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「時がゆく」
西日射す 窓際のベッドの上で
痩せた体をおこした父が
うつむいている
眠っているのか
物思いに沈んでいるのか
そっと近づけば
ゆるやかに上がる顔に
広がる安堵
生きている ただ
それだけで 迷惑になると
娘に 詫びる
細いチューブから送り込まれる酸素を
いくら深く吸っても
父の肺は膨らまない
苦しさに喘ぐ心臓が
刻む鼓動
訪れたばかりの私に
早く帰れとせかす
家族に縁が薄かった父が
家族を持つ娘を気遣う
あなたがいるから 私は娘
私がいるから あなたは父
互いを喪えば 私たちは
一体何になるのだろう
沈む陽の名残
父と娘の
刹那の時がゆく
現代詩手帳掲載作品




