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71.解けない誤解

よろしくお願いいたします。


「話ってなんだい? ここにいるクロゥインが聞いてくれるよ?」

「おい、ふざけるなよ。なんで俺が聞かなきゃならないんだ、お前の客だろうが」

「むさ苦しい男となんて話したくはないだろう。だいたい昔から、ああいうやからは君が相手していたじゃないか」

「お前が勝手に俺に押し付けてきただけだろうが!」


二人で言い争っていると、フードを被った男がおずおずと声をかけてきた。


「あの、君も苦労してるんだね。話くらいなら聞くよ?」


同情的な口調が少し腹立たしい。

いったい何を見て同情されているんだろう。


「君も想い人をとられたのか、それとも婚約を解消されたのか? まさか、その女の子だけおいて逃げられたんじゃないだろうな? 女は一人じゃないんだ、前向きでいこうじゃないか」

「待て、本当に今、なんの話なんだ?」

「だから、俺と一緒に教えを乞わないか?」

「人の話を聞け! そもそもお前は何者で、何をしに来たんだ!?」


俺は思わずフードを被った男の頭を叩く。軽い気持ちだったが、あっさりと男は地面に顔から叩きつけられるように倒れこんだ。


「はぁ?」

「クロゥイン、暴力はよくないな」

「ハイルさまっ、貴様、ハイルさまをよくも!」


後ろに控えていた魔法士たちが一斉に杖を構え詠唱を唱える。


「ば、ばかっ、こんな街中で正気か!」

「くらえ、『ファイア・ストーム』」

「吠えろ『サンダー・ストーム』」

「裂けろ『エアロ・カッター』」


「『ディスエイブル』」


俺に向かって放たれた魔法を瞬時に消し去る。賢者の上級魔法だ。なかなか使い手に出会うことはない貴重な魔法だが、構っている場合ではない。


『はあぁ??!』


目を大きく見開いた男たちはひとまず放置して、俺は気絶しているハイルを魔法を使って気づかせる。


「まったく、『リアライズ』」

「う、いたた、突然、何をするんだ」

「お前が話を聞かないからだろうが。で、お前は何者なんだ?」


すっかりフードが外れて顔を出しているハイルは、陰気な男だった。灰色の髪は肩まで伸び、琥珀の瞳は細く凡庸だ。

何より目の下の濃い隈が、ますます陰を強めている。


俺が言えたことではないが不幸そうな男だった。

年は上にも下にも見える。


「俺はハイル・ガバネット、筆頭宮廷魔道士だ」

「やっぱりお前の関係者じゃないか!」

「ええ、こんな知り合いいないはずなんだけどな。結局、僕に何の用なんだい?」


カルティアが、穏やかに聞くと彼は盛大に語り始めた。




・・・・・☆・・・・・☆・・・・・☆・・・・・☆・・・・・☆・・・・・




結果、話を聞き流した俺とカルティアがダグラスに助けを求めたら一喝されて終わってしまった。


ちなみにマヤはパンケーキができたと呼びに来た店員と一緒に店に戻っている。


「どうしてくれるんだ、カルティア。ダグラスを怒らせたじゃないか」

「ええ、僕のせい? とにかく、怒らせたなら仕方ないからクロゥインは僕につきあってよ」

「なんでだよ! こんな色恋沙汰なんて、どう考えても俺の管轄外だろうが。むしろ、お前の得意分野だろう」


ハイルの話を要約すると、婚約者である幼馴染の女の子が、カルティアに惚れてしまったのでその技術を使って新しい婚約者を作るのを手伝ってほしいとのことだった。

今までまともに話せたのは幼馴染だけなので、女の子と話をするための方法を教えて欲しかったそうだ。


思春期か!と思うが、年齢は二十歳だった。

だいぶとこじらせている。


成人して4年も経って、まだそんな入り口みたいなところでウロウロしていれば彼女すらできないのもうなずける話だ。

まぁ、俺も人のことは言えないのだが。


ちなみに、ハイルの後ろにいるのは宮廷魔道士の部下で、あまりの形相に戦いに行くものだと思い込んでしまい、ハイルが昏倒したらすぐに攻撃態勢に入ってしまったのだと、彼の告白を聞いて驚愕しながら謝罪された。


幼馴染の女の子との仲を取り持たなくてもよいのかとカルティアが投げやりに聞いてみたが、そちらはどうでもいいらしい。

できれば理想的なお嫁さんが欲しいとハイルが夢を語り出したので、カルティアが一蹴する。


「あのね、ウサギちゃんはウサギちゃんってだけで尊いんだよ。そんなこともわからないのに、お嫁さんが欲しいとか無理に決まってるだろ?! そもそも理想ってなんだ、お前の考えを押し付けるなよ。存在だけで理想の体現なんだよ」


「クロ、サンドイッチ包んでもらった」

「そうか。もう、昼寝の時間だな。マヤ、一緒に帰ろう」

「うん!」


パンケーキを食べ終えたマヤが店から顔を出した。手には紙で包んでもらったサンドイッチを持っている。俺は手招きして、マヤの体を抱えるとさっさと自室へと転移するのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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