三十一話 名称
「なっ……!?」
俺は突然の情報に言葉を失う。
この幼女が、最初にギフトを与えられた二十三人のうちの一人だと?
「私たちは『ファースト』と呼んでいるけど」と彼女は俺に更に投げかけた。
「日本も同じ呼ばれ方をするの?」
そう言われると何て言ってるかを俺は知らない。
いや、白波瀬さんは、名称を世界基準で統一したとか言っていたな。
だがら、恐らく。
「ファースト、だと思う」
「そう」
彼女は短く返した。
ファーストと言うのは、きっと一番最初にギフトを得たことが由来しているのだろう。
なんて、考えて、そろそろ俺から話題を振った。
「……それで、そのフィオナ・レンシャ…レン何とかさんが何の用で俺を?」
「レンシャクノは日本語よ」
彼女は俺の問いを無視して、それより興味があったのだろう自身の苗字について解説する。
落ちていた枝で地面に「連尺野」と書いた。
これが田中とか鈴木だったら、俺だってひょっと来たかもしれないが、残念ながら、そんな珍しい苗字は知らなかった。
ただ、日本人の血が入っているなら、通りで、日本語が上手いわけだ。
【ステータス】で取得できる中には『言語理解』なるものがあると言うが、彼女にその方法はとることが出来ない。
「で、何をしに来たかと言えば、偶々見つけたからと答えるのが正確ね」
「偶々見つけただけなのに、俺の名前と顔が一致するのか?そもそも、すれ違ってもないだろ」
名前は、出回っているから良いとして、顔は特定されているにしても、実際に見かけるタイミングはなかったはずだ。
彼女とここに来るまでに間にすれ違っていたら、恐らく気付いただろう。
「私は特別目が良いの」
よくわからないことを言う。
それが彼女のギフトに関係している事なのだろうか。
「目と言うと?」
「私のギフトよ。それ以上は教えられないわ」
まあ、そうかと俺は納得した。
俺の場合あまり、特に隠れて使うことは最近ないが、彼女の国では、ギフトの情報を秘匿するように促されている可能性は高い。
国にとっての、戦力を誇示するわけでもないのに、さらすはずがないのだ。
俺は、分かりやすく【延長】と言う伸ばす能力だが、彼女や西峯京香の様に、恐らく言わなければ、目に見えない類のものであればそれは隠すべきだろう。
話は終わりか?
なんて思ったとき、彼女は思い出したように言った。
「あ、一つ、言いたいことがあったんだった」
「言いたいこと?」
俺は首を傾げる。
彼女は俺を見て薄く笑った。
「貴方がこれまで、何人のファーストにあったか知らないけど、このままだと、貴方、死ぬわよ」
「は?」
思わず出たのが、それだった。
死ぬ。
どういうことだ?
「別に、殺されるとかそう言う話じゃないけど。各国にいるファーストと比べて、今のあなたは弱すぎる。もし、何かが起こってファースト同士でぶつかった場合、勝ち目はないわよってこと」
俺があったのは、この少女と西峯京香。
そして、西峯京香は占いでしか知らないが、少なくとも、目の前にいるフィオナと言う少女に勝てる気はしない。
彼女が、世界的に見てもそれほど突出した存在でないと言うなら、俺はファーストと言う枠組みでは一番下の可能性も捨てきれない。
「日本は、三人、いえ、二人だったわね。ファーストがいるから余裕なのかしらないけど、各国は、無理やりにでもレベリングはもちろん訓練をさせてるわよ」
まあ、普通はそうだ。
圧倒的なアドバンテージを潰すような国は基本的にない。
だが、疑問はある。
「じゃあ、フィオナさんは、何で、日本にいるの?」
「さんはいらないわ。それと、質問の意図が分からない」
「そもそも、ファーストと言う一番情報の近くにいる人物を海外に渡らせる意味が分からない。というか、情報云々以前に、国同士のパーワーに影響しかねない人材を時刻から出す意味が理解できない」
先ほど言ったのだ。
各国は、ファーストの育成に躍起になっているのだと。
それならば、せっかくの成果を他国に渡すような真似はしないし。
第一、訓練なんかを受けているなら、それをサボって、海外に跳んでいるようなものだ。
ただ、フィオナは何でもないように返答した。
「言ったでしょう。各国はファーストの育成に力を入れているって。その結果、自分たちの監視の目すらも、掻い潜れるような人間を生みだしてしまった」
「つまり、正式な手続きをして入ってきていないと?」
そう言うことだろう。
フライトの予約をしていれば、恐らくストップがかかるだろうしと考えれば、密入国に等しいことをしているのではないかと予想はつく。
「別に、そこまで驚くことでもないと思うけど。日本だって、多くの人間に【ステータス】と言うギフトが発現した時、多くの密航者を見逃していたじゃない」
確かに、スキルを使って潜伏して、違法な薬物を運び込む者もいた。
そして、治安が一時期違法に入って来た者たちによって、悪くなっていたことも確かだ。
最終的にも、看破系のスキルを持つ者の配置をされて収まったが、そんなこともあった。
「まあ、でも、すぐ帰るわよ。別に祖国が嫌いなわけじゃないから。ちょっと、おばあちゃんの顔を見たかっただけだしね」
彼女はそう言った。




