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十七話 西峯京香のギフト


「なぜ呼んだのか、ですか?」


 俺の言葉を復唱するようにして、目の前に座る西峯京香は首を傾げた。

 そして、何でもないように笑って言った。


「別に深い意図があってお呼び建てしたわけではないですよ。私は単にもう一人いると言う最初のギフト所持者であるあなたとお話を──」

「建前はいりません。俺だって、こう分かりやすくされては、勘付きますよ」


 俺は、彼女の言葉を遮るようにしてそう言った。

 ここに近づくにつれて感じるのだ。

 俺を見ている者の気配が。


「この部屋だけ異常に警備が厳しい。少なくとも高レベルのギフト所持者が、五人は居る」


 恐らく隠密系のスキルでも使っているのだろう。

 だが、俺とのレベル差故か、わずかな違和感を感じる。


「ふふ、まあ、バレてしまいますよね。チュートリアル時点で私と同程度と考えれば、おかしなことではないです」


 そうだ。推測は簡単だ。

 それでも、というか、俺にバレても良しと考えて言る理由はなにか。

 きっと、この隠密たちは俺を対象にして隠れているのではない。


「まあ、お話したいのは本当なんですけどね。ですが、本題に入りたいと言うのならいいでしょう」


 彼女は、そう言ってから、俺に対面の椅子に座るように言った。

 大人しくそれに従う。


「では、まずは私のギフトについて話しましょうか」

「良いんですか?手の内を晒すような真似を」

「大丈夫です。他にバレない為の隠密でもありますし。それと、敬語はとってくれて構いませんよ。私は、癖なので気にしないでください」

「そう言う事なら、わかった」


 一応年上だし、初対面と言う事もあって敬語だったが、まあそう言うならと頷いた。

 敬語苦手だし、しなくていいならありがたい。


 俺の様子をみて、頷くと彼女はまた話し出した。


「私のギフトは【卜占】と言うものです」

「ぼくせん?」

「はい。まあ、占いですね」


 占い。

 てっきり、ギフトは戦闘系で固定化と思っていたが。

 いや、待て。というか。


「チュートリアルはどうやってクリアしたんだ?攻撃は出来ないだろう」


 俺の様に、武器指定が無いとは言え、攻撃に適したギフトでないのは確かだ。

 よく考えれば、俺の場合使っていても、使ってなくても、あんまり直接的に攻撃力に代わるわけでもないが、それでも、俺は生物学上は男なわけで、彼女と比べれば、筋力なんかはあるだろう。

 それを考えれば、彼女では結構キツイのではないだろうか。

 見た感じ、スタイルよくスラっとした体形だが、それで俺より筋力があるなんてことはないだろう。


「攻撃手段がないとおっしゃりたいのですね」

「まあ」

「その辺は大丈夫です。占いの効果を持ち合わせている【卜占】ですが、攻撃の能力も備えていますので」


 占いで、戦うなどとは想像がつかないが取りあえず、大丈夫ならよかった。

 まあ、そうでなければ、今ここにはいないか。


「話を戻しますが、今回お呼び建てしたのは、その占いに関することなのです」


 疑問が解消した俺は、純粋に耳を傾ける。


「私の【卜占】による占いの効果は任意で発動できるものではなく、ある時突然として頭の中に光景、あるいは音、単語と言ったものが浮かぶとういうものです」

「光景と音は想像がつくけど、単語と言うと?」

「例えばですが、Aと言う方がいたとして、その方が都内某所のビルから飛び降りて三日後なくなるとします」


 俺の、質問に対して彼女の口から出た例えは、思ったよりも生々しかった。

 だが、まだ、話の続きであるため黙って聞く。


「その場合、私の頭には『A』『都内』『ビル』『死』と言った単語が浮かび上がります。すると、そこから推測して、Aさんが都内のビルで死ぬのだなと言う、最低限の情報を得ることが出来ます。ただ、正確性で言えば、三日後と言う情報はないですし、死因もわかりません」


「占いである限り未来で起こると言う事くらいは分かるのですが」と彼女は笑った。

 確かに、過去に起こったことではないと推測が出来ても、三日ごとは断定できない。

 そして、死因も同様に、飛び降りたとは分からず、ビルの屋内で死んだとも推測できる。

 ビルで死ぬと言ったって、刺されて死んだり、転んで死ぬなんて可能性まである。


「ちなみに、私にはどう感じているかと言うと、頭の中に真っ黒い画像のようなものが映って、白字で単語が現れます。忘れたらいけないのですぐにメモが必要なのが難点だったりします」


 まあ、確かに、脳に浮かぶと言うより、視るの方が正しそうだし、そう言った面倒くささもあるのだろうか。


「では、本題ですが、今回私が視たのは光景と単語です」

「二種類も?てっきり片方だとばかり」


 三種類ある内の一つだと考えていたばかりに俺は思わずそう言った。

 ただ、それを見た西峯は何かを撤回するように続けた。


「いえ、今まではどれか一つだけだったんです。このようになったのは初めてで。見えたのは、斧を握る男性の様子。そして、『河添正時』、『死』最後に『国元海砂』の単語が浮かびました」

「俺の名前に死?それにくにもとかいさって」


 突然のことに半ば頭が追い付かない。


「今日来てもらったのは、その光景に映る人物が、貴方であるのか確かめるためです。そして、様相は違いましたが、河添さん。貴方に間違いはありません」

「じゃあ、同姓同名の人物でも何でもなく、俺が関わっているとみるべきか」


 限りなく黒に近かったそれが完全に黒く染まった。

 今日呼ばれた意味がわかった。

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