表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎神少女は、歪んだ世界に火をつける  作者: ぱぱんむ
第二章 リレンヌ篇
PR
25/62

第二十四話 街

《駄目だ》

ラグルスはきっぱりと言い切った。


《これから外界で活動する上で、毎回先ほどのようなやり取りが発生しては面倒だ》


「いや、そうだけどさ……。元をたどれば相棒のせいだろ? わたしの服、作ってなかったじゃないか」


《仮に我が服を作っていたとしても、百年は耐えられまい。ましてお前が炎を纏えば、たちまち燃え尽きるだろう》

《さらに言えば、迷宮の魔物の毛皮を使って服を作ることもできたはずだが?》


「じゃあ、それを言ってくれよ!」


《あの迷宮で毛皮を纏う必要性は感じなかったものでな》


「はあ〜……これじゃあ露出狂みたいじゃないかよ。脱いで興奮するわけじゃないけど、服は着ていたくないなんて……」


《このまま服を着なければ、『みたい』ではなくそのものだがな》


(こいつ……)


久々にラグルスの煽りに苛立ちを覚えつつも、セリアは話題を変えた。


「なんか、ここの人たち、優しいな。それに街も平和だ……」


窓の外では、街路を人々が行き交っている。

屋台を開く者、馬車を引く者、井戸で水を汲む女たち。

日常の音がゆっくりと広がっていく。


「……案外、上手くやってるのかな。ウィアードのやつ」


《まだ判断するのは早い。……だが、少なくともこの街は、最低限の秩序を保っているようだな》


「取りあえず、今日のところは寝るとしますか」


《そうだな。明日から本格的に情報収集に努めるぞ》


「了解」


 セリアは簡素なベッドに身を投げた。


「はぁぁぁぁ〜〜」


《なんだ、その気持ちの悪い声は》


「いいだろ!いままで洞窟の岩の上で寝てたんだぞ。ベッドに転がったら、声ぐらい出るだろ!」


《その粗末な寝台でそこまで感動できるとは、安上がりなものだな》


「こっちは百年、岩の上で寝てたんだ。どこだって最高級品の感覚で寝られるさ」


そう言って布団を被る。


「……」


「……寝るときくらいは、服、脱いでもいいよな?」


《……好きにしろ》

ラグルスは呆れたように答えた。

________________________________________


翌朝。

窓から差し込む日差しで目を覚ます。これは、百年間なかった感覚だった。


(明るい……!)


ただの太陽の光。それだけなのに、セリアにとってはまだ新鮮だった。


「よしっ! 今日は街を見て回るぞ!」


――コンコン


小屋の扉をノックする音が響く。


「すみません! 起きていますか!」


その声に聞き覚えがあった。昨日の若い門番だ。


「あぁ! さっき起きたとこだ!」


「そうなんですね。入ってもいいですか?」


「どうぞ」


「失礼します!」


ガチャ、と扉が開いた瞬間――


「うわあああ! す、すみません!!」


若い門番は顔を真っ赤にして、反射的に背を向けた。


「ん……? どうした?」


《お前、また服を着ておらんぞ……》

ラグルスが小声で指摘する。


(そういや寝る前に脱いだんだった……)

「悪い。今着替えるよ」


セリアは慌てて服を掴み、手早く着替えた。


「で、要件はなんだ?」


「は、はい。昨日、記憶がないとおっしゃっていたので……その、これからどうされるのかを確認してこいと、上から言われまして」


「ああ、そういうことか。取りあえず、街を見て回ろうかなって思ってるよ」


「そうですか。……えっと、その、お金とかはお持ちですか?さすがに、その門番の制服のままというわけにも……」


「……お、金?」


セリアはきょとんとした顔で、自分の服と手元を見下ろす。

持ち物といえば、ネスヴィラからもらったネックレスひとつだけ。

当然、金など持っていない。


「やっぱり、持ってないんですね。たしか……気づいたら何も持ってなかったんですよね」


「あ、ああ。うん、まぁ、そんなとこ」


《また適当な返答を》


(しょうがないだろ、ほんとのこと言えないんだから……!)


「わかりました。それではこちらで少しですがお金をお貸しします」


「それと、僕がこの街を案内しますね」


「ほんとか!?それは助かるよ!」


「え、ええ。それでは外で待ってますので、準備ができたら出てきてください」


そう言って、若い門番は小屋の外へ出ていった。


「やっぱ、すごく優しいな!まさかお金貸してくれる上に、案内までしてくれるなんて」


《……監視だろうな》


「え?」


《素性のわからぬ裸の女が、無傷で現れたのだ。事情を聞いてもはっきりしない返答となれば、警戒するのは当然だろう》


「た、確かに……」


《今のところ、罪を犯した確証が無い故、表向きは『協力』という形で監視している――それが妥当だな》


「でも、こっちは文無しだし、街のことも知らないから、ありがたいことには変わりないだろ?」


《そうだな。だが、余計な言動には気をつけろ。特に今のアルマルドがどうなっているか不明な現状では、我らの素性や力を知られるのは避けるべきだ》


「じゃあ、神器や炎を使うってのは……」


《以ての外だ》


「まじかよ……」


(咄嗟に使いかねないから気をつけないと……)


《あまり時間をかけても怪しまれる。そろそろ出るぞ》


「……そうだな」


セリアは小屋の扉を開け外に出る。


「待たせたな」


「い、いえ。それでは、まずは……服を買いに行きましょうか」


セリアにとってはこの世界で生まれて百年。

ようやく初めての「人の街」へ繰り出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ