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転職システム〜冤罪で全てを失った俺、職業を変えるたびに最強になる〜  作者: non


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第1話 全てを失った日と、転職システム


大学卒業後、大企業に入社し順調な人生を歩んでいた黒瀬悠真。


周囲からは「エリートコース」と言われ、将来を疑うことはなかった。


――あの日までは。


「黒瀬、お前ちょっと来い」


上司に呼ばれたのは、昼過ぎのことだった。


会議室に入ると、そこには人事部と見知らぬスーツ姿の男がいた。空気が重い。


「……何かありましたか?」


そう口にした瞬間、机の上に一枚の書類が滑らされた。


そこに書かれていたのは――横領。


しかも、金額は数千万円。


「これは……どういうことですか?」


「君がやったんだろう?」


冷たい声だった。


「やってません! こんなの俺じゃ――」


「証拠は揃っている」


被せるように言われたその一言で、言葉が詰まる。


提示されたデータ、ログ、口座履歴。


どれも“完璧”だった。


だが――そんなはずがない。


俺は、何もしていない。


「誰かが……仕組んで――」


「言い訳はもういい」


その瞬間、理解した。


これは、最初から決まっていたことだと。


俺を犯人にするために、全てが用意されている。


「……どうして俺なんですか」


震える声でそう聞いたとき、上司は一瞬だけ目を逸らした。


その反応で、確信する。


――俺は、邪魔だったんだ。


会社の不正に気づいてしまった“都合の悪い存在”。


だから切り捨てられた。


トカゲのしっぽのように。


「本日付で懲戒解雇とする」


その一言で、全てが終わった。



会社を出たとき、空はやけに青かった。


現実感がない。


ポケットの中でスマホが震える。


画面には、恋人の名前。


――助かった。


そう思ったのは、一瞬だった。


「ねぇ、ニュース見たんだけど……本当なの?」


震えた声。


「違う、俺はやってない――」


「でも証拠があるって……」


「それは仕組まれてて――」


言葉が、届かない。


沈黙のあと、小さく吐き出された一言。


「……最低」


その言葉は、ナイフみたいに胸に刺さった。


「もう無理。さよなら」


通話は、一方的に切れた。


それが最後だった。



数日後。


黒瀬悠真は、実家に戻っていた。


部屋の中は静かで、時間だけが無駄に過ぎていく。


「いつまでそんな生活してるの?」


母親の声が、扉越しに響く。


「ちゃんと次の仕事探しなさい。あんたもう子供じゃないんだから」


分かっている。


分かっているが、何もできなかった。


履歴書を書こうとしても、手が止まる。


“懲戒解雇”の四文字が、頭から離れない。


社会的に終わった人間。


それが、今の自分だった。


夜。


ベッドに倒れ込み、天井を見つめる。


(……なんで俺なんだよ)


答えは出ない。


そのまま、意識が沈みかけたとき――


スマホが、光った。


「……?」


通知は来ていない。


だが画面には、見覚えのないアイコンが表示されていた。


黒い背景に、白い文字。


《転職システム》


「……なんだこれ」


触れた覚えも、インストールした記憶もない。


だが、なぜか視線が離せなかった。


指が、無意識に画面へ伸びる。


タップ。


次の瞬間、画面が切り替わる。


《転職システムを起動しますか?》


YES / NO


心臓が、強く脈打つ。


怪しい。


明らかにおかしい。


だが――


(……どうせもう、何も失うものなんてない)


自嘲気味に笑い、指を動かす。


YESを押した。


《起動中……》


《ユーザー認証完了》


《黒瀬悠真 様を登録しました》


「……は?」


名前が表示された。


次の瞬間、画面に新たな文字が浮かび上がる。


《現在の職業:フリーター》


《転職可能》


《職業一覧を表示しますか?》


その表示を見た瞬間――


なぜか、確信した。


これは、ただのアプリじゃない。


(……これ、もしかして)


ゆっくりと、息を吐く。


そして――


「……やってやるよ」


もう一度、画面に触れた。


人生を変えるかもしれない、そのボタンに。


――全てを失った男の、逆転が始まる。


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