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63.うやむやにしたい話題

よろしくお願いいたします。


「ぜひとも、次回のヴィアインドーバ戦役にはフェーレン市の冒険者ギルドにご参加いただきたい!」


ぎらついた瞳を向けて大声を出す男を俺は冷やかに見つめた。

ベルクとレンスの表情も変わる。過去に、戦に参加させようと目論んだ輩は多い。俺単体でも十分に、戦の勝利が見込めるからだ。その筆頭が前国王だと、この目の前の男は知らないのだろうか。

そして、その男がどうなったのかも。


「俺は戦争には参加しない、ギルドとしても参加させない」

「なぜだっ」

「目に見えるだろう、虐殺にしかならん。こいつは馬鹿だが、愚かではない」


珍しくベルクが弁護した。レンスも首を横に振っている。


「今日ここに来ていないバグロード市とサンダルキア市のギルド長の欠席の理由も、フェーレン市のギルド長が関わっています。バグロード市のギルド長は貴族から訴えられ更迭中、サンダルキア市は都市半壊のため、対応中とのこと。身の破滅を味わいたくなければ、この男にはかかわらない方がいいですよ。加減も常識も知らない子供みたいなのだから」


関係ないとは言わない。

レンスの情報網であれば、大半のことはばれているのだろう。彼女の人形は優秀だ。気配を殺して至る所に潜入できる。まあ、俺に隠す気がないことも大きいが。


サンダルキアの冒険者たちはあのデスマウスを引き連れて、自分の市へ戻ってしまったらしい。被害状況を報告に来たダグラスがため息をついていた。

あのハゲは伯爵家の屋敷倒壊の件で貴族と争っているとのこと。あいつは自業自得なので、そのまま様子見だ。


「そんなことで納得できるか」

「憤るのは自由だが、何を言われようと聞く耳は持たないな」

「他に質問がなければ、次へと移らせていただきます。次はタラス市より貴族・豪族の失踪事件についてです。これは国王からも調査依頼があったことと思いますが、現在、確認のとれている失踪者リストを配布資料につけております。手元資料の10ページをご覧ください」


レンスが強引に次の議題へと移る。

俺は正面を向いたまま、ダグラスに通信を送る。


『国王から調査依頼なんか来たか?』

『いや、はじめて聞いたぞ』


「うちには調査依頼が来てないんだが、どういうことだ?」

「え? 市内に住む貴族や豪族、金持ちの失踪者がいないか調査依頼がありましたよね?」


レンスが首をかしげている。


「フェーレン市には貴族がおらんから外されたんじゃないか?」


貴族は昔に一悶着があり、フェーレン市には住んでいない。管轄の行政官が時折視察にやって来るくらいだ。それもここ数年は見かけないが。


「金持ちならいるが」

「お前のところが一番の金持ちだろうに。資産家は皆、お前の仲間だろう。話を聞くだけ無駄だと思われたんじゃないか」


ベルクの言葉に反論が難しい。


「今、把握されている者は国内で15人、国外と合わせて43人になります。皆、ひと月ほど前に何かの会に参加すると言っていたそうです。それがどうも魔物の違法な取引だったようで、ダンジョンや魔物の多く出現する地域の市では何か異変がなかったか報告してほしいとの王命です」


リストには先日知り得た侯爵の名前もある。

ほぼ、先日の闇市だろう。


デミトリアスがあの場にいた人間は始末したと報告していたが詳細は聞かなかった。魔物は次の日には元の場所に帰したが。

失踪扱いになっているということは死体を何らかの方法で片付けているのだろう。


正直、詳細を知りたいとは思わない。今後も聞かない。

王命といえどもこのままうやむやで終わりたい。


追及されたら対応を考えよう。


デミトリアスの報告を一緒に聞いていたダグラスも難しい表情のみ何も言わない。


「こちらは深淵の大森林に何かあってもいつもそれが通常だからな、特に報告すべきことはない」

「青のダンジョンでの異変はわからなかったな。一時、騒いでいた魔物がいたようだが、すぐに落ち着いた。貴族は伯爵と男爵、ウエード商会の次男がいなくなったらしい」

「私の方でもやはり伯爵位の方々数名と商会の幹部や家族がいなくなっておりました。幻獣を手にいれると騒いでいたようです」

「ドルトミン市では、調査したが申し出はなかった。直接、市長会議で諮ると言われた」


相変わらず、ドルトミン市の冒険者ギルドの地位は低いようだ。


「市長会議でも確かに同じ議題を確認しているようですね。そういえば、仮とはいえフェーレン市長でもあるキップさんがこちらにいらっしゃるとは思いませんでした」


サンダルキア市の嫌がらせか知らないが、市長会議と北部冒険者ギルド長会議が被ってしまったのだ。


結界を張り直した報告をダグラスにした際に、二枚の用紙を突き付けられ、俺は絶句した。

嫌がらせにも程がある。


だが、俺はできるだけ鷹揚に頷いた。

例え心のなかでは嵐が吹き荒れていようとも!


「あちらには代理がいるからな。それに明日は俺も向かうつもりだ」



お読みいただきありがとうございました。

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