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炎神少女は、歪んだ世界に火をつける  作者: ぱぱんむ
第三章 エルフの里編
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第五十一話 神罰戦争

「ウィアード対、私ら異種族の戦争――『神罰戦争』なんて呼ばれてるがな。

その苛烈な戦いの中で、奴につく人間が少なかったこともあって、数の上では私たちが大きく上回っていた」


ミリラーネは静かに語り出す。


「だからこそ私たちは優勢だった。少なくとも、最後まではな」


少しの沈黙。ミリラーネは僅かに目を細めて話を続ける。


「ウィアードを追い詰め、私、スイレン、ヴォルガレの三人で、決着をつけるための戦いに挑んだ」


声に、ほんのわずかな熱が混じる。


「結果は……知っての通り、私たちの敗北だ。だが、完敗じゃない。奴がラグルスの力を取り込んでいなかったようでな。互角――そう言っていいほど、拮抗した戦いだった。」


ミリラーネは一度、言葉を区切る。


「……ただな。そこで私とスイレンがしくじった。深手を負って動けなくなっちまったんだ。無事だったヴォルガレが一人でウィアードを引き受け、私とスイレンを下がらせた」


自嘲するように、口元が歪む。


「もちろん、私としては撤退する気なんてなかったさ。だが……意識を失っちまってな。

 気づいた時には、近くで待機していた仲間に運ばれていた」


ミリラーネは、視線をわずかに上げる。


「ここから先は私も聞いた話になるが、ウィアードは、ヴォルガレの首を携えて戦場となっていた神殿から現れたらしい。そして城下にいた異種族たちの前で勝利を宣言した。

 私とスイレンを引き渡せば、手打ちにしてやる――そう言ったそうだ」


ミリラーネは鼻で小さく笑う。


「だが、それに対して私たちの仲間は決死の抵抗を選んだ。ヴォルガレとの戦いで、ウィアード自身も満身創痍だったらしくな。周囲の異種族を排除する頃には、私たちを取り逃がすことになった」


「その後は……ラグルスが姿を消した影響もあって、魔族どもの動きが活発になったようでな。ウィアードも、私たちだけに構ってはいられなくなったんだろう。本格的な追撃は、結局してこなかった」


ミリラーネは少しだけ視線を逸らして続ける。


「こっちとしては、すぐにでも再戦を挑みたかったが……ヴォルガレ抜きでウィアードを殺るのは現実的じゃなかった――あいつが、私たち三人の中で一番強かったからな」


「だから、防衛に力を入れるしかなかった。

 その結果、人間、異種族、魔族が妙な拮抗状態に陥っちまって……。

 小競り合いはあれど本格的な戦争も起きず、気づけば千数百年――」


「敵も取れずに、だらだらと生き延びちまってたわけさ」

________________________________________


ミリラーネの話が終わり、暫しの沈黙が流れる。


(ヴォルガレ……)


セリアは、心の中でその名を反芻した。


(たぶん、獣人の守護者だよな)


知らない名前ではあったが、以前レティシエラから聞いた話を思い出す。

獣人の守護者が戦死したことで、戦争に決着がついた。そんな内容だった。


《……そうか》


ラグルスが短く応じる。そしてわずかな間を置いて続けた。


《概ね予想通りだな。だが当初想定していた条件を考えれば、

 これは、我らにとって追い風と呼べる展開だろう》


「まあ、そうだろうな」


ミリラーネが、ラグルスの言葉に頷く。


「正直に言えば、ウィアードがラグルスの力を取り込んでいたら、私やスイレンもあそこで死んでいた。

 奴が人間以外に対してどこか冷めた感情を持っていることは、精霊術で把握していたが……」


ミリラーネは、少しだけ眉を寄せる。


「まさか、神の力そのものを取り込むことすら拒んでいるとは、思ってもみなかったぜ」




「――ま、それはそれとしてだ」


ミリラーネは、話題を切り替えるように言葉を区切り、そのままセリアへと視線を向けた。


「セリア。私はお前が気になってしょうがない」


「な、なんだ!?」


思わず素っ頓狂な声が出る。


隣では、レティシエラも反射的に身を強張らせ、ごく僅かに肩を跳ねさせていた。


「お前も同じはずだろう?」


ミリラーネは構わず続ける。


「間違いなく、私が気になっているはずだ。最初にお前を見たときに確信したんだ。

――私と、同類だってな」


一瞬の沈黙。


「……そういうことか」


セリアはようやく合点がいったように、肩の力を抜く。


「いきなりで吃驚したよ。でも、そういう意味なら……わたしも、すごく気になるね」


「いいね、いいね。そうこなくっちゃなあ」


ミリラーネは満足そうに笑った。


《……程度は考えるのだぞ》


呆れたようなラグルスの声が、割って入る。


「もちろん、分かっているさ」


そう言ってから、ミリラーネは今度はレティシエラに向き直った。


「レティシエラ。悪いが、『鍛錬場』の準備を頼む」


「……あっ! は、はい!」


鍛錬場という言葉で、レティシエラもようやく状況を理解したようだった。


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