三十話 鵺
規則的な足音が連続する。
時間を置くことなく、それは四方八方から、近づいて、途切れた。
地面を強く蹴り、跳躍した故の物だった。
俺は、斧を振り回し、それらを切り伏せた。
地面に、鵺のような、奇妙な体を地面に叩きつけた。
「キメラ的な奴か?」
キメラと言うか鵺と言うか。
とにかく強そうな魔物だった。
俺は一人口から声を漏らしながら、魔石を拾った。
正式に試験を受けたことで、これを協会で引き取ってもらえるようになったので、収入も増える事だろう。
まあ、今までだって、施設自体は使えたのだが、魔石を引き取ってもらうのには正式なものが必要らしい。
魔石の色は緑だ。
色は倒した魔物によってランク付けされている節があるが、実際どうなのだろうか。
協会の情報にはきっとそう言ったことも載っているのだろうが、魔石についてなんてものは、とおの昔に疑問をもった存在すらも忘れていたために、調べることもなかった。
まあ、どちらにしても決して弱いなんてことはないだろう。
とは言っても、能力値の制限が取れたために力が増幅した今の俺では脅威にも感じなかったが。
そんな時だった。
不意に、俺は嫌な気配を感じ取り、脚を止めた。
周囲に、木を張り巡らせるもその正体は分からない。
だが、俺が探すまでもなく。そいつは目の前に現れた。
「コンニチハ。カワゾエマサトキ」
外国人特有、と言えばいいだろうか。
多少片言な日本語が俺に投げかけられた。
そして、気付いた。
すでに、懐に接近されていることに。
身体は小柄で、フードを深くかぶっている。
そして、わずかに見える髪の毛は、金色に輝くものだった。
染めているような色ではない。
地毛なのだろう。
そう決めつけさせてしまうほどの、決して意図して作り出すことはできないであろう色だった。
だが、そんなことを思うより前に、俺は武器を構えていた。
こいつはやばい。
そう思った。
強い。
俺よりも、いや、今まであった誰よりも。
レベルももちろんだが、体の動かし方からして全く別次元。
そして、何より、フードによって出来た影の奥底で金色に光る相貌は、飲み込まれてしまうほどに深かった。
少女は口を開く。
「聞こえなかったかしら。私は、コンニチハと言ったのよ」
一歩後ずさった。
そう気づいたのは、かかとで枝を踏んで音を鳴らしてから。
逃げなければならない。
今すぐに。
あ、れ…………?
いつの間にか、視界が一回転して、俺は地面に伏していた。
「ねぇ。聞いてる?」
そして、何かの拍子にフードが取れたのか、金髪の日本人離れした顔立ちの良い少女、いや、幼女とあらわすに相応しい顔が目の前にあった。
「…………っ」
「聞こえてるようね。それなら、言葉を返しなさいよ」
何か、不機嫌な様子を見せて彼女はそう言った。
そして、俺もやっと、落ち着いて状況が見えていた。
本能的にと言うか、レベルアップしたせいで卓越した俺の察知能力がうるさいぐらいに警鐘を鳴らしていた金髪の幼女であったが、どうやら会話がしたい様だ。
「えっと、河添正時です」
「やっとね。私はフィオナ・レンシャクノ、よろしく」
逆さまになった世界で、これまた逆さまになったフィオナと名乗った少女の差し出された手を握る。
そして、続けられた声に目を見開いた。
「同じ、最初の二十三人のギフト所持者の内の一人、仲良くしましょう」




