表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎神少女は、歪んだ世界に火をつける  作者: ぱぱんむ
第三章 エルフの里編
PR
51/65

第五十話 守護者ミリラーネ

《相変わらず、不敬だな。ミリラーネ》


そう答えるラグルスの声は、どこか普段よりも柔らかかった。


「はっはっはっ! 懐かしいだろう?」


ミリラーネは豪快に笑うと、レティシエラへと視線を向ける。


「ご苦労だったな、レティシエラ」


「恐れ入ります。ミリラーネ様も、ご足労いただきありがとうございます」


「気にするな。ラグルスと聞いて来ないわけにはいかんさ」


そう言ってから、ミリラーネは改めてセリアへと目を向けた。

数秒、全身を品定めするように視線が走る。


(……なんだ?)


その視線に、セリアはわずかに警戒の色を浮かべる。

だがそれを察したのか、ミリラーネはそれ以上何も言わず、くるりと踵を返して城門の方へ歩き出した。


「立ち話もなんだ。中へ案内しよう」


歩きながら、ミリラーネは首だけを振り返る。

細められた目が、どこか楽しげに光っていた。


「――どうしてそうなっているか。ゆっくり聞かせてもらうぜ?」

________________________________________


門を通り抜け、ミリラーネを先頭にセリアたちは里の内側へと足を踏み入れた。


そこには、想像していた以上に広がりのあるエルフの里があった。


直径五メートルはあろうかという巨木がいくつも立ち並び、その幹には螺旋状の階段が取り付けられている。

階段は枝へと続き、その先には、木と一体化するように木造の建物が連なっていた。


「……なあ」


周囲を見回しながら、セリアがふと口を開く。


「なんでエルフって、木の上に建物を作るんだ?」


先頭を歩くミリラーネは、歩みを緩めることなく答える。


「エルフは皆、精霊の力を扱える」

「精霊はどこにでもいるがな、特に多く宿るのは植物だ。

 より近くで暮らすことで、精霊との繋がりを強く保とうとしてるってわけさ」


「なるほどね。じゃあ、エルフは人間の街にいるより、森の中のほうが強いってことか」


セリアが納得したように答える。


「劇的に変わるわけじゃない。だが、力を引き出しやすいのは確かだね」


ミリラーネは少し自嘲気味に答えながら続ける。


「これも、人間に対抗するための小細工ってやつさ」


(……そうか)


セリアは胸の内で呟く。

この里は、ずっと人間と向き合い続けてきたのだ。


「まあ、最近は――」


ミリラーネは少しだけ声の調子を変え、軽く笑った。


「この私に恐れをなしたのか、人間どもはさっぱり姿を見せなくなったがな」


それ以上、その話題を深めることはなかった。


それからしばらく歩き、周囲の巨木と比べてもひときわ大きな一本の木の前に辿り着く。


空へ向かって真っ直ぐに伸びる幹。

枝葉は天を覆うように広がり、その根元には、自然と人が集まった痕跡が残っていた。


「ここが、この里の中心だ」


ミリラーネは足を止め、見上げるように言う。


「私たちは、この巨大な木を『ユグドラシル』と呼んでいる。

 ……まあ、周りの木より少しデカいってだけで、別段深い意味はないがね」


そう言ってから、親指で上を示した。


「上に集会所がある。そこで、ゆっくり話をしようじゃないか」

________________________________________


長い螺旋階段を昇りきった先、他の建物より二回りほど広い一棟の建物に辿り着いた。


「ここだ」


ミリラーネは立ち止まり、肩越しに振り返る。


「特に飾り気はない。中に入っても期待するなよ?」


そう言って、集会所の扉を押し開けた。


中は広さの割に、質素で装飾らしいものは見当たらない。

中央には長机がいくつか並び、その周囲を囲むように木製の椅子が置かれている。


ミリラーネに促され、セリアとレティシエラはそれぞれ椅子に腰を下ろす。


ミリラーネは二人を見渡し、場を区切るように言う。


「よし。それじゃあ聞かせてもらおうか。ここに至るまで、何があったのかを」

________________________________________


《――こちらの話としては、これで終わりだ》


ラグルスが、自身が封印されてから現在に至るまでの経緯を語り終える。


ミリラーネは、少しだけ顎を引き、


短く――


「……そうか」


それだけを口にした。


沈黙が落ちる。少しのあいだ、集会所には誰の声も響かない。


やがて、ミリラーネの口の端がゆっくりと吊り上がった。


「くっ、くく……」


押し殺すような笑いが、喉の奥から漏れる。


「私も、しぶとく生き延びてきた価値があったってもんだ。

ようやく……ウィアードの奴を、ブチ殺せる機会がやってきたわけだ」


「それと」


ミリラーネは、ふっと視線を切り替える。


「セリア。お前には礼を言っておこう。レティシエラを救ってくれて、ありがとう」


「礼なら、もうレティから直接もらってるさ。それに……わたしが、そうしたかっただけだよ」


「そうかい」


ミリラーネは短く笑う。


「なら、これ以上は野暮だな」


《こちらの話は終わりだ。次はミリラーネ。お前の話を聞かせてもらおう》


ラグルスが、静かに会話へ割って入る。


「ああ……そうだな」


ミリラーネは背もたれに体を預け、天井を見上げる。


数秒の沈黙。そしてまた前を向き答える。


「レティシエラから、ある程度は聞いてるんだろ?だったら、きっとそのまんまだ」


口元だけで笑い、続ける。


「ラグルスの話と違って、こっちはたいして面白くもない話さ」


ミリラーネは当時を思い出し目を細める。

二千年近く前の出来事だが、今でも当時を鮮明に思い出すことができた。


ミリラーネは少しだけ視線を下げ、語りだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ