三十三話 麻耶のツテ
「レベルを確認出来るって、ホントか?」
麻耶からの言葉に俺は思わず聞き返した。
今のところ、俺の方でも調べてみたが、そう言った情報はなかった。
『鑑定』と言うスキルはあるようだが、どうやら他人のステータスを確認することは不可能だったはず。
ただ、そんな俺の半信半疑と言えるような様子に、麻耶はしっかりと頷いた。
「少なくとも、私の【ステータス】の確認は出来たから」
その言葉からは、第三者の存在が示唆された。
そう言えば、話の切り出しからして、レベルの確認を出来る人を探していたと言っていたことを考えれば不思議でもない。
「じゃあ、その人に合わせてくれるのか?」
「うん」
俺の問いにまたしても麻耶は頷いた。
そして、更に会話を交わして、実際にその人にアポを取った結果、次の土曜に一緒に行くこととなった。
そして、日は変わり、当日俺たちは二人並んで歩いていた。
こうやって歩くのも久しぶりな気がする。
そんなことを思っていた時、不意に麻耶は口を開いた。
「一つ言っておきたいんだけど」
「ん?」
「これから会う人の事は内密にして」
俺は、傾げていた首を更に傾けた。
内密。というのは、存在を隠したいとかそう言う事だろうか。
あまり、人目を晒したくない的な。
「それって、どういう?」
「詳しくは、後で話すけど。今は受け入れて」
「あ、ああ」
不承不承とまではいかなくとも、よくわからないことに多少の引っ掛かりを覚えながらも頷いた。
まあ、スキル蔓延る現代社会で、何処に耳があるかもわからないこの状況を考えれば、不用意に話したくはないのだろう。
それから、俺は公共交通機関を経由してとある建物についた。
「って、これ……」
「正時も来たことあるでしょ。協会」
見慣れた協会と呼ばれる建物だった。
それを見て固まる俺だったが、気にせず建物に入った麻耶に遅れまいと後を追う。
そして、カードをかざして奥へ奥へと進んでいく。
そうすれば、ホテルかの様にたくさんの扉の並ぶ通路に出る。
「ここは?」
「予約さえすれば、基本何でも出来る部屋」
「それって、色々と大丈夫なのか?悪用とか」
嫌な予感が働いてそう尋ねる。
ただ、麻耶はなんてもないように言った。
「全部の部屋にカメラ付いてるし大丈夫。音は記録されないけど」
「ふーん」
まあ、そうか。
そんなことを思っていると、不意に一つの扉の前で止まった。
カードをタッチして、ドアノブを捻る。
そして、部屋の中が見えると同時に大きな声が鼓膜にダメージを与えた。
「あーー!!麻耶ちゃんが彼氏連れて来た!!」
見たり、とばかりにこちらを指さす少女を見る。
そして、その後ろからおっとりとした声が聞こえる。
「克己ちゃん。落ち着いて~」
「だってだって!男の子に絡まれるたびに断っている麻耶ちゃんが男の子連れてるんだよ!」
克己と呼ばれた少女はおっとりした少女に反論する。
にぎやかだなと思っていたところで、もう一人奥から姿を現した。
「うっさいわね。……麻耶も、そこのお連れさんも早くは言ってください」
文句を垂れた様子とは裏腹に、優し気で丁寧な口調で入室を促した。
それに驚きながらも、歩みを進める麻耶に続き、そして、促された席に着いた。
暫くして落ち着いたのか、皆が席居座った所で、最後に現れた彼女が立ち上がった。
何をするのかと見ていれば、不意に手のひらが光り、それが部屋全体を包み込んだ。
不思議そうな顔をしている俺に気付いたのか、彼女は口を開く。
「……ああ、これは盗聴防止のスキルですよ」
なるほど。
【ステータス】と言うものを持っていないだけに知らないことが多い。
まあ、それよりも盗聴防止とは、麻耶が詳しいことを離せないと言ったことと関係しているのだろうか。
「じゃあ、取りあえず自己紹介しましょうか~」
俺が思考の海に身を沈めていると、不意におっとりとした声が聞こえて来た。
確かに、そうした方が良いだろう。
そう思い、俺も賛同した。
「はいはい!私からね!奈良尾克己十五歳!中三!」
中三にしては幼さを……いや、元気とと言った方が良いだろうか。
とにかく可愛げを見せて自己紹介をした。
彼女のツインテールはそのキャラクターによくあっていた。
「じゃあ、次は私ですね~丸井戸らなです~」
今度はおっとりな感じの娘が自己紹介をした。
包容力がありそう何て考えてみる。
「私は、桃木野サチカ。よろしくお願いします」
最後は、丁寧でありながら少しドライに感じる声でサチカと言う少女が名乗りを上げた。
そして、今まで黙っていた麻耶が口を開いた。
「それでなんだけど、この三人は私のパーティメンバーみたいなもの」
「ほう」
俺はそんな声を返す。
つまり、麻耶含め、四人のメンバーで彼女らはダンジョンゲートの攻略をしていると言う事だろうか。
俺の知らない所で、麻耶が元気にやってるのはなんだか寂しくも感じるが、別に付き合っているわけでもないのだから、こんなことを考えても無駄だろう。
そんなことを思いながら、一方で納得できる部分も多くあった。
どこがと言われれば、この行動そのものと言えばいいか。
一人でダンジョンには突っ込まず、安全の備え、今回で言えば仲間を同伴させる。
本来の麻耶であれば当然の行為であった。
ダンジョンゲートが出現した時に、何を思ったのか、彼女は単身で乗り込んだことがあったが、本来彼女は慎重を期すタイプであった。
それに、ああ見えて人とのかかわりが多い。
というか、コミュニティに属していることが多い。
「で、今回は、レベルについての話だったよね」
「うん。レベルを見れる人を紹介してくれる。そう言う認識で俺は来た」
俺がそう伝えると、彼女は頷いた。
「今回、合わせたかったのは、サチカ。彼女が、もしかしたら、正時のレベルを見ることが出来るかもしれない」
俺はちらりと、サチカを見た。
黒をベースにしたファッションに身を包む彼女は会釈をした。
ただ、そんな俺には気にせずに、麻耶は続けた。
「でも、今回、こうやって人目を気にして話しているのは、サチカのそのスキルがユニークスキルであるからに他ならない」
「へー……ん!?」
聞き流そうと返事をした俺は思わず喉を詰まらせる。
麻耶の口から出たのは、ネット小説ではあるある。
だが、それでも、俺が今までスキルにおいて聞いたことない単語だった。




