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ラスボスのオマケになりまして~極東に聖邪は集う・外伝~  作者: まんぼうしおから


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第四話・必然とは果たして

 必然だった。


 そんなこと言われても飲み込めない。

 その一言で納得できるほど、俺は純粋でもなければアホでもない。

 中途半端に知恵がある。

 素直に「そっか、必然ならしょうがないなあ」なんて受け入れるわけねーだろ。


「でも、俺は自分で言うのもなんだけど、特別な才能とかないし、見た目だってそこそこだよ。身体能力も、普通より少し上かなって具合でさ」


 謙遜とかではない。

 本当にそのくらいなんだ。

 中の上って辺りだね。頑張れば上の下にまで手が届くかなって感じの。


「そんなささいな優劣に意味はないね。しょせん、私から見れば誰も彼もが五十歩百歩。天才も凡人も無能も誤差の範疇さ。意味がない」


「凄いこと言うねお姉さん。だったらなおさら、俺である必要なくない?」


「キミでなきゃ駄目なのさ」


 そこまで言うと、彼女は二個目のドーナツを食べ終え、麦茶を一気飲みした。


「そんな風に言われると、なんだか熱烈に口説かれてるみたいなんだけど」


「その表現はあながち間違いじゃないね。私がキミのような者を探し求めていた──これは確かなことであり、なにより優先すべき事柄だ」


「なんでそこまで」


 理由がさっぱりわからない。

 そろそろ、自己紹介も含め、何もかも教えてくれないだろうか。

 まだ俺はあんたの名前すら知らないんだよ。まあ俺もまだ名乗ってないけどさ。


「……そうだね。キミに信じてもらえるかどうかわからないが、私は最初──」


「是良」


「ん?」


「これよし。岸辺是良(きしべこれよし)っていうんだよ、俺の名前。まだ言ってなかったよね」


 この怪しげな女性に個人情報はあまり教えたくなかったんだけど、こうして自宅まで招待したんだから、もう隠す意味もない。

 だいたい面が割れてるんだから隠しようがない。


 で、名乗った。


「そうか、是良か」


「仲のいい奴らからは、ヨッシーって呼ばれてるよ」


「いい名前だな。覚えておこう。じゃあ今度は私が名乗ろうか。……いや、よくよく考えると、同胞うんぬんの話よりも、まずそうするべきだったね。私としたことが」


 彼女は、コホンと、軽く咳払いをすると、


「ゆらら。漢字じゃなくそのままの、ひらがなのゆらら。それが私の名前だ」


「名字は……」


「ない。嘘じゃないよ。本当にないのさ」


 本当なんだろう。

 名は教えたのに姓は教えたくないとか意味不明だからな。

 でも、日本で……いや、この現代社会で姓が無いとかあるのか……?

 考えにくいことだ。


 まさか戸籍も無いとか言わないよな?

 そうだもしても、いくらなんでも人権くらいはあるだろ。それすら無かったら恐ろしいぞ。どういう環境で生きてきたんだってことになる。

 もしや裏社会の人間なのか?

 出生届を出されてない、存在しない扱いの人間だとでも?


 ヤバい。

 聞けば聞くほどヤバさが増してくる。


「ゆららさんね」


「ゆららちゃんでも構わないぞ。んー?」


「んじゃ、お互い名乗りも終わったことだし、改めて教えてもらおうかな。どうしてゆららさんは俺みたいな奴を探してたのか──その理由をさ」


 どんどん怖くなってきてるけど、だけどもう後には引けない。

 名前まで教えたんだから。


 きっと、我が家にお邪魔させた時点──いや、あの見知らぬ路地裏で肩を組まれた時に俺の命運は決まっちゃっていたのかもな。


「理由か。そうだね、その話の途中だったか。それは一言で言うなら──自分探しってやつかな、うん。そうとしか言いようがない。そのために仲間を探していた。私だけではどうにも先行きが見えなくてね」


 なんか、将来の不安をこじらせてスピリチュアルな方向に行った人みたいなこと言い出したぞ、この姉ちゃん。


「……私はね、他人に語れるほど、自分について詳しくないんだ。思い出や経歴を語ってくれとか言われたら頭を抱えてしまう、そのくらい深刻なレベルでね」


「よっぽどじゃん」


「だからキミに教えてもらおうとしたのだが……」


「え? それって、どゆこと?」


 変なこと言ったな。今に始まったことじゃないが。


「それについては後から話すよ。……最初に意識が目覚めたときは、何ていうのかな……とても大きな試験管というか、カプセルのようなものの中にいてね。カプセルの中は青っぽい液体に満たされていた。心地よかったよ」


 なにそれ。

 急にSFっぽい要素を告白してきたぞこの姉ちゃん。


「気持ちいいから、そのままその液体に浸ってうとうとしていたんだけど、妙な音がしてね」


「……どんな音だったわけ?」


「争ってるような音とか、爆発してるような音とか、銃声みたいな音とかだね。そうしていたら、不意に水の流れる音がして、あれよあれよという間に液体がカラになってさ。居心地が一気に悪くなったよ。それで、うたた寝する気分も失せて、カプセル割って外に出たんだ」


「……………………」


 言葉に詰まる。

 こんな話を聞かされても、どう返していいのか。

 その、女性型タイ○ントみたいな話、本当にあんたの過去の話なの? もしかしてあんた生物兵器なの?


「カプセルの外は、いかにも研究施設って感じでね。様々な機械がそこらにせわしなく設置されてて、いくつものケーブルやパイプなどが、壁や床や天井に伸びていた」


「そ、それから?」


「なんで液体に浸かっていたか、全く記憶にない。自分がどこの誰かもわからない。自分の意思で入っていたのか、誰かに入れられたのかの判別もつかない。詳しい事情を聞こうにも人っ子一人いない。しかも素っ裸ときてる」


 今もたいして裸と変わらないけどね。


「知識はある。常識もそれなりに。わからないのは、自分の過去とこの場所についてだけ」


「……まあ、そこまで聞いたら、後のことはなんとなくわかるよ。恐らくだけど、その施設に何者かが殴り込みかけて、施設の関係者と大乱闘してる……そのどさくさ紛れに逃亡したんでしょ?」


「いやそれがさ」


 アッハッハと、黒髪の美女が笑う。

 ネグリジェの胸辺りの布を持ち上げている、大きなふたつの膨らみが揺れる。


 ……あの、目の毒だから、ちょっと止めてほしい。まじまじ見れるほど俺は大人でもなければエロガキでもないんで……。


「? どうしたんだい、眼をそらして」


「いや何でもないです。それよりどうぞお話を続けて下さい」


「……それで、キミはどさくさ紛れと言ったけど、そうでもなくてね。私こそが渦中の人物だったのさ」


「あー、あんたが目当てだったと」


 いよいよじゃん。

 こんなのいよいよバ○オじゃん。


「どうしたものかと迷っていると、二人組の男が現れてね」


 その二人はゆららさんを見るなり「チッ、起きてやがったか!」「構わん、眠っていようと目覚めていようと、多少手間がかかるだけだ」とか言って、刀や銃で襲いかかってきたらしい。

 ……なんだろう、急にバ○オからD○Cになったぞ。いきなりの路線変更。


「それで、どうなったの?」


「どうもこうも、私がこうして無事なのだから、それでわかるだろう?」


 なるほど。

 そいつらはゲームオーバーになったらしい。合掌。

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