二十九話 何を見るか
俺が、ダンジョン対策協会のアプリと発行されたカードを連携して、色々と試した翌日、いつものように朝ごはんを食べていた。
昼前に起きて来る。なんてことはないのだが、麻耶の両親は、早朝からすぐに動くタイプの人なので時間が合うことがない。
そのため、必然的に、麻耶とだけ顔を合わせることとなる。
「そう言えば、正時も試験受けたんだっけ」
「ん?昨日正式なカードが届いたんだよ」
そう言えば、誘ったはいいものの、すでに試験を受けていた麻耶に断られてからは、何も話していなかった。
気付いているだろうが、あそこで起きたことも話していない。
そのことで、話でもあるのか、そう思ったがどうやら違うようだ。
「じゃあ、正時、アプリで見たでしょ。大会の話」
「大会?ああ、ギフト所持者でどうのこうのするって奴か」
そう言えば、見たななんて思いながら、それがどうかしたのかと聞き返す。
「それがどうかしたのか」
「どうかしたのって……。正時は出るのか訊こうと思って」
「出ないかな。あまり興味もないし」
俺は本心を伝える。
事実興味がない。
別に強い奴と戦いたいなどと言う願望はない。
それに、チュートリアル武器を所持しているのを考えれば、俺もまだ狙われる可能性も高い。
それを考えれば、手の内は少しでも隠した方が良い。
ギフトだけじゃない。
戦い方の癖なんかだって、分析されれば足をすくわれかねない。
特に戦闘術をならったことがない素人であることも考えれば尚更だ。
俺は、そう返答を返すと、何故か残念そうな表情をした。
「私は、出るから」
「そうか。頑張れよ」
とりあえず俺はそう返した。
そして、時間は進み、俺はアプリで適当にあったダンジョンゲートを探し出して向かっていた。
一応、仕事だし、定期的に受けている。
そのうちの一つだ。
不登校である関係上、何か自分がしていると言う事実がないと辛いというものも大いにあるが。
「証明証を見せてください」
「はい」
俺は、カードを提示した。
相変わらず、通報が入れば、すぐに封鎖してくれている警官に挨拶をして俺はゲートに入った。
「洞窟型よりは視界が良いか」
前面に見える木々を見て俺はそう漏らした。
同時刻。
町中に現れたダンジョンゲートに入場する河添正時を密かに見る人影があった。
ビルの屋上からスキルを行使して視力の向上によりその様子を見ていた。
フードを深くかぶり、顔を隠してはいるが、体格は小さく、女性的な体つきをしている。
12から13歳の女児と言ったところか。
少女は小さく笑った。
「カワゾエマサトキ。最初の二十三人のうちの一人……」
彼の情報は十二分に得ているのか、そう洩らした。
そして、ビルから、一歩を踏み出した。
大けがでは済まないその高さから落下しようとも、気にもかけないその様子はギフト所持者さながらと言ったところだろう。
そうして、地面に着地した少女は、何でもないかのように歩き出した。
その歩みは、ゲートへ向かう。
ただ、そこを守る様に立ちはだからる警察官は止めることもなく、その侵入を許した。
いや、認識すらできずにただ立ち尽くしていた。




