67.カルティアとの出会い(マヤ視点)
よろしくお願いいたします。
「あら、マヤちゃん。こんにちは」
冒険者ギルドの受付に顔を出すと、レミアルがカウンター越しに手を振っている。
一階はほどよい混雑だ。
依頼書が張り出してあるボードの前に立つ人や受付カウンターで話している人、申請書を書いている人などだ。
レミアルの前には客がいなかった。
「こんにちは」
「今日はどうしました?」
あまり冒険者ギルドには顔をださないが、レミアルとは早々に知り合いになった。
レッド・カーニバルの際に、クロゥインが昔の仲間を紹介してくれた。レミアル以外にもサジェストやメルディアナ、サムエルなどと顔を合わせたが、レミアルは冒険者ギルドに遊びに来た時に、いろいろと案内してくれた親切な人だ。
後で、クロゥインの仲間だったと知って、同じく耳に銀色のイヤーリングが輝いていたのを思い出した。
彼が作って渡した通信の魔道具だ。
もちろん、それなりの魔力量がなければ扱えない。アリッサは持っていないし、デミトリアスとは相性が悪いために使えないなどいろいろと制約があるらしいが。
マヤの銀色の毛で覆われた耳にはついていない。
イヤーリング以外のものを作っていると言われ、マヤの最大限の安全確保のために、保護の魔道具を持っている。
足にはめた金色のアンクレットもその一つだ。効果をあげるときりがないほどだが、過保護なんだ、とダグラスが苦笑していた。
過保護の一言では済ませられないほど、厳重なのだとあとでデミトリアスが教えてくれたが。
素材を聞いたら、後悔したことは記憶に新しい。
「クロ、いない」
「ああ、今日から会議ですからね。ダグくんもいないから淋しくなってしまいましたか?」
マヤがこくりと頷くとレミアルが優しく頭を撫でてくれる。
「お昼寝には戻ってきますよ。お部屋で待っていてあげてください」
「ちゃんと申告しただろう?」
マヤの横にいた大柄な男が受付カウンターに突撃する勢いで吠える。声の大きさに思わずびくつく。
対応しているのはジェニファーだ。
「討伐依頼はスイギュウの角ですが、これはユーバの角も混じっていますよね。数は15本なので足りないため達成条件に該当しません。先ほどいただいた申告用紙もお返ししますので修正してくださいね」
「そんなバカな! 鑑定が間違ってるんだろう、さっさと受理しろよ」
「鑑定に間違いはありません」
「じゃあ、どっかですり替えられたんだ。なあ、早く金を持って行かないとやばいんだよ。お前が受理しなくて、俺が死んだら呪ってやるからな」
「規定ですので、ご希望に添えず申し訳ありません」
「少しくらいまけてくれてもいいだろう? たまには目当ての獲物に出会えない日だってある」
「それを見越しての依頼報酬ですから、仕方ありません」
「このっ」
男が拳を振り上げたが、ジェニファーはそれを片手でいなすと、眉間に正拳突きを繰り出した。
「へぶっ!」
男はそのまま、入り口の扉にぶつかって目を回している。
「やー相変わらずお見事だね」
男をまたぐように長身の女が入ってくると、ニヤリと笑う。真っ白な派手な衣装に、腕輪からネックレス、指輪など、高価な装飾品を惜しげもなく使っている。
ベリーショートの髪は夕暮れを思わせる紫紺色で、瞳は暁色だ。一見すると、甘い顔立ちの青年にみえるが、マヤの鼻は女性だと告げていた。
彼女が片手をあげるとジェニファーが瞳を輝かせた。
「カル! 久しぶり、いつ戻ったの?」
「今日だよ、レミアルも元気?」
「おかげさまで」
女はふと傍らに立つマヤに目を向けると上から下までじっくりと眺めた。
「銀色の、犬の耳? なるほど、メルディアナが言っていたとおりか、キミがマヤ?」
「マヤは狼だよ」
「ああ、ごめん。人狼なんだっけ?」
マヤが小さく頷くと、彼女は一瞬、泣き出しそうに顔を歪めた。だが、すぐにとろけるような笑顔になる。
「聞いていたより小さいな」
「マヤはもう18」
「成人してはいるのか、ちょっとお姉さんとご飯食べに行かない?」
「え?」
あっという間に抱えられると、マヤはなぜか冒険者ギルドの外にいた。
後ろからレミアルの「カルさん、待ってー」という制止がささやかにこだますのだった。
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