三十四話 重荷
「ユニークスキル……いや、待て、何で話した?」
ユニークスキル。
それは紛れもなく、特別なものであって、更に言えば迂闊に話すようなものではない。
実際に、ユニークスキルを持つと言う彼女は、自身で盗聴対策のスキルを使ったはずだ。
それは、紛れもなく、外部にもらしてはならないと言う事に他ならない。
だから、麻耶はともかく、他三人からしてみれば、全くの部外者である俺にそれを話すことも意味が分からなかった。
何も言わずに力を行使すれば良いはずだ。
ただ、その理由を明かすようにユニークスキルの所持者であり、今回のことの中心であるサチカは口を開いた。
「これが条件なんです」
「条件?」
俺はまたもや首を傾けた。
「スキル発動の条件です。対象の相手に、スキルの詳細とまではいかなくとも、効力の説明をする」
「まあ、麻耶が信用していると言う話は事前に何度も聞いてましたし」と、サチカは麻耶を見た。
俺もつられるように見たが、目を逸らされた。
ただ、そんな俺は、高く可愛らしい声に殴られる。
「え~!?私聞いてないよ!!」
克己だった。
小さい体をぴょんぴょんと揺らして、一人抗議デモを再現し始めた。
ただ、俺が反応するまでもなく、仲の良さもあるのだろう、らなが声を上げた。
「前々から、みんなで話してはいたんだけど、克己ちゃんはきっと言いふらしちゃうでしょ~。だから、内緒にしてたの~」
そんな言葉に、「え~」なんて克己が返せば、らなはそのデカいおっぱ……胸で、克己を抱擁して黙らせた。
とは言え、息苦しいと言った風ではなく、なんだがリラックスしたように克己の目はとろんとしていた。
そんな光景を目に焼き付けようと、俺がまじまじと見ていた時、麻耶に声が俺に掛けられた。
「元々、このスキル自体、パーティ内で、検証は進めてはいたんだけど、スキル使用条件のこともあって、なかなか進まなくて。そんな時、正時のことを思い出したから、そのことをサチカに話したの。正直、協会側にも教えていないから、説得には苦労したけど」
なるほどな。
内輪で内密に扱われてきた、ユニークスキル。
それを、その使用条件を満たしてまで、俺に使ってくれる理由。
それはきっと、譲歩による譲歩を重ねたものなのだろう。
それに、協会にも教えてないとなれば、それほどの代物か。
もしくは、ユニークスキル自体の危険性を考えての事か。
「取りあえず、麻耶を信じて、概要を話すと、先ほどの、条件を満たさないとこのスキルは使えません。ただ、このスキルは、恐らくその名の通り、世界にただ一つのものであるはずですが、その事実に反して、あまり強力なモノとはいえません」
まあ、確かに、当の本人であるサチカの言う通り、条件であるスキル内容の開示は、大きな弊害になるだろう。
自身が、レアスキルなんて比ではない、世界に唯一のスキルを持っていると言う、事実を晒すことはリスクとして大きすぎる。
「一応、スキル名は『レベル解析・鑑定』と言ったもです。ただ、効果は本当にレベルを見ると言うだけのものですので、使い勝手は、ものすごく悪いです」
ユニークスキルなんて単語を聞けば、憧れることもあるだろうが、よく考えてみれば、効果に反してリスクが多すぎる。
俺で言うチュートリアル武器とか、よりもひどいのではないだろうか。
俺の武器は、自衛をしてあまりある攻撃力を得ることが出来るが、彼女の場合希少なスキルを得たと言う事実だけで、メリットはほぼない。
スキルの譲渡は可能かは知らないが、付け狙われるリスクが余計に増えただけだろう。
俺のようなファーストと言う存在はレベルが確認出来ないわけだから、情報が洩れれば、そいつらが、自分のもとへ押し寄せないとも限らないし、実際ファーストと言う存在は手に負えない。
しかも、彼らを全面バックアップしているのが国である以上、強い奴らに目を付けられたでは済まない。
「では、あまり時間を掛けても、アレでしょうし、そろそろ、始めて良いですか」
「わかった」
俺は頷いた。
まあ、俺から取るアクションなどないのだから、別に準備も何もない。
俺の様子を見て、頷いたサチカは目に光を灯した。
きっとそれがスキルによる副次的な反応なのだろう。
そんなことの辺りを付けて、俺は待った。
だが。
「見えない」
サチカから出たのはそんな声だった。




