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16話 嫌な奴

久我(くが)……。あんたもこんなところで油売ってないでモンスター討伐に行ったらどうなの? 最近はあんまり前線に出向かないみたいじゃない」

「あ? 俺が出向くような事態にはなってねえだろ? 犬耳の兄弟が現れたっても、あいつらはなんだかんだで使いっ走りでしかねえし……俺は後輩の育成に努めんのに忙しいのよ。だから……。ほら、今日だってこうして後輩に奢ってやろうと思ってこんなとこに来たってわけだ」


 真衣さんに久我と呼ばれる男、その後ろには女性が二人立っていた。

 

 笑顔だが……どこか作っているようにも見える。


 それにこの男の印象からしても嫌な予感しかしない。

 金髪でつなぎで……厳つい顔つきも近寄りにくいって感じだ。



「注文頼む! こいつに本日の日替わりやってくれ! そんで俺はビール」

「「え?」」



 話をしながら俺たちの隣のテーブルに腰かけた久我たちは大声で注文をする。


 すると女性たちは驚いたような表情を見せた。

 見れば女性たちの頬はこけて、その身体はやけに細い。



「それでどうだ? お前たち……というかそっちのお嬢さんも俺たちのチームに入らないか?」

「は?」



 歓迎会の明るい空気から一転気まずい空気が流れ始めると、突然久我は千咲を勧誘。


 真衣さんの額のしわは余計に増える。



「いやいや聞いたぜ、犬耳兄弟たちのコボルトを殲滅するのに大分活躍したとか。縄島の力があったとはいえ、新人でこんだけ活躍する逸材をそんなちんけなチームに置いとくのは勿体ないってもんよ」


 ちんけ……。

 チームメンバーがこれだけいる中でよくそんな暴言が言えるものだと思ったが、あのアパートに金欠の先輩……あんまり反論はできそうにないな。


 ただ千咲がこれに応じるとも思えないがな。



「……。残念だけど遠慮させてもらうわ。私はここで強くなるチームだって、私が大きくして見せるんだから」

「ふーん。やる気十分。こりゃ余計に気に入っちまったな。えっとチーム権限で――」

「勧誘はともかく、お前のチームに強制加入権はないはずよ。先日のコボルト戦……。あれで死んでいったC級探索者の海老原さんのこと……まさかもう忘れたの?」

「ん? ああ。あいつなぁ……。実力派だって噂だったし顔も好みだったからチームに入れてやったのによぉ、あれも嫌これもしたくない、終いにはもう我慢できないなんて言って勝手に出いって……勝手に死にやがった。本当に迷惑でしかない奴だったぜ」



 海老原……俺たちがバスの中から見たあの探索者。

 壮絶な最期を迎えた彼女だったが、久我のチームに所属していたのか。



「……。自分のチームの仲間が死んでその態度……。その様子だとお墓どころか遺品の回収に努めることもしないようね」

「当然。勝手に死んだだけだしよ、ここじゃ視認なんて別に珍しくもなんともねえだろ? っと、飯がきたみてえだ。さ、たっぷり食えよお前ら」



 潔いクズ発言に真衣さんは歯ぎしり、千咲は小さく舌打ち、和田さんは困ったように苦笑。


 そんな中頼んでいた料理が次々に運ばれて、俺たちと久我たちの前に並び出した。


 こんな場所でどんなものが食べられるんだろうか、と少しだけ心配していたが、これはなかなかうまそうじゃないか――



「「いただきます!!」」



 手を合わせて早速自分の前に置かれた食事に手を付けようとすると、久我が連れていた女性二人が料理にがっつき始めた。


 米は飛び散り、みそ汁は溢す始末で、橋の使い方もなんだかぎこちない。

 まるで、しばらくご飯を食べていなかった人みたいな……。



「久我、あなたまた……」

「こいつら俺たちの買いだめてたポーションを勝手に飲んでよぉ……。だから特別にこの3か月くらいポーションだけで生活させてやったのよ。そしてたらさ、普通の食事がしたいだのなんだのごねてきたってわけだ。だから今日はここに連れてきて飯を食わしてやってるるってわけよ。そしてら……いやぁ面白いな。まさか橋の持ち方さえ覚えてねえなんて。……。さて、それにこっからがまた面白いことになりそうなんだよな」



 勢いよくご飯をかき込む二人。


 しかしその手はぴたりと止み、額に汗を浮かべ始めた。



「あの、すみません。少しトイレに……」

「私も……」

「食事中にトイレなんかマナー違反だろ。『チーム規則』にだってあるはずだぜ、リーダーの前では最低限のマナーを守れ、ってな。もし生きたいならそれを全部食ってからだ」



 女性たちはその言葉に顔面を青くさせると、腹を押さえながら残ったものを食べ進め始めた。


 そしてなんとか食べ終わったかと思えば急いでその場から駆け出していった。

 それから微かにだが、外から悲痛な叫びが聞こえたような気がしたが……最悪な事態に至っていなければいいな。



「まったく……せっかく奢ってやってんだからもう少し味わえば良いのになぁ。あ、お前ら出ていくならちょっと待ってからのほうがいいかもだぜ。ここの清掃担当は優秀だが、さすがに5分くらいはかかる」

「相変わらず最低ね。『チーム規約』の強制力をそんなものに使うなんて。やっぱりあんたがチームリーダーになんてなるべきじゃなかった……」

「はっ。チームから抜けていった奴が何言ってんだか。それにもしお前がチームリーダーになっていたらこんなにうまく稼げはしていなかっただろうよ」

「それは……」



 久我の言葉に黙り込む真衣さん。

 あの真衣さんがこんな風になってしまうなんて、いったい過去に何があったんだろうか。



「……。まぁどうしても俺のやり方が気に食わねえってんなら、俺のチームを超えるくらい稼いでみろや。和田とそのお嬢さんとそのガリガリでFランクのくせに有名人な男……期待外れの雑魚の世話を見ながらな」

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