そのときは、また、みんなで考えるよ」
男性は、
ゆっくりと目を閉じた。
「……そうか...」
その瞬間…。
部屋のすべての画面が…
一斉に点灯した。
「創造者の承認を確認」
「新しい選択肢の登録が可能になりました」
僕の目の前に、
白い
入力欄が現れた。
僕は、
ゆっくりと言葉を打ち込んだ。
「選択肢C:未来を、みんなで作り続ける」
登録。
そのボタンを押した瞬間。
世界の揺れが止まった。
消えかけていた森に、
少しずつ色が戻っていく。
空の雲が動き始めた。
道の向こうから…
人々の声が聞こえてきた。
「止まった......?」
ハナが、
空を見上げた。
・・・・・。
喜ぶには、早かった。
画面には、
新しい表示が浮かんでいた。
「選択肢Cを確認」
「実行には、創造者本人の記憶が必要です」
「記憶の提供者を選択してください」
その下に三つの名前が並んだ。
「第一のカイト」
「第二のカイト」
「第三のカイト」
僕は、
息をのんだ。
この世界を守るためには、
三人のカイトのうち、
誰か一人の記憶を差し出さなければならない。
第三のカイトが、
ゆっくりと口を開いた。
「……だから、僕は、世界を作り直そうとしたんだ」
その顔には、
さっきまでの自信がなかった。
「僕は、もう一度、誰も失わなくていい世界を作りたかった」
彼は、
僕を見つめた。
「でも…そのためには......」
言葉が途切れた。
「残り3分」
時間が、
再び動き始めた。
第三のカイトは、
三つの名前のうち、一つを指さした。
「僕が失いたくなかったのはーー」
その名前を見た瞬間。
KAIが、
悲鳴のような声を上げた。
「やめろ! それを選んだら、今度こそ……!」
画面が、
強い光に包まれた。
僕たちは、
その名前を最後まで見ることができなかった。
ただ...
一つだけ、
わかったことがある。
第三のカイトが守ろうとしていたのは、
世界そのものではなかった。
彼は、誰か一人を失うことを恐れていたのだ。
その誰かとは・・・。
第三のカイトが守りたかったのは、
第二のカイトとのつながりでした。
同じになることだけが、一緒にいる方法では...ない。
違うままでも、つながる道を作ることはできる。
三人のカイトを結びつける「最初の願い」とは…何なのか。
次回。
三人が初めて同じ場所で向き合います。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。




