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十八話 一方


「じゃあ、俺が関わっていることは確定した。なら、次はその詳細だな。『死』という単語が、俺にかかってくるのか、その、くに、くに……」

「国元海砂ですね」

「そう。国元海砂にかかっているのか。俺が殺されるのか、それとも俺が殺すのか」


 そこが問題だ。


「私の予想では、視た光景に、貴方しか映っていなかったので、『死』が掛かるのは国元海砂であると考えています」

「まあ、確かに」


 だが、「ですが」と彼女はつなげた。


「申し訳ありませんが、そもそも私たちの注目はそこではないのです」

「どっちが生きるかとは関係ないと?」


 じゃあ、なんだと考えてみる。

 まあ、俺の生き死になどは、そもそも、この人には関係のない話なのだろう。

 彼女の今いる現状は、俺にだって想像がつく。

 占いというほぼ未来予測が可能な代物をもつ彼女は強すぎるがあまり狙われる、あるいは狙われているのは確実だ。

 チートと呼ぶにふさわしいその力は、世界規模の影響力すら持ち得るだろう。


 だから、こそ、情報の流出の無いように、隠密が何人もこの部屋に集まっている。

 そして、それは流出後の、拉致、あるいは殺害を防ぐことも視野に入れたものだろう。

 それを、考えた場合、俺にリスクを冒してまで情報を与えた理由があるはずだ。


 隠密では、相手にならないほどの力を俺は持っている。

 それを考えれば、近づけるだけでも危険と言える。


「実は、国元海砂という名前に問題がありまして」

「問題、というと?」

「河添さんも知っていらっしゃるんじゃないですか?10月23日、最初の二十三人、そのうちの一人が、チュートリアルが始まる前の三十分という短い時間で起こしたコンビニ強盗事件を」

「まさか」

「その犯人の名前が、国元海砂です」


 俺も正直、うろ覚えだ。

 だけど、確かに、そいつは。


「その犯人は、死んだはずじゃ?」


 確か、死亡している。

 それは確かに、あった時目の前の彼女も言っていたことだ。


「表向きには、ですね。いえ、正確に言えば、秘匿されていたわけではないんです」


 故意に隠したわけではないのか。


「死亡確認はされてました。ですが、数日後生き返ったのです」

「は?」


 蘇生と言う事だろうか。

 明らかに死んでいると確認が取れた上での蘇生。


「恐らく、ギフトの力でしょう。詳細は分かりませんが、そうとしか」

「まあ、一応分かった。で、呼び出した理由は、そいつのことを知るために、占いで名前が一緒に出る、俺に心当たりがないかを確認するってところか?」


 恐らく、この状況、すでに、国本海砂と言う奴は、彼女を含めた協会の目からは放れているのだろう。

 だから、手がかりをつかむために俺を連れて来た。


「そうです。彼の行方は現在途絶えていますので、少しでも、手がかりをつまみたいと考えて、貴方をお呼びしました」


「申し訳ありません」と謝る西峯さんに頭を上げるように頼む。


「別に気にしてない。恐らくそちらから見れば、俺の生き死には特に大きな事項ではないんだろう。西峯さんの様に、強力なギフトを持つわけではないのは事実だし。今は、レベルのアドバンテージがあるだけで、相当貴重だろうこの情報を渡すにはたりえない」

「そんなことは」


 ここで、初めて白波瀬さんが口を挟んだ。


「いえ、分かってます。別に、ぞんざいな対応をとろうってわけじゃないことは。ただ、国家機密級の情報、それも知っていても回避できるか分からないものを教えるメリットは少ないってはなしです。それを、こんな形とはいえ、教えてもらえたのだから文句はないですよ」


 情報を教えないにしても、俺のサポートは十二分にしてくれるだろうし、文句を言うことはない。


「どうやら、河添さんも国元さんのことを知ってるわけではなさそうですので、違う話をしましょうか?」

「違う話?」

「単なる世間話ですよ。一番初めに言ったでしょう。それと、名前で京香と呼んでください。私も、正時さんと呼ばせていただきますので」


 急に振られたそんな提案に俺は遅れて返事をするのだった。







 ◆


 一方そのころ、話に出て来た国元海砂と言う男は、脚をめいっぱい伸ばして寛いでいた。

 男と言うには、中性的で女性に見間違う容姿をした海砂は、携帯をいじりながら口を開いた。


「いつまで、ここにいなきゃなんだ?」


 その言葉には、半ば苛立ちが見えた。

 確かに、彼が今いるのは高級車とは言え、社内であり、さらに言えば、脚を伸ばしているものの、前列のシートに置いていては快適とは言えない。

 その様子は、窮屈、あるいは退屈と言った感情だろうか。

 そして、その言葉に、答える男が一人。


「もう少しですよ。そうすれば、外には出れますし、おいしいご飯も提供できます」


 運転席に座る男だった。


「本当だろうな?信じられねぇぜ」

「本当ですよ。先ほどは、だまして殺そうとしましたが、今度こそ本当です」

「チッ、だったら早くしろよ。木下」


 不機嫌に木下と呼ばれた男は、「もちろん」といって笑った。

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