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89.五大正竜

よろしくお願いします。


「で、こっちのちっこいお前はなんだ?」


視線を向けた先には、すっかり萎れた表情でうつむいている少女が一人。

ところどころ光線で焼けこげてはいるが、致命傷はないらしい。


銀と黒の混ざった不思議な髪色と爬虫類を思わせる瞳は獣のようにも見えるが、魔力量は相当にある。

チューブトップに、短パン、ブーツという出立のため、出るとこ出たメリハリのある体で少女だということはわかった。


「オレは、竜殺しだ。だから、この竜の竜玉が欲しい」


竜殺しは特殊職業だ。

天性のものは、個人の資質によるものだが、特殊職業は条件を満たせば得られる。

竜殺しは竜を1匹でも斃すことができれば得られる職業だ。

ちなみに竜はとある事情でその数を激減させているため、個体数自体が少ない上に、ほとんどが人が暮らす地域には現れない。

のこのこ人の住む地域に姿を現しているグラドが珍しいのだ。


俺の肩で羽を休めていたそのグラドが呆れたような声を出す。


「小娘に劣る僕ではないぞ。むしろ、お前に殺された竜が弱すぎたのだろう」

「…っ、でも、お前の討伐を依頼されたんだ…」

「竜が姿を消したご時世だからな、竜殺しを探すのも大変だったろうが、グラドのいうように実力はたいしたことないだろう。お前、いったい何の竜を斃したんだ?」

「…黒竜」


少女はびくりとして、ぽつりとつぶやいた。


「黒竜?」


まさかの五大正竜の名前が出てきて、俺は目を瞬いた。

ドラゴンと一言で言っても、トカゲからまさにドラゴンと呼ばれる種まで様々だ。

火トカゲや土トカゲもドラゴンの眷属にはなる。


さすがに竜殺しの職業はトカゲ程度を斃したくらいでは得られないが。

だが少女はドラゴンの中でもトップに君臨する五大正竜のうちの1つを挙げたのだ。


黒竜は狂暴で残虐、最も厄介な竜だ。1匹で小国など吹き飛ばせるほどの破壊力を持つ。対話できるほどの穏やかな性格でもないため、蹂躙されるのを甘んじるしかない。天災の代名詞でもある。


とても目の前で俺の魔力に震えている少女が斃せたとは思えない。

そのうえ、黒竜は魔王城の建材にもなっている。

城壁の壁は黒竜の鱗だ。


それを自慢げに語っていた悪魔を覚えている。

どういうことかと思わなくもないが、俺が関わるような問題でもない気がする。


「黒竜を斃したのか、すごいなあ」


ダグラスが横でニコニコしながら能天気に少女を褒めている。

褒められたことが少ないのか、少女は戸惑っているように見えた。


「グラドの討伐の証明はできないが、無効化したというしかないな。なんなら、俺が証明書を発行してやる。お前に依頼したのはどいつだ?」

「ビーランド王国国王陛下」


は?

グラド、まさかとは思うが、俺が呼び出してからずっと城を占拠していたんじゃないだろうな?

お越しいただき本当にありがとうございます。

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