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十六話 ダンジョン対策協会

 

 あれから、少し。

 日本各地で起きた大規模なダンジョン発生については大方落ち着いたと言っても良かった。

 俺も俺で、麻耶と合流した後で、新しく依頼が来たのでそれを対処したため少し疲れたが。


 そして、あの時、大量にゲートが現れたせいか、やはり、正龍と同じように忍び込んでレベルを上げたものが多くいたらしい。

 結果的に、早期の収束にそれらはつながったが、それを褒めることは出来なかった。

 ただ、ダンジョンからあふれ出した例が三件だけでもあったために、それを防いだと言えば聞こえが良かった。

 まあ、突っ込んで怪我した奴もいたが。


 そんなことがあって一か月弱、ついに政府は「ダンジョン対策協会」なるものを設立した。

 その存在自体は、ダンジョンが大規模に現れた際に告知されていたのだが、満を持して今日この日、正式に動き出したのだった。


 名前にダンジョンが入っているのは、ギフト所持者を管理すると言うより、ダンジョンを対策するからと言った方が体面が良いとかなんとか。

 まあ、そんなこんなで、「協会」として、新たな一歩を踏み出したと言う事で、協力すると約束した俺はダンジョン対策協会本部となった建物に呼び出されていた。


「お久しぶりです、河添さん」

「どうも。久しぶりです」


 俺は目の前の男に軽く会釈をした。

 男の名は、白波瀬。

 俺に直接協力を仰いだ本人だった。


 そして現在は、「協会」の会長に座しているらしい。


「確か、直接会ったのは、あの駐車場での一件からは、初めてですね」

「まあ、そうすね」

「なかなかこちらの時間が取れなくて申し訳ないです」


 深く頭を下げる男を俺は見る。

 こういう時、なんだか下げられているこちらが気分が悪くなる。

 まるで、自分は人間として劣っているような。

 人間としての手本を見せられているような気持に。


 まあ、レベルと言う概念でしか、そもそも、この人にかなうことはないのだから事実かもしれないが。


「いえ、気にしないでください。直接話すことは出来なくても、電話なんかの対応は丁寧にしていただいたので」


 ここ一か月、俺だって何もせずにいたわけではない。

 協会の関係者からの指示を受けて働くことを多かった。

 その際に、丁寧な対応をしてもらったのは記憶に新しい。


「こちらこそ、毎度助かってます。今日も呼び出すような形になってしまいましたし」


 まあ、俺が呼び出されたのは事実だけど、どっちにしろ来る必要はあったのだし、俺はなんとも思ってない。

 そんな俺の気持ちを察してか、白波瀬さんは切り替えるようにして言葉を紡いだ。


「では、案内します。ついてきてください」


 そう言われてついていく。

 白波瀬さん以外にも、スーツの大人に囲まれてなんだか落ち着かないが、説明がされるので耳を傾ける。

 施設の使用方法から、ルールまで。


 そして一つのカードを渡される。


「これは?」

「この前に、河添さんにお渡しした許可証と同じものです。本来であれば、携帯端末にて運用できるようにと考えていたのですが、上からの指示で結局カード型になりまして」


 この人が会長なのに、上の人とは。


「河添さんに、お渡しした画像は複製も出来ないようになってますし。端末間で移動させると後を追跡できるなどと言ったものなんですけど、どうやら実物でやりたいと言う事なので」


 なんか凄そうな技術だなとボケーと聞いてみる。

 だが、俺にはあまり関係ないし良いか。

 どうせ、携帯で管理してもカードでも俺的には変わらない。


「では、説明はこれくらいで良いにして、実は河添さんに会ってもらいたい人がいるんですが」

「会ってもらいたい人?」


 俺は首を傾げる。

 俺に会わせたいと言われても、どんな人か想像がつかない。


「実は、今、彼女もこの場に呼んでいるんですよ。最初にギフトを受け取った二十三人のうちの、三人の日本人。そして、すでに亡くなった一人と河添さんを除いた最後の一人」

「…………」

西峯京香(にしみねきょうか)さんです」


 西峯京香。

 確かに、その名前は、ネットでだが見たことがある。

 日本にいる最初の二十三人の内三人。

 そのうち、俺とコンビニ強盗をしでかした奴の他にいると言う一人の少女。


 確か、年齢は、十八歳で高三だったか。


「白波瀬さんが、会わせたいと言う事ですか?」


 俺と彼女。

 最初の二十三人のうちに一人であるのなら、念のために顔を合わせたいなどと言ったことはあるのかもしてない。

 そう思ったのだが。


「いえ、彼女から合わせてくれないかと、打診がありまして」

「あっちから?」


 いや、別に不思議なことではないか。

 まあ、俺も気になるしな。

 そうこうしていると、白波瀬さんは足を止めて振り向いた。


「この扉の向こうに彼女は居ます」


 そう言って、ドアを開けた。

 ドアが開かれると見えたのは、まるで高級ホテルの一室のような見た目をした部屋だった。

 いや、ベッドがあるわけじゃないが。

 ただ、俺の知っているこの部屋に酷似したものはそれくらいしか思いつかなかった。


 壁紙からインテリアまで煌びやかな一室に一人の少女がいた。

 長い髪を腰まで伸ばした少女。

 学生服だろうか、セーラー服を着ている。


 一瞬、見惚れそうになった俺だが、白波瀬さんは口を開いた。


「こちらが、西峯京香さんです」

「初めまして、西峯鏡花です」


 白波瀬さんに続いて彼女も口を開く。

 そうして自己紹介をした。


 俺も一瞬遅れて、言葉を返す。


「えっと、初めまして、河添正時です」


 拙いながらも返答した俺は彼女を見る。

 すると、薄く微笑んだ。

 そして、再度俺は口を開いた。


 一番気になっていたことだ。


「何故、俺をここに呼んだんですか?」

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