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「光」
四人部屋の病室に 老いた男が四人
昭和一桁生まれ 昭和を生き抜いて
昭和の終焉に 立ち会った 男たち
毎日妻が来る男 娘が見舞いに来る男
代わる代わる孫が来る男
誰も来ない男は
人がはいってくる度に
顔をむける
見舞いにきてくれたものが
見落とさないように
誰もが 男の顔に目を留めると
軽く会釈して 視線をそらし
手前のベッドへ 横のベッドへ
向こうのベッドへ歩き出す
いつも いつも
季節が巡る 男は 病室の窓越しに
外を見ながら それを知る
男のもとには 誰もこない
けれど ある日 ついに 訪れた
若い姿のままの妻
優しい母と強い父
早く逝ってしまった兄弟姉妹
遅いじゃないか
照れくさくて 男は
憎まれ口を叩く
それでも ひかれるままに
身を起こす
さぁ、行くか
誰もいない ベッドの上で
戯れるように 揺れていた
光の粒が 消えた
若い看護師が カーテンを開けた
新しい日が 始まる




