第2話 最初の転職と、異常な結果
「……職業一覧」
黒瀬悠真は、小さく呟きながら画面をタップした。
次の瞬間――
《職業一覧を表示します》
画面がスライドし、複数の職業が並ぶ。
・フリーター(現在)
・転売屋 Lv1
・デイトレーダー Lv1
・動画編集者 Lv1
・営業代行 Lv1
「……は?」
思わず声が漏れた。
あまりにも現実的すぎるラインナップ。
だが同時に――妙な違和感があった。
それぞれの職業の横には、小さく“スキル”と“補正値”が表示されている。
【転売屋 Lv1】
スキル:市場価格把握(小)
補正:利益率+15%
【デイトレーダー Lv1】
スキル:短期予測(小)
補正:勝率+10%
【動画編集者 Lv1】
スキル:編集速度向上(小)
補正:作業効率+20%
【営業代行 Lv1】
スキル:交渉補正(小)
補正:成約率+15%
「……ゲームかよ」
だが、心のどこかで理解していた。
これは――本物だ。
根拠はない。
それでも、なぜか“使える”と確信している。
(……どうせ試すなら)
視線が止まったのは、一つの職業。
【転売屋 Lv1】
「一番手っ取り早いな……」
資金はほとんどない。
だが、少額でも回せる。
リスクも比較的低い。
「……よし」
タップ。
《転職しますか?》
YES / NO
一瞬の迷い。
だが、すぐに消えた。
YES。
《転職中……》
《転職完了》
《現在の職業:転売屋 Lv1》
その瞬間――
頭の中に、何かが流れ込んできた。
「……っ!?」
思わず頭を押さえる。
大量の情報。
商品ごとの相場、需要、売れ筋。
今まで知らなかった知識が、“当たり前”のように理解できる。
「……なんだよ、これ……」
息を整えながら、スマホを握り直す。
試すしかない。
フリマアプリを開く。
適当に商品を探す――そのつもりだった。
だが、目に入った瞬間に“分かる”。
(これ……安い)
ある商品が、相場より明らかに低い価格で出品されている。
なぜかは分からない。
だが、“確信”があった。
「……いける」
躊躇はしなかった。
残っていたわずかな金で、その商品を購入する。
そして――数分後。
今度は、自分が出品する側になる。
頭に浮かんだ“適正価格”で、出品。
(売れるのか……?)
不安がよぎる。
だが――
「……え?」
通知音。
まさか、と思い画面を見る。
《商品が購入されました》
「は……?」
早すぎる。
出品して、わずか数分。
しかも、設定した価格はしっかり利益が出る金額。
(マジかよ……)
手が震える。
すぐに計算する。
仕入れ額と販売額。
差額――数千円。
たった一回で、これだけの利益。
「……嘘だろ」
だが、現実だ。
もう一度やる。
今度は、別の商品。
同じように“安いもの”を見つけ、仕入れる。
そして出品。
――また売れた。
しかも、今度はさらに早い。
「……なんだこれ……」
呼吸が荒くなる。
止まらない。
次々と見つかる“当たり商品”。
まるで、答えが見えているかのように。
そして気づけば――
数時間後。
「……え?」
スマホの画面に表示された金額を見て、言葉を失う。
所持金。
数万円。
「……増えてる……」
確実に。
着実に。
しかも、異常なスピードで。
(これ……本当に)
頭の中で、理解が追いつかない。
だが一つだけ、はっきりしていることがあった。
このシステムは――
「人生、変えられる……」
小さく呟く。
その声は、確信に変わっていた。
《経験値を獲得しました》
《転売屋 Lv1 → Lv2》
画面に、新たな表示が浮かぶ。
「……レベル、上がるのかよ」
思わず笑みがこぼれる。
絶望しかなかったはずの人生。
だが今、目の前には――
確かな“逆転の手段”がある。
黒瀬悠真は、スマホを強く握りしめた。
「……ここからだ」
全てを失った男の再起は、もう始まっている。




