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二十三話 Bグループ試験開始


 俺たちは、卯西さんについていくようにして移動した。

 移動中特に会話もなかったが、阿曽沼が来てから悪くなっていた空気は、少し軽くなっていた。

 談笑とは言わないが、情報交換をするだけでも、明るく振舞う皆のおかげでお通夜ムードと言うわけでもなかった。


「そろそろゲートが近いから気を引き締めてほしい」


 卯西さんがそう言って間もなく、ゲートが見えて来た。

 俺が攻略したダンジョン同様に空間の歪みにはそれを囲むように警官がいた。

 卯西さんが声をかけると、警官たちは道を開けた。


「では、これからダンジョンに入るから後衛と前衛に分ける。一次試験は、戦闘系と支援系で別れていけど、今回はその辺も考えてグループ分けされてるから」


 そう言って、彼は、俺たちを前衛と後衛に分けた。

 その結果、前衛、俺、西影さん、阿曽沼。

 後衛が、上谷内さん、安宍さん、京念さんになった。


 正直、阿曽沼と一緒に魔物と戦うのは気が引けるが、仕方がない。


「じゃあ、入るぞ」


 そう言って卯西さんに続くようにして、俺たちはダンジョンに入った。

 中に入ると、そこは洞窟のような造りをした場所だった。

 今まで経験してきたダンジョンよりも、チュートリアルを行った場所が一番似ている気がする。


 そんなことを思っていると、阿曽沼が声を上げた。


「結構、ダンジョンってのは窮屈なんだな!ジメジメしてるし、もっと草原とかが良かったぜ!」

「阿曽沼、声は下げてくれ」


 阿曽沼のものを考えない声量に俺は仕方なく注意をする。

 本当は口もききたくないくらいだが、これは試験だ。

 なら、連帯責任で落ちるなんてことはしたくない。

 ただ、そんな俺の言葉が気にいらなかったのか、阿曽沼は声を漏らした。


「あ?」

「魔物が音で寄ってくるかもしれないし。必要な連絡が届きにくくなる」

「ちっ」


 俺の説明に、一理あると思ったのか、阿曽沼は舌打ちこそしたが反論はしなかった。

 それに、実際に魔物をおびき出したのは、視界の先を見ればわかることだった。

 ダンジョンの奥から魔物の足音が聞えて来た。


 ゴブリンだ。


「ゴギャア!」


 緑色の皮膚で、石斧を持った人形の魔物だ。

 それが、五体、前方に見えた。


 俺は、瞬時に、斧を構えた。

 金と銀の斧ではなく、支給品だ。

 いつも使っている奴は、持ってきてはいるものの一応試験の決まりを守って使っていない。

 先陣を切ろう。

 ダンジョンに慣れた俺はともかく他のやつらは、そんなに動けないかもしれない。

 それに、活躍をすれば評価点に含まれるだろう。

 この試験は、強さで判断されるわけではなく、グループ内での活躍を見られるはずだ。


 そう思って地面を蹴ろうとして、突然、首根っこを後方に引っ張られる感覚と共に、目を見開いた。


「!?」

「どけ、邪魔だ」


 俺の襟をつかんで、後方に引っ張ったのは、阿曽沼だった。

 そして、彼は、剣を持って直進した。

 きっとそれは、高評価を得るためだろう。

 俺と同じようなことを考えて、先んじて動いていた俺の先を行こうとして、俺を突き飛ばした。


 尻もちをついた俺は、そんなことを推測した。


「おらっ!」

「グギャオ!?」


 そして、視界の端で、ゴブリンと剣で戦う阿曽沼を見た。

 だが、未だ一体倒しただけで、二体目に苦戦している。

 もはや剣など知らないかのように、剣を握った手で、相手を掴んで殴打する阿曽沼だが、なかなかダメージは通らないようだ。

 

 周りが見えてないのか、あっと言う間に、孤立して囲まれてしまった阿曽沼に皆が慌てた。

 後衛である三人が何とか、魔法やスキルを使って退路を作ったがそれでも、ギリギリで脱出出来た程度だった。

 そして、残った数体を西陰が倒して、何とかひと段落着いた。


 腰を下ろした阿曽沼は、がぶがぶと豪快に水を飲んだ。

 そして、それを見ていた上谷内さんは、注意を促した。


「阿曽沼君。あまり周りを見ずに今回みたいに孤立しないように気を付けてね。俺らも支援出来ないから」

「いや、あれは、マサトキクンが、いきなりつっこうもうとしたから、俺が言っただけっすよ」

「は?」


 俺はついに出てしまった言葉に内心慌てる。

 だが、そんな様子を外に出す前に、阿曽沼は機嫌を悪くして続ける。


「「は?」ってなんだよ。事実だろ?なんか、早くにギフトもらえたとかいうけど、俺らみたいに【ステータス】使えねぇんだから」


 今まで敢えて皆が触れなかった部分に彼は触れて来た。

 俺の名前で、最初にギフトを得た二十三人のうちの一人だと言う事は、皆が薄々気付いていたのだろう。

 それは、此処まで来る間や、自己紹介をしたタイミングでもわかった。

 ただ、河添正時と言えば、家が燃やされて、両親が殺されたことはすでにニュースで報じられている。

 当時から、関心を集めやすいギフトと関係がある事件だからこそ、皆がそれを覚えていた。

 だからこそ、ダンジョンに入る前に、連携を組みために、俺のギフトのあらかたの情報は教えたし、他のみなも主に使うスキルを共有したが、その時にも触れることはなかった。

 

「んだよ。スキルも使えないどころか、レベルも確認出来ないくせによ。お前が、だるいことするから、攻略に滞りが出て、評価も下がんだよ」


 心底迷惑そうに阿曽沼は言う。

 確かに、【ステータス】が使えない俺は、レベルを確認できない。

 だが、レベルアップをすでに試験前からしている俺は、戦力外とはならないはずだ。

 まあ、ただ、これ以上は問題が大きくなるだけなので、何も言わなかった。


 そんなこんなで、俺たちは休憩をやめて、脚を進めた。

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