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11話 撤回と撤退

「ちっ。あんたも気づいていたってわけ?はぁ……。いくら仲間が殺されたからってわざわざ姿を見せるなんておかしいと思った」

「それはこっちの台詞ね。いつもは弟に全てを任せるお前がここに出てくるなんて……。予定外だったが、今なら互角……いや、それ以上に戦ってやることもできると思うわよ」

「減らず口を……。弟をいびってばかり、逃げてばかりのデカ乳しか取り柄のない女がさぁ……。殺しちゃうよ?」

「出きるならどうぞ」



 まるで火花が散っているかのように2人の視線はぶつかった。


 そして辺りに静けさと緊張感が漂ったかと思うと、犬耳女が一歩先に動いた。



 さっきとは違い目で追うことは出来る。

 だが、反応することはできない。



 それだけのスピードで犬耳女はスーツの女性を蹴り跳ばしにかかる。



 ――ごっ。



 しかし、その蹴りは同じように前へ出されたスーツの女性の脚によって防がれ、骨と骨のぶつかる痛々しい音が鳴った。



「くっ……。前はへっぴり腰で……全然前に出てこようとしなかったくらい、私の方が肉体の強度は上だったのに……」

「今は同じね。でも私の真骨頂はあくまでこっち。やっとだわ……やっとワンちゃんを躾してあげられる」

「な、めるな……人間の、くせに!!」



 犬耳の女はまたもスーツの女性が仕掛けるよりも早く次の一手に打って出た。


 それは単純明快で、その鋭利な爪による刺突攻撃。


 あくまでスキルを使った攻撃は仕掛けない。



 切り札として温存しているのか、それとも攻撃系ではないのか……なんにせよ、頭に血が上っている今が好機であることに違いない。



「遅いわね。こんなものだったかしら?」

「ちっ」



 スーツの女性は犬耳女の攻撃を見た上で優雅に回避。


 多少肩の辺りが斬られ、白い下着の紐が見えてはいるが、出血はない。



「今度はこっちの番ね」

「うっ……速――」



 スーツの女性の手に握られていたのは長く黒い鞭。


 それは凄まじい勢いで犬耳女の手を叩いたかと思えば、そのまま巻きついた。



 ――ドンッ!


 


 そして勢いそのままに犬耳女は地面に叩きつけられ、スーツの女性はそこに馬乗りになった。


 なんとも羨ましい……。



「私の上に乗るじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「あはははははははは!! いい声でなくワンちゃん、大好き。でもこうしたらもっとよく鳴いてくれるかしら?」



 スーツの女性は鞭の両端を両手で握ると犬耳女の首に引っかけた。



「う、ぐ……。で、めぇ……。ゆるざな……ぜったい」

「許して欲しいなんてこれっぽっちも思ってないから大丈夫。それに、もうすぐあなたは私のもの。その身体は命令に従うしかなくなるわ」



 苦しそうな声をあげながらボタボタとよだれを垂らす犬耳女。


 よく見れば今締め付けられている所よりも少し上の辺りに焼き印のような痕がうっすらと――



「姉貴っ!!」



 その痕に意識を奪われていると、突然スーツの女性の背後に犬耳男の姿が現れた。


 やはり高速移動じゃない。


 なにか空中に切れ目のようなものが、微かにだが見えた。



 これが奴らのスキルか。

 強力だが、その距離は少し遠すぎたようだ。



「な!? お前は!?」

「痛みの嗅覚が良すぎて……勝手に身体が、な」



 そこに犬耳男が現れたと同時に俺の身体からは自然と前へ押し出されていた。


 不格好な体勢で、でもそれなりの速さで駆けた脚はスーツの女性と犬耳女の横を颯爽と通りすぎると犬耳男の元へ飛び込んだ。


 そしておそらくスーツの女性を食いちぎろうとしたであろう、犬耳男の牙は俺の首筋に突き刺さった。



 これまでとは比べ物にならない痛み。


 気持ち良すぎて……意識が飛びそうだ。



「流石にそれはまずいか――」

「退けっ!!」



 ふらふらと倒れ込んでいく身体。


 それでもスーツ姿のやや高めのトーンで発せられた声と犬耳女の乱暴な一言が気になって俺は必死に振り返った。



 すると一瞬の隙をついて犬耳女はスーツの女性を払い、蹴り飛ばしていた。



 さらにこれをガードすることも間に合わなかったようで、スーツ姿の女性は苦悶の表情を浮かべていた。



 形勢は一気に逆転。



 最悪の展開へと変わっていたように思えたのだが……。



 ――シュンッ!



 甲高い、機械音にも似た音と共に犬耳女はその場から消え去った。



 ――ドン。



 そしてそれを見ながら俺は地面に着地。顎を強打。


 俺の視界はぼやけたが、それでも目の前に綺麗な脚が2本そこにあったことは分かった。



「私を助けようとしてくれたのか?まったく、後輩のくせに生意気なことをするもんだ。……ありがとう」



 優しい手の感触が頬を伝い、俺の視線にはスーツの女性の凛とした顔が映った。


 こんなにも荒い映像だっていうのにこんなにも綺麗に見えるなんて……やはりとんでもない美人。



 だけど、優しすぎるのは解釈不一致――



「とでも言うと思ったか、馬鹿。弟犬の気配は察知していた。茶々が入らなければ、あの犬女は捕まえることができたというわけね。だから……お仕置き決定。その目が開いたときが楽しみだわ」



 前言撤回解釈一致過ぎて、起きるのが……た、のし、みだ。

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