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12話 欲しい

「う、ん? ここ……は? ……。そうだ、俺気を失って……」


 ふかふか……とは言えない敷布団の感触と、やけに薄い掛け布団の重みを感じながら俺は瞼を開いた。


 室内、というのはわかるがここが一体どこなのかはわからない。

 どちらかといえば質素な部屋の作りに見えるが……。


「――つぅっ。頭痛、か……。あれからどれくらい経ったんだ? 頭が痛くなるくらい寝たのなんて小学生の時以来だ……」



 この性癖に目覚めてからというもの、睡眠不足のあのほてりが、ふらつきが、どこか気持ちよく感じてしまって……引退後は毎日5時間寝て……たか?


  いや、それよりも少ないこともざらにあって――



「おはよう、堪平歩。気分はどう?」

「あなたは……」



 頭を押さえながらくだらないことを考えていると、女性が俺の顔を覗き込んできた。


 相変わらずの美人だが、その目のキツさといい、圧迫感のある声のトーンといい……可愛いと言うよりもかっこいいという表現がぴったりだな。


 なんとなくだが、モテるが結婚は遅いタイプに感じる。



「ん?ああ、そうね。そういえば自己紹介がまだだったわ。私は縄島真衣(なわしままい)。死の区、世田谷区の探索者でありここのチームの1つである『特別派遣隊』の1人。そしてあなたの先輩……いいえ、直属の上司でもあるわ」

「直属の上司……。チーム……」



 痛む頭で、思考を巡らせる。


 俺が知る限り探索者はある程度自由が効く職業のはず。


 パーティーを組むのは探索者活動としては定石だが、それを義務として課すもなかったはずだ。



 それなのにチームって……ここがその仕組みからして一線を画す場所だってよく分かってしまうな。



「つまり強大な敵と対峙する上で勝手に軍隊化してしまった、と。しかもそのことがばれると余計に嫌がる人間が増えるからひた隠しにしている、ということですか?」

「ふふ、察しがいいわね。でも安心しなさい。お国のために死になさいとは誰も言わないから」



 不敵に笑う真衣さん。


 その顔、多分誰も安心できない。



「それでここは?もしかして真衣さんの……」

「私の管理しているアパート。つまりチームの寮になるわ。オンボロだけど防音だけはしっかりしているから安心して」

「寮……。それってあの、もしかしてここは俺の?」

「堪平歩の部屋になるわ。もし何かここに持ってきたいものがあるなら……取りあえず自転車は貸し出しできるからそれで最寄り駅まで移動するといいわ。ただし……死んでもその保証はできないけど」



 それって外に出れるだけでほぼ軟禁だが。


 ……それだけここを探索する人間の確保に国は必死ということか。



「貴重品は持ってきてるので大丈夫です。ただ、家賃とか諸々が……」

「申請すればその分国から補助金がもらえるわ。それに外の分であれば借金とかもここで暮らしていることが確認できればチャラになる」

「それは……すごいですね。ん?外の分?」

「本当に察しがいいわね。でも、それは後でいいじゃない」



 俺が1つの言葉に引っ掛かりを感じていると、真衣さんは俺をベッドに押し戻した。


 そしてあの時犬耳女に股がった時と同じように俺にも馬乗りになってくれた。



「真衣さん?」

「それよりも今はその身体、そのスキルを存分に楽しむのが先。ずっとずっと我慢していたんだから。……まさか丸2日も待たされるなんて思ってもみなかったわ」



 真衣さんは掛け布団を剥ぎ、俺が着させられていたシャツのボタンを外し始めた。



「あの……。俺なにを待たせていたんでしたっけ?」



 この状況から起こり得ること……それは身体を重ねることだと思った俺は、真衣さんが行動をやんわりと止めてくれるような言葉を急いで考え、吐いた。


 というのも会って間もない人とそういうことをするのは、いくら俺が変態だからとはいえ気が引けるから、それと流石に初めてをこんな風に捧げる勇気がなかったから。


 この点はMだろうとSだろうと関係なく断る理由になり得るはずだ。



「なにって……お仕置きに決まってるでしょ。気絶する前そう伝えたのを忘れたのかしら?」

「それってその……服を脱がす必要はあるんでしようか?」



 こんなにもお仕置きの内容を聞くのが怖いと思ったことはない。



「……。あなたまさか変なこと考えてた?」

「え?」

「まだ若いもの、期待しちゃうのは分かるけど……。私はそんなに軽くないわ。それに、それをすることに利益を感じなければしてあげようとは思わない。こう見えてその辺り冷静な女なの、私」

「ですがお仕置きそのもの自体は、利益のあるものではないですよね?」

「そんなことないわ。欲求を満たせるし……この黒い痕で、私は強くなることもできるから」

「黒い痕……」



 俺は自分の身体を見た。


 すると目が覚める前よりも痕は多くなっていた。


 そういえばこれって……。



「鑑定の結果、これは経験値であることが確定。私はそのスキル名を知った時から分かっていたけどね」

「経験、値……。それってこんな風に具現化されていいものじゃないですよね?」

「そう。だからこそこのスキルは希少で……私はこの身体が欲しいと思ったのよ」

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