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十一話 手をかける


 俺は、自分の置かれた状況を今一度確認した。

 防衛省を名乗る男たちに車に乗せられて地下駐車場に移動させられて、そして、殺されかけた。

 うーん。やばいな。


 そして、こいつらが俺を襲った理由は何か。

 そんなことを考えていた時、車から出て来た運転をしていた木下は自ら答えた。


「なんでこんなことをしたのかって顔ですね?さっき言ったでしょう。レベルの高い人間を殺せば、たくさん経験値が入るって」


 あれは、自分たちの話だったのか。

 あるいは、先ほどの保護したという事実は、本当なのかもしれない。

 その後で、殺すというだけで。


 周囲を見渡せば、初めに俺に姿を見せていた奴ら以外にも、ここに潜んでいたのか合計で八人の黒服たちが居る。

 そんな様子を見て、俺は木下に反論する。


「だが、たくさん経験値が入るっても、殺した一人だけしか、レベルが上がんねぇんじゃないか?」


 ここまで、大人数で囲っておいても、最後にとどめを刺した奴に経験値が入るとなれば取り合いになるのではって話だ。

 ただ、そんな俺の言葉に、半ばあきれた様子を見て男は返した。


「本当に頭が悪いですね。戦闘に参加すれば、経験値は、ほぼ平等に分配されますよ。そうでなければ、一人で狩った方が効率的だし、不満もたまらない。こちらが、いま人数を揃えてこうやって実践に移してるのだから、察することくらいできるでしょう。好きなんでしょう?ゲーム」


 エ〇ゲーしかほぼやった事ねぇよ。

 そんな返しをしたかったが、それでも経験値分配は珍しくないから俺でも知ってる。

 だが、それ以上に、背後からの攻撃をいなすには話している暇などなかった。


 男が、態々俺に話しかけれ来た理由は、他のことから注意を逸らすため。

 そして、その証拠に、俺の視界内にいなかった九人目が背後から攻撃を仕掛けて来た。

 ただ、俺だって、恐らくスキルで隠れていたのであろうが、俺より圧倒的にレベルが低いであろうこいつらのスキルくらい掻い潜ることは造作もない。


 その場から振り返らずに、右手に持った斧を背後に持っていき、最小限の動きで攻撃をいなした。

 それでも、背後をとった優位を捨てようとはしなかった男の二度目の攻撃を身体を捻って避け、そのまま振り返って蹴りを入れた。


「ぐほっ!?」


 男は、そのまま、体をくの字に曲げて、コンクリートの壁に突っ込んだ。

 鈍い音を立てて身体が崩れ落ち、もう一度立ち上がることはなかった。


「くそ」


 一人の男が、短く悪態をつくとともに突っ込んでくる。

 そして、それに遅れまいと、他の男も武器を持って俺に向けた。

 俺は、構えるが、次の瞬間には、一人目の攻撃が到達していた。


「チッ、防がれたか」


 恐らく、一人目は加速系スキルによって、俺に刃を向けて来た。

 それを何とか、斧で防ぐが、それで終わりなわけがない。

 二撃、三撃、と続く攻撃を俺は防ぐ。


 そして、斧を振ろうとした瞬間、腕が動かないことに気付いた。

 視線を向ければ、何か植物のようなもので拘束されている。

 それを、引きちぎり、何とか攻撃をいなすが、そのわずかな隙が、命取りとなる。


 防御が遅れれば、次の対応がおろそかになる。

 そうすれば、足元に液状化スキルを発動されて、踏ん張りがきかなくなる。

 そこに、攻撃を入れられる。


 刀に始まり、魔法までも。

 多方向からの複数攻撃に、すべてを防ぎきれず被弾する。

 たまらず、地面を蹴って距離をとった。


「レベルがあっても、ギフトを使いこなせなくては、所詮その程度ですね。ああ、そう言えば、武器を伸ばすことしかできないんでしたか」


 木下は、「宝の持ち腐れですね」と言って、冷めた目でこちらを見ていた。

 まあ、確かに、先んじてチュートリアルを受けることが出来た俺ではあるが、そもそも武器が斧の時点で【延長】を上手く扱えてるとは思えない。

 だが、それでも、これだけの攻撃を受けていても、未だ俺は致命傷を負っていない。

 それに、奴らが、スキルを使って強化を施してやっと俺に届くかと言ったところ。

 まだ、勝機はある。


「でも、これで、終わりにしてあげますよ。次のターゲットは、海外ですので、時間も惜しいですしね」


 木下はそう言って、構えをとった。

 相手は俺より、数の多い八人。

 俺より、レベルが低いとはいえ、こっちだって能力値が制限されている。

 だが、そのおかげで少しわかった気がする。


 連携。

 そう言えば、難しくも感じるが、それでも奴らも毎度毎度手の内を変える事はない。

 連携をするのであれば、大きく役割を外れたこともできないだろう。

 だから。


「な!?」


 速度を強化して突っ込んでくるこいつの手法も変わらないし、植物での妨害、地面の液状化も変わらない。

 わかっていれば、避けることが出る。

 そのすべてが、いわば低レベルのスキルだ。

 広範囲的なトラップなどと言ったものは仕掛けられない。

 こいつらは、それを上手く利用して妨害をしてくるが、一歩動けば引っ掛かることない罠に、分かっていれば引っ掛かることもない。


 反撃開始だ。

 速度強化はともかくとして、他のやつらは俺と比べれば遥かに遅い。

 相手に隙を作った今なら、難なく倒せる。


 速度強化によって、攻撃を仕掛ける男をいなし、更に背後にいる男どもに攻撃を仕掛ける。

 そもそも、こいつらは支援型だろう。

 多少、戦闘系のスキルをとっていても、極振りしているであろう速度強化野郎でも、俺には一対一では敵わないのだから、抵抗もできずに切り伏せられる。

 流れるように、俺は五人の男を斬った。


 一撃。

 それだけで、レア装備のおかげか、絶命する。

 悪いが、手加減などできないし、そもそも、こいつらは俺を殺しに来たのだから、文句を言われる筋合いはない。

 だが、戦闘系は一人ではない。

 速度強化野郎よりも、スピードが劣っても、パワータイプであろう男もいる。

 レベル差を考えて、速度で対抗したのであろうが、そもそも、普段の戦闘ではこいつらが主力なのだろう。


「オラっ!」


 野太い声と共に、繰り出される攻撃。

 だが、俺に対抗するにはスピードが足りない。

 俺は、難なく攻撃を躱して、斬り伏せた。


「あとは、木下と、あんたは、ヒーラか?」


 死んだ男たちに、必死にスキルを発動する男を見据える。

 だが、もう死んでいるのだ、意味はない。

 まずは、こいつから殺そうか。

 そう思った時に、背後からの気配を感じる。


「ああ、忘れてた」


 初撃で、躱した速度野郎だ。

 だが、支援もなにもない状態では、他のやつと変わらない。

 俺は、そいつの命も奪った。

 そして、ついでにヒーラもやる。

 最後に、木下を見た。

 彼は怯えるわけでもなく、笑った。


「くくくっ、あはははは!いや、流石ですね」

「なんだ、命乞いか。それとも、力を認めて仲間にしてやるってか?」

「いやいや、嫌ですよ。こんな奴。そうじゃなくて、凄いなって。よくもまあ、躊躇なく人を殺せたものですね」


 何様のつもりで言ってんだ?


「なんか、ないんですか?人殺しをしたら、両親を殺した奴と一緒になっちゃう~、とか」

「ねぇよ。つーか、俺を殺してきた奴らだぞ」

「へぇ、単純に頭が回んないだけか。ああ、そうそう、貴方の両親殺されたでしょ。それ、そそのかしたの俺」

「は?」


 何でもないように、こいつの口から出たその言葉。

 確か、両親を殺したのは、会社員。

 それを、そそのかしたのがこいつ?


「なんで、そんなことしたんだ」

「そりゃ、今みたいに、ここに連れ出すためですよ。だって、親がいない子供の方が、バカみたいについて来るでしょ。というか、実際ついてきてるんだから、大成功で──」


 木下の首が転がった。

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