十五話 すぐ動いた
正龍と別れて一息ついた俺ではあったが、よく考えてみれば、未だダンジョンは二つしか減っていない。
気を取り直して、次の目的地へと向かった。
のだが。
「実は、先ほど、別の方が攻略されまして」
現地について聞いたのはそんな言葉だった。
「別のってのは、俺と同じ、国から来た人ですか?」
「まあ、そうなんですが。ご存じないですか?」
ご存じないから聞いているのだが。
と言うか、他に国に差し向けられている人物と言えば、俺と同じく二十三人に含まれていた奴だろうか。
だが、俺がいるここに来るメリットはないだろう。
どう考えても分散した方が良い。
なら、考えられるのは、全く関係ないここら辺に住んで居る奴だが。
しかし、この警官の口ぶりからして。
「その人は、許可証をもってたんですか?ゲートに入れる」
「ええ。と言うより、河添さんの代わりに来たと言ってました。見せてもらった画像は、河添さんが持っていたそれと同じです」
そう言って、指を指すのは俺の携帯。
確かに、これには白波瀬さんに見せろと言われた画像がある。
だが、そんなもの複製できるだろう。
「偽物だとは思わなかったんですか?」
「私もそう思って聞いたのですが、高レベルである、河添さんの持つ画像を奪うなんてことは出来ないと、それこそ、信頼されていないと無理だと言われまして。こちらも、被害が出る前に対処したいと言う気持ちが強く、それに、実際短時間で攻略されましたのでつい。申し訳ありません」
「いや、俺はいいですけど」
ん?
いや、待て。
俺は携帯を取り出して、通話を掛ける。
『──ん。どうしたの?』
「麻耶、お前今、何処にいる?」
『何処って、家に──「ちょっ、ホントに空間に穴が開いてるよ!?」』
「おい、お前だろ。俺の代わりに、ダンジョンを攻略してるの』
『ごめん。ダンジョンの中は電波届かないから、よく聞こえな──』
開き直った上に、ゲートに入りやがった。
正直心配だが、すでに一つは攻略していることを考えれば死ぬことはないだろうが。
つーか、こういう時、こんな行動をする奴じゃないはずなんだが。
「まあ、いいか。あの、さっきここを攻略した人がどのゲートに入ったか把握できます?」
「ちょっと待ってください」
そう言って、無線機をとる。
ここや、他の場所同様に警察が張っているのだろう。
それなら、何処のゲートかわかるはずだ。
「河添さん。彼女のいる位置がわかりました」
そう言って、いくつかある内のゲートの一つを指す。
「結構遠いですね」
「……それでなんですが、もう一つ」
「?」
「実はどうやら、この市に出現したダンジョンの内の六つが攻略されたようです。それで、河添さんが入った二つのゲートを除くすべてが、恐らく一人の少女によって攻略されていると」
「マジですか」
つまりだ。
レベルの高い俺よりも、早く攻略、更に移動して、今は行っているのを含めれば、五つのダンジョンを制覇したと言う事だ。
出来るのか、そんなこと。
正龍でも、相当凄いと思ったが、まさか麻耶がそれ以上とは。
チュートリアルは、経験値が多かったようだが、もしかしたらすでに麻耶の方が強くなっているかもしれない。
まあ、どちらにしても、絶対に安全とは言い切れないのだ。
とりあえず、俺もゲートへ向かおう。
万が一があっては困る。
「あ、遅かったね。正時」
結構なスピードで駆け回った俺が、目的地に着いたときに掛けられた言葉がこれだった。
ものの数分であったはずだが、麻耶は何でもない様な顔をしてベンチに腰かけていた。
「何のんきに、アイス喰ってんだよ?」
「神経質になってアイス食べる人なんていないでしょ」
「いや、まあそうだけど」
そう言うことを言ってるんじゃない。
まあ、怪我がないなら良いのだが。
というか。
「どうやって、そんな短時間で、ダンジョンを攻略したんだ?」
「ん?別に特別なことはしてないよ。雑魚は無視してボス狙い」
「でも、レベルが上がらなきゃ攻撃だって入らないんじゃ」
「別に、ただ殴るだけが攻撃じゃないよ。地形を使うでも同士討ちをさせるでも。それに、正時だって、チュートリアル中に、斧なくなって同士討ちを狙ったんでしょ」
「まあ、そうか」
確かに、馬鹿正直に殴る蹴るだけが、攻撃手段ではない。
まあ、外に出てきたらそれもできないが。
恐らく、ダンジョンでのそう言った行為は、外では通用しない。
ネット小説よろしくと言うばかりに、銃火器の類は聞かなくて、その理由は魔力が含まれていないときた。
であれば、例えば、地面に頭をぶつけさせて攻撃をした場合。
魔力を多く内包しているであろうダンジョン内の地面と、外の地面とでは入るダメージも違うだろう。
「ていうか。勝手に入っちゃダメだろ」
「今更?」
「俺は一応許可をもらってるわけだし」
「まあ、大丈夫。スキルかけて、さらに物理的にも顔隠したから」
「そう言う問題じゃねぇよ」
ただ、少し新たな疑問が生まれる。
「スキルで身を隠して気付かれずに入れるのに、なんで、態々俺の許可証を見せてダンジョンに入ったんだ?」
「画像一つで入っていいですよなんて言う警察の甘さを思い知らせるため」
「ウソだろ?」
「うそ。それに恐らく、あの画像は機器があって初めて意味を成すんだと思う。偽造不可能な代物で、本人以外は絶対に通さないとか。まあ、本当は、正時が言っていた白波瀬さんが作る機関とか言うので活用するんだと思うけど」
「人じゃダメ」と麻耶はつづけた。
まあ、確かに、何か機械で検知するものを人が見たって意味がない。
「じゃあ、実際のところは?」
「スキルを使って入らなかったのは、少なからず、警察側にもレベルを上げた警察官がいたから。ダンジョン攻略までとはいかないけど、それでも、察知に長けた人はいるはず。そっち系のスキルは上がりやすいから」
まあ、確かにそうか。
実働的な人員は、戦闘に特化しているが、それ以外はレベルもそこまで上げられない状況下においては、伸びやすい察知、あるいは探知系を伸ばすに限る。
段々と、上がりにくくなるらしいけど、察知系、探知刑は初めは戦闘系に比べて大分伸びるみたいだし。




