85.門番のとある日
よろしくお願いいたします。
「なんか、ゴミみたいなもんが浮かんでないか?」
フェーレン市の南門に立っていた門番が空を見ながら、ポツリと呟いた。
「ゴミってなんだよ?」
二人一組で門に立つことになっているため、同僚の言葉にもう一人が首を傾げる。
「いや、なんかさっきから黒っぽい点が…あれ、こっちに向かって来てる?」
目をこすりながら、一点を凝視している同僚と同じ方向に顔を向ける。
「はぁ? どれだよ」
「ええー、あの魚っぽい形した雲の下あたりだよ」
「いやいや、魚っぽい雲ってどれだよ?!」
「なんでわかんねぇんだよ、ガイコツみたいな雲の隣にあるだろうが!」
「ますますわかんねぇよ!」
二人が言い争っていると、白い閃光が空に向かってまっすぐに伸びる。昼間だから、派手さはないが、遠目でもハッキリわかるほどの威力だ。
「なんだ、魔法か? 誰か戦ってんのかな。あれ、なんかヤバいんじゃあないか?」
閃光が空に向かって何本も走る。
ゴミのような点はあっという間に拳大の大きさになった。
「こっちに近づいてきてる?! おい、開門だ! 昼休憩中断!!」
フェーレン市は昼の1時から2時まで、中心部へ入るための門を閉ざす決まりだ。街に入りたい者たちは列に並んだまま、仮市長の昼寝タイムが終わるまでのんびりと待っている。
行商人や冒険者や町民など待っている人は様々だが、このまま門の外にいれば巻き込まれ兼ねない。
門の内側に向かって声を張り上げれば、内側から怒鳴り返された。
「馬鹿言うな、まだ1時半だぞ。市長に殺される!」
「だからって一般人を見殺しにできるか!」
門番や街の警邏隊などは市長が個人的に雇っている兵士だ。そのため、市長の権限が物凄く強い。時計を全員支給されているのも、時計の読み方を学ばされるのも市長の命令だ。
だが、一般市民が簡単な試験を受けて雇われているので街を守りたい意欲も強い。
「お、おい、ドラゴンだ」
「はあ? 市長がドラゴン並に怖いって話か?」
「違う! よくみろ、ドラゴンだ! ドラゴンが近づいて来てる!!」
空を見上げて形が確認できた一瞬の後、阿鼻叫喚が隔壁に響き渡るのだった。
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